暗号資産クアンタム(QTUM)の今後は?特徴や将来性を解説

クアンタム
今後
2020-09-02 更新

クアンタム(QTUM)はクアンタム財団(Qtum Foundation)により開発されたオープンソースブロックチェーンプロジェクトです。2016年3月にプロジェクトを開始、2017年3月から実施したICO(イニシャル・コイン・オファリング)では1560万ドルを調達。同年9月にメインネットを立ち上げています。また、国内においては、ホワイトリスト化された暗号資産であり、安全性等について一定の評価を得ています。

クアンタムは、ビットコイン(BTC)とイーサリアム(ETH)の長所を併せ持つように設計されているパブリックブロックチェーンです。ビットコインの安全性の高い残高確認方法である「UTXO」のトランザクションモデルを採用するとともに、イーサリアムのスマートコントラクト機能を導入しています。

クアンタムはUTXOが機能するように設計されたイーサリアム・バーチャル・マシンでスマートコントラクトを動作させる「アカウント・アブストラクト・レイヤー」(AAL)という技術を開発・採用し、これを実現しています。

クアンタムのもう1つの特徴は、プルーフ・オブ・ステーク(PoS)のコンセンサスメカニズムを採用していることです。PoSでは、通貨の保有量や年数に応じてステーキング報酬を得ることができます。PoSは、膨大な計算を必要とするプルーフ・オブ・ワーク(PoW)のマイニングによる大量の電力消費がない点などがメリットです。

クアンタムを保有することで、ブロックチェーン上でのトランザクション手数料の支払に使えるほか、前述のPoSによるステーキング報酬を受け取ることもできます。

クアンタムの将来性

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クアンタムの創設者と技術面での提携

クアンタムの将来性を考える上で、まずクアンタムの開発を進める経営陣についてみてみます。クアンタムを率いるのは、同財団の共同創業者兼CEOのパトリック・ダイ氏です。ダイ氏は中国IT大手のアリババ出身。2012年から暗号資産の世界に入り、2016年にクアンタムを創業しました。ダイ氏は、2017年には経済誌Forbesの中国語版で『30 under 30』(30歳以下の若手起業家)の1人に選ばれています。

黎明期から暗号資産のエンジニアであり、大手企業での経験を持つダイCEOが率いるクアンタムは、様々な企業との提携を進めています。19年にはGoogle Cloudと提携しています。Googleのクラウドサービス上でクアンタムのブロックチェーンを活用して分散型アプリ(DApps)を手軽に開発できるサービスを提供しています。また18年にはAmazonのAWS中国部門と技術提携して開発を進めています。

ビジネスを意識したブロックチェーン

クアンタムの開発陣は、ビットコインとイーサリアムの長所を取り入れ、実際のビジネスシーンで利用されることを意識し、ブロックチェーンを開発しています。クアンタムのブロックチェーン上での独自トークン(QRC-20トークン)の作成や分散型アプリの構築、サプライチェーン管理の自動化、スマートコントラクトの自動執行といったビジネス利用を想定しています。

またクアンタムでは、ライトウォレットを採用しています。UTXOを採用することで従来のウォレットに比べてデータ量が少なくなったライトウォレットでは、スマートフォンなどのモバイル端末でもアクセスしやすいのが特徴です。

ビットコインとイーサリアムの長所を導入することで、スムーズで安定的にスマートコントラクトを実行し、分散型アプリを安全に実行できるようにしています。

クアンタムのロードマップ

ビットコインとイーサリアムの長所を取り入れたクアンタムは現在、独自テクノロジーに大きな力を注いでいます。クアンタムをさらに使いやすくするための機能を追加し、より魅力的なブロックチェーンにし、ビジネス面でのユースケースを拡大させようとしています。

オフラインステーキング

1つが、ネットワークに接続せずにステーキングできるようにする、オフラインステーキングです。ユーザーがスマートフォンやハードウェアウォレット、オンラインウォレットからステーキングできるようにします。ステーキングの参入障壁を減らし、セキュリティを高めるのが狙いです。

これまではステーキングに参加するには、ブロックチェーンネットワーク上でノードを実行する必要がありました。しかし、一般的なユーザーがノードを実行するにはハードルが高いものでした。

このオフラインステーキングでは、クアンタムのユーザーは、スマートコントラクトを通じてステーキングを委任することもできるようになります。トークン自体はユーザーの管理下にありつつ、「スーパーステーカー」と呼ぶ特定のユーザーにステーキングを委任し、オフラインでもステーキングをできるようにします。取得したブロック報酬はUTXOに基づいて自動的に配布されることになります。

オフラインステーキングの正式リリースは2020年第3四半期の予定となっています。

2020年4月にオフラインステーキングのスマートコントラクトのコード監査が行われており、「重大度の高いセキュリティ問題は見つからなかった」と報告しています。2020年6月の発表では今年夏にテストネット用にスマートコントラクトを展開する予定です。

