ビットコインマイニングに使われるプルーフ・オブ・ワーク(PoW)とは、意味や役割を解説

PoW
2020-10-14 更新

Proof of Work(プルーフ・オブ・ワーク:PoW)とは暗号資産(仮想通貨)における「コンセンサスアルゴリズム」の一種です。そもそもブロックチェーンは「分散型」、「非中央集権型」と言われるように、一般的に誰がブロックチェーン・ネットワークに参加しているかがわからず、中央管理者がいないケースが多いです。そのため、取引(暗号資産の送付)について、その取引が正しいかどうかを多数で検証し合意を行っていく仕組みを採用しています。この仕組みのことを「コンセンサスアルゴリズム」と呼び、ビットコインやイーサリアム、ライトコインなど主要な暗号資産に用いられるPoWによる取引の合意形成は「マイニング」とも呼ばれています。

PoWはこの取引の検証と合意のプロセスを「大量の計算」によって行なっていくものです。

本記事ではその仕組みや、メリット・デメリットを確認していきましょう。なお、PoWを採用している本記事ではその仕組みや、メリット・デメリットを確認していきましょう。なお、PoWを採用しているイーサリアムは現在、異なるコンセンサスアルゴリズムである「Proof of Stake(プルーフ・オブ・ステーク:PoS)」への移行を進めています。PoWを知っておくことで、PoSとの違いも理解できるでしょう。

PoWの意味は「作業の証明」

暗号資産には「ブロックチェーン」という台帳が使われており、これが暗号資産取引(送付)の元帳となっています。このブロックチェーンに、新しい取引(暗号資産の移動)データをつなげる作業が「マイニング」と呼ばれます。

PoWというのはこのマイニングを行う際のコンセンサスアルゴリズムの仕組みの一つです。

PoWでは膨大な計算が必要とされ、計算に成功すると、取引データがブロックチェーンに追加されます。この計算を最初に成功した人に成功報酬が与えられます。こうした「作業した証」としてビットコインといった暗号資産が割り当てられます。そのため」「プルーフ・オブ・ワーク(作業の証明)」なのです。

具体的にどのようになっているのか、説明していきましょう。

PoWとブロックチェーン

それでは具体的にマイニングにおけるPoWがどのような仕組みになっているのかを見ていきましょう。

(1)ナンスを生成

まずマイナーがトランザクション(暗号資産をあるアドレスから別のアドレスに転送すること)データの塊である「ブロック」を作ります。ブロックにはトランザクションデータの他に過去のハッシュ値などが入った「ブロックヘッダ」と呼ばれるデータの塊も格納されています。このブロックヘッダにはランダムに決定される値である「ナンス」が記録されます。

(2)ハッシュ値探し

ナンスとは一度だけ使用されるランダムな数値です。このナンスを入れたブロックデータをハッシュ関数に代入して、新たなハッシュ値を得ます。出てきたハッシュ値の先頭に0が一定数以上並んでいるかを確認します、一定数以上並んでいればブロックを生成できます。なっていなければ(1)に戻ってナンスを生成し、(2)ハッシュ値探しを繰り返します。

ハッシュ値とはあるデータを関数によって異なる文字列や値に変換されたもので、ハッシュ値になったデータを元のデータに戻すことはほぼ不可能とされています。ハッシュ値は暗号資産だけでなく、現在多くのウェブサービスでパスワードの暗号化に使われています。

このハッシュ値探しのために何度もナンスの生成・ハッシュ値の生成を繰り返す必要があり、PCで膨大な計算が必要となっています。

(3)ブロック生成とノード検証

ハッシュ値がある値以下になれば、ブロックを生成します。この生成されたブロックで規定のハッシュ値が生成できるかを他のノード(ネットワークに接続されているコンピューター端末)が検証します。

(4)ブロック承認

有効とされれば各ノードがチェーンに追加します。

こうした作業を繰り返し、他のマイナーよりも早く正解のナンスを発見したマイナーが報酬を得ることができます。計算自体は当てずっぽうでナンス値を探すだけという簡単なものですが、総当たりで計算を繰り返すために、高速なコンピューターを常時動かす必要があり、電気代が途方もなくかかります。

こうした手順から、もし過去の記録を改ざんしようとすると、過去のブロックの全てのナンスを計算し、ブロックを作成し直す必要があります。そうしている間にも正規のブロックは伸びていくことから、改ざんは実質不可能とされており、特にチェーンが伸びている(=頻繁に取引が行われている)ビットコインのセキュリティは強力であるとされています。

PoWの課題

セキュリティが高いなどの大きな利点があるPoWですが、長年、課題も指摘されています。それが「51%攻撃」「電力消費量」「スケーラビリティ問題」の3点です。

51%攻撃

「51%攻撃」というのは、全ての計算力の半数以上を取られるとネットワークが乗っ取られてしまうという問題です。PoWはひたすら世界中のコンピューターが計算してブロックチェーンをつなげていくものですが、全世界の計算力の半分以上を悪意あるユーザーが持ってしまうと、過去のブロックを書き換えて、別のブロックチェーンを作ることが可能になってしまいます。これを「51%攻撃」と言います。

ビットコインのような巨大なネットワークでは過半数の計算力を持つことが事実上不可能とされていますが、新しくできた暗号資産などでネットワークが小さい場合にはこうした51%攻撃が行われやすいと言えるでしょう。

