暗号資産クアンタム(QTUM)の今後は?特徴や将来性を解説
クアンタム(QTUM)はクアンタムチェーン財団(Qtum Chain Foundation)により開発されたオープンソースブロックチェーンプロジェクトです。
ビットコインとイーサリアムの長所を合わせ持っており、さまざまな企業と提携し、プロジェクトが進められるなど、今後の展開が期待されています。
この記事では、クアンタムの将来性や今後の展開などについて解説します。
クアンタムとは
2016年3月にプロジェクトを開始、2017年3月から実施したICO(Initial Coin Offering)では1560万ドルを調達し、同年9月にメインネットを立ち上げたクアンタムは、国内の暗号資産交換業者で取り扱われている暗号資産(仮想通貨)であり、安全性等について一定の評価を得ています。
クアンタムはビットコインの安全性の高い残高確認方法である「UTXO」のトランザクションモデルを採用するとともに、イーサリアムのスマートコントラクト機能を導入していることが特徴で、UTXOが機能するように設計されたイーサリアム仮想マシンで「アカウント・アブストラクト・レイヤー」(AAL)という技術を開発・採用し、スマートコントラクトを実現しています。
また、クアンタムはネットワークの維持にプルーフ・オブ・ステーク(Proof of Stake:PoS)のコンセンサスアルゴリズムを採用しているため、利用者はプルーフ・オブ・ワーク(Proof of Work:PoW)のマイニング(採掘)による大量の電力を必要とせず、暗号資産を保有する量や期間に応じてステーキング報酬を得ることができる点などがメリットです。
クアンタムを保有することで、ブロックチェーン上でのトランザクション手数料の支払いに使えるほか、ステーキングに参加して報酬を受け取ることもできます。
クアンタムの独自テクノロジー
ビットコインとイーサリアムの長所を取り入れたクアンタムは現在、独自テクノロジーに大きな力を注いでいます。クアンタムをさらに使いやすくするための機能を追加し、より魅力的なブロックチェーンにすることで、ビジネス面でのユースケースを拡大させようとしています。
オフラインステーキング
そのテクノロジーの1つが、2020年8月に実装された「オフラインステーキング」です。
このテクノロジーにより、ユーザーがネットワークに接続せずにスマートフォンやハードウェアウォレット、ホットウォレットからステーキングできるようすることで、ステーキングの参入障壁を減らし、セキュリティを高めることが狙いです。
これまではステーキングに参加するには、ブロックチェーンネットワーク上でノードを実行する必要がありました。しかし、一般的なユーザーがノードを実行するにはハードルが高いものでした。
このオフラインステーキングによって、クアンタムのユーザーはスマートコントラクトを通じてステーキングを委任できるようになります。トークン自体はユーザーの管理下にありつつ、「スーパーステーカー」と呼ぶ特定のユーザーにステーキングを委任し、オフラインでもステーキングをできるようにします。取得したブロック報酬はUTXOに基づいて自動的に配布されます。
「ファントム」プライバシープロトコル
クアンタムでは「ファントム」と呼ばれるプライバシー強化のプロトコルが実装されています。これはリアルなビジネスシーンへの実装を考慮し、トランザクションのプライバシーを保護することを目指しています。
このプロトコルを使うことで、「プライバシーステーブルコイン」や「プライバシーDeFi(分散型金融)」の実装といった、プライバシー関連のアプリケーション開発ができます。ビジネス面でのアプリケーション展開をより深化できると期待されています。
またクアンタムの技術ロードマップによれば、スマートコントラクトに基づくプライバシー資産発行や、プライバシー計算のための手数料の削減、またゼロ知識証明の最適化による計算量の削減といったメリットが期待できるとされています。
ただし、2020年の段階でプロトコル自体は実装されてはいるものの、マネーロンダリングの懸念から日本を始めとした世界各国でプライバシーを重視した暗号資産が上場廃止されていることもあり、2023年1月時点では実際の運用までは至っていません。
ヤヌス(Janus)
ヤヌスはクアンタムとイーサリアムとの互換性を高めた新技術です。ヤヌスにより、開発者は、イーサリアムの開発言語であるソリディティ(Solidity)ベースのアプリケーションをクアンタムに移行できます。
分散型アプリケーションやNFTなどは多くがイーサリアム基盤で作成されているため、ヤヌスの実装によって、開発プラットフォームとしてクアンタムが選ばれる可能性が高まるでしょう。
クアンタムの将来性
ビットコインとイーサリアムの長所を合わせ持ったクアンタムは、将来性が期待される暗号資産(仮想通貨)です。具体的にどのような点が注目されているのかを解説します。
大手テック企業との提携
クアンタムの将来性を考える上で、まずクアンタムの開発を進める経営陣についてみてみます。クアンタムを率いるのは、同財団の共同創業者兼CEOのパトリック・ダイ氏です。ダイ氏は中国IT大手のアリババ出身で2012年から暗号資産(仮想通貨)の世界に入り、2016年にクアンタムを創業しました。ダイ氏は、2017年には経済誌Forbesの中国語版で『30 under 30』(30歳以下の若手起業家30人)の1人に選ばれています。
