次世代ブラウザ「ブレイブ」と暗号資産(仮想通貨)BATの今後

ベーシックアテンショントークン
今後
2020-09-02 更新

今、分散型ブラウザ「ブレイブ」とネイティブトークンであるBATが日本で盛り上がりを見せています。

広告を見れば報酬としてBAT(日本ではBATポイント)がもらえる仕組みを提供するブレイブは、ネット広告表示に煩わしさを感じるユーザーの間で人気を博しています。中でも日本では2020年春頃から安全性等について一定の評価を得ている暗号資産としてホワイトリスト化され、DMM Bitcoinでのレバレッジ取引や他の暗号資産交換業者への上場が決まったほか、国内のアプリランキングでも人気が急上昇しています。

2020年7月末にはBrave Software Asia Office Opening Partyが東京で開かれ、ここに来て一気にブレイブ/BAT熱が高まっています。

本コラムでは、人気急上昇中の暗号資産(仮想通貨)BAT(ベーシック アテンション トークン)やBATを使う次世代型ブラウザ「ブレイブ」の仕組み、日本での現状における展開状況について解説します。

また、ブレイブといえばプライバシー重視の方針でも有名です。欧州では一般データ保護規則(GDPR)をめぐり検索エンジン市場を独占するグーグルとの対決姿