電力消費量が激しい

大量の計算を行うには、能力の高いコンピューターが多く必要です。これには大量の電力量が必要とされます。現在、ビットコインのマイニングに使われる電力量は小規模な国が消費する電力量よりも多いと言われています。ケンブリッジ大学のオルタナティブ金融センターのデータによると、ビットコインの電力消費量は現在、年間で59.03テラワットとされ、スイスやクウェートよりも大きくなっています。

電力消費が大きいために、ビットコインなどのPoWを採用している暗号資産は環境負荷が大きいとの批判もあります。

スケーラビリティ問題

ビットコインのブロックチェーンでは約10分に一つのブロックが承認できるように自動で調整されています。そのために処理件数は1秒間に5〜10件程度とされており、VISAカードなどの1700件と比べると格段に少ないことが課題とされます。処理件数が少なければ、日常の決済に用いることが難しくなります。多くの人が同時に決済をすると、処理するのに時間がかかってしまうためです。ビットコインでは処理速度が遅いことから送金の遅延の課題があります。これが「スケーラビリティ問題」と言われます。

ビットコインキャッシュなどはこの処理件数をブロックサイズの拡大によって解決を図っています。

一方で、ビットコインにも解決策がないわけではありません。ビットコインはライトニングネットワークと呼ばれる技術を使うことで課題解決を図ろうとしています。

ライトニングネットワークとはブロックチェーンの外で取引を行うことで、暗号資産の送付速度の向上や1円以下の少額決済(マイクロペイメント)対応に向けた安価な送金手数料を実現する技術です。ライトニングネットワークはミリ秒単位で数千のトランザクションを可能にするとされています。特に暗号資産取引所などへの導入が有用なユースケースとして考えられますが、現在は実験段階で、開発の煩雑さなどから導入は進んでいません。

ビットコイン以外でも使われるPoW

PoWはビットコイン以外の暗号資産にも多く取り入れられています。代表的なものは以下です。

  • ・ビットコインキャッシュ
  • ・ライトコイン
  • ・イーサリアム
  • ・イーサクラシック
  • ・モナーコイン

仮想通貨アナリストのYassine Elmandjra氏のツイートによると、ビットコインマイナーが受け取った報酬が、ライトコインなどその他全てのPoWを採用している暗号資産の報酬のうち80%ほどを占めているとされています。今後もイーサリアムがPoSに移行することを考えると、ビットコインのシェアはますます高まっていくことが考えられます。

そうなるとPoWを採用しているアルトコインのネットワークは弱くなることも想定されるでしょう。

その他のプルーフ・オブ・●●

暗号資産にはPoWの他にも「プルーフ・オブ・●●」というのはいくつか存在します。コンセンサスアルゴリズムは暗号資産ごとに異なっています。代表的なものをいくつか紹介しましょう。

プルーフ・オブ・ステーク(イーサリアム)

PoWの次に有名なのがPoS(プルーフ・オブ・ステーク)です。これは所有する暗号資産の保有量(ステーク)を元に、ブロックを承認したり生成したりする権利が得られる仕組みです。PoWが懸念される51%攻撃や大量の電力消費といった課題を解決できると期待されています。また計算の時間が少ないことからスケーラビリティ問題も解決できるとされます。

しかし、「保有量に応じて承認などの権利を得られる」ということから、暗号資産を使用せずに保有し続けてしまうことで流動性が低下するのではないかとの懸念もあります。

PoSを採用しているのはカルダノ(ADA)やテゾス(XTZ)、トロン(TRX)などがあり、イーサリアムは早ければ2020年11月にもPoSに移行するとされています。

プルーフ・オブ・リザーブ(テザー)

ステーブルコインのテザーが採用しているものです。テザーは米ドルを裏付けとしておよそ1ドルに価値を固定している暗号資産です。

テザーはテザー社に米ドルを払うと、同額のテザーが発行されるという仕組みになっています。これを「Proof of Reserve:PoR」と言います。

反対にテザー社の口座からテザーが米ドルに換金されれば同額のテザーが破棄されます。

現在、このテザーは急速に時価総額を伸ばしており、2020年9月上旬時点でXRPを抜いて3位となっています。

プルーフ・オブ・インポータンス(ネム)

暗号資産の保有量や取引量、取引回数といった要素を総合的に評価し、貢献度(Importance)が高い人にブロックを生成する権利が与えられるものです。PoIはマイニングによる資産の偏りを是正するために開発されました。主にネムで用いられているものです。

まとめ

PoWは大量の計算をすることで、合意をとるコンセンサスアルゴリズムの一つです。ビットコインやライトコインなど、主要な暗号資産に使われていることからも暗号資産のコンセンサスアルゴリズムで最も代表的なものといえるでしょう。

一方で、電力消費やスケーラビリティ問題などの課題も指摘されています。そのため、イーサリアムなど、PoWからPoSへ移行する暗号資産も存在するなど、問題を克服するために異なるアルゴリズムに移行しようとする事例も出てきています。

ネムのプルーフ・オブ・インポータンス(PoI)については「暗号資産「ネム」のハーベストとは?「カタパルト」動向にも注目」でさらに詳しく解説していますので、是非ご覧ください。

※掲載されている内容は更新日時点の情報です。現在の情報とは異なる場合がございます。予めご了承ください。

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