黎明期から暗号資産のエンジニアであり、大手企業での経験を持つダイCEOが率いるクアンタムは、様々な企業との提携を進めています。2018年にはAmazonのAWS中国部門と技術提携しました。さらに、2019年にはGoogle Cloudと提携しています。Googleのクラウドサービス上でクアンタムのブロックチェーンを活用して分散型アプリ(DApps)を手軽に開発できるサービスを提供しています。
ビジネスを意識したブロックチェーン
クアンタムの開発陣は、ビットコインとイーサリアムの長所を取り入れ、実際のビジネスシーンで利用されることを意識し、ブロックチェーンを開発しています。クアンタムのブロックチェーン上での独自トークン(QRC-20トークン)の作成や分散型アプリの構築、サプライチェーン管理の自動化、スマートコントラクトの自動執行といったビジネス利用を想定しています。
またクアンタムでは、ライトウォレットを採用しています。UTXOを採用することで従来のウォレットに比べてデータ量が少なくなったライトウォレットでは、スマートフォンなどのモバイル端末でもアクセスしやすいのが特徴です。
ビットコインとイーサリアムの長所を導入することで、スムーズで安定的にスマートコントラクトを実行し、分散型アプリを安全に実行できるようにしています。
メタバースとの連携
クアンタムはメタバースプラットフォームとの連携も期待されており、2022年にはアメリカのメタバースプロジェクトと提携しました。
2022年ごろから注目が高まるメタバースでは、安価な取引手数料と多くのユーザーに対応するためのスケーラビリティが重要です。
PoSを採用しているクアンタムは、安価な手数料やスケーラビリティを実現できます。2023年以降に、さらに提携するメタバースプロジェクトが出てくるかもしれません。
ビットコインとイーサリアムのアップデート
ビットコインとイーサリアムの特徴を併せ持つクアンタムは、この両方のアップデートの恩恵を受けられる特徴もあります。
2022年9月には、ビットコインのプライバシー機能やスマートコントラクトに関する大規模アップデートであるタップルートにクアンタムが対応したことが発表されました。イーサリアムに関しても、現在進められているアップデートにクアンタムが対応することもあるかもしれません。
クアンタムを巡る懸念事項
将来が期待されるクアンタムですが、懸念事項も指摘されています。
プライバシー関連の規制
クアンタムは「ファントム」の導入でプライバシー機能を強化しようとしています。しかし、モネロやジーキャッシュのようにプライバシー機能が問題視される懸念があります。すでにプライバシー機能自体は実装されてはいるものの、世界各国の規制当局がプライバシー技術に関してはマネーロンダリングやテロ資金供与につながる懸念を示しているために、実際の運用に至るまでのプロジェクトが進んでいません。クアンタムの開発チームは「技術はあくまで中立」と述べており、プライバシー機能を使うサービスサイドや取引所での本人確認(KYC)といった規制面での対応に協力する考えを示しています。
ビットコインやイーサリアムに影響される可能性
前述の通り、クアンタムはビットコインのUTXO、イーサリアムのスマートコントラクト機能という2つの長所を持ったブロックチェーンプロジェクトです。もし仮にビットコインやイーサリアムで何らかの問題が発生した場合、たとえクアンタム自体に問題がなくても、リスクヘッジの観点からユーザーのクアンタム離れを起こす懸念があるかもしれません。
開発の遅延
クアンタムはQTUM保有者のコミュニティから度々、開発が遅いことが指摘されています。開発だけでなく、クアンタムの利点をアピールしたり、マーケティング戦略なども乏しいとの批判を浴びたりしています。
動きの速い暗号資産業界では、開発の遅さはユーザー離れにつながってしまい、価格の下落を引き起こすことも考えられます。クアンタムの開発は、短期的な視点よりも長期的な視点で見守ることが必要でしょう。
まとめ
ビットコインのUTXOによる高い匿名性とイーサリアムのスマートコントラクト機能という、2つの暗号資産(仮想通貨)の特徴を併せ持つパブリックブロックチェーンです。PoSも導入しており、高い技術力を持つプロジェクトです。高い技術力が評価され、GoogleやAmazonといった大企業との提携が行われています。
ビットコインやイーサリアムの特徴を取り入れていることから、その影響にも目を向けることが重要です。
2023年にメタバースや注目が高まるウェブ3に関しての提携や取り組みが加速しそうです。ビジネスシーンや社会実装での活用を目指すクアンタムにとって、重要なマイルストーンになるでしょう。
高い技術開発力や世界的な大企業との提携といった要素を考えれば、クアンタムは今後に期待できる暗号資産といえそうです。
※掲載されている内容は更新日時点の情報です。現在の情報とは異なる場合がございます。予めご了承ください。
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