「ファントム」プライバシープロトコル

クアンタムでは「ファントム」と呼ぶプライバシー強化のプロトコルを準備中です。これはリアルなビジネスシーンへの実装を考慮し、トランザクションのプライバシーを保護することを目指しています。

このプロトコルを使うことで、プライバシーステーブルコインやプライバシーDeFi(分散型金融)の実装といった、プライバシー関連のアプリケーション開発ができます。ビジネス面でのアプリケーション展開をより深化できると期待されています。

またクアンタムの技術ロードマップによれば、スマートコントラクトに基づくプライバシー資産発行や、プライバシー計算のための手数料の削減、またゼロ知識証明の最適化による計算量の削減といったメリットが期待できるとされています。

ファントムのプロトコルは2020年第3四半期にメインネットで正式展開する予定です。

クアンタム・ニュートロン

C、C ++、Rust、Python、GOなどプログラミング言語を使う開発者でも分散型アプリ(DApps)やスマートコントラクトの開発をできるようにするのが、クアンタム・ニュートロンです。これにより、より強力で柔軟なプラットフォームとなり、膨大な数の開発者が参加する道を開くことができると期待されています。

クアンタム・ニュートロンは現在開発段階にありますが、2020年第4四半期に正式にリリースされ、クアンタムのメインネットに展開される予定です。

クアンタムを巡る懸念事項

プライバシー関連の規制

クアンタムは「ファントム」の導入でプライバシー機能を強化しようとしています。しかし、モネロやジーキャッシュのようにプライバシー機能が問題視される懸念があります。ただクアンタムの開発チームは「技術はあくまで中立」と述べており、プライバシー機能を使うサービスサイドや取引所での本人確認(KYC)といった規制面での対応に協力する考えを示しています。

中国での暗号資産事情に影響を受ける可能性

創業者のダイ氏は中国出身であり、クアンタムは中国のブロックチェーンエコシステムから生まれたプロジェクトです。そのため、中国情勢の影響を受けるのではないかという見方もあります。中国では、ブロックチェーン技術を積極的に推進する一方で、暗号資産に対しては厳しい姿勢で臨んでいます。

中国が将来的に暗号資産市場に対してより厳しい姿勢望むことになれば、クアンタムが影響を受ける可能性があるでしょう。逆に中国が暗号資産市場を容認する姿勢に変化することになれば、中国発プロジェクトとして恩恵を受ける可能性もあるかもしれません。

ビットコインやイーサリアムに影響される可能性

前述の通り、クアンタムはビットコインのUTXO、イーサリアムのスマートコントラクト機能という2つの長所を持ったブロックチェーンプロジェクトです。もし仮にビットコインやイーサリアムで何らかの問題が発生した場合、たとえクアンタム自体に問題がなくても、リスクヘッジの観点からユーザーのクアンタム離れを起こす懸念があるかもしれません。

新型コロナウィルスの影響は?

現在進行している新型コロナウィルスのパンデミックが、クアンタムの開発に悪影響を及ぼす可能性があるかもしれません。実際、クアンタムの開発チームによれば、米デンバーでオフィス開発の準備を進めていましたが、新型コロナウィルスの感染拡大を受けて、この計画には遅れが発生しています。

クアンタムの開発チームによれば、約50人のクアンタムチームがアジアや欧州などの様々な国で働いていますが、リモートワークによって開発作業は継続できており、新型コロナウィルスの影響は最小限に抑えられているそうです。

まとめ

クアンタムは今後に期待できるプロジェクト

ビットコインのUTXOによる高い匿名性とイーサリアムのスマートコントラクト機能という、2つの暗号資産の特徴を併せ持つパブリックブロックチェーンです。プルーフ・オブ・ステークス(PoS)も導入しており、高い技術力を持つプロジェクトです。高い技術力が評価され、GoogleやAmazonといった大企業との提携が行われています。

中国のエコシステムの中から生まれたブロックチェーンプロジェクトであることから、中国での今後のブロックチェーンの動向に注意をする必要があるでしょう。またビットコインやイーサリアムの特徴を取り入れていることから、その影響にも目を向けることが重要です。

2020年にはプライバシー機能強化やオフラインステーキング導入といった技術開発が進められています。オフラインステーキングではユーザー層の拡大、プライバシー機能強化ではビジネス面でのクアンタムのブロックチェーン活用拡大も期待できるでしょう。ビジネスシーンや社会実装での活用を目指すクアンタムにとって、重要なマイルストーンになりそうです。

高い技術開発力や世界的な大企業との提携といった要素を考えれば、クアンタムは今後に期待できる暗号資産といえるでしょう。

※掲載されている内容は更新日時点の情報です。現在の情報とは異なる場合がございます。予めご了承ください。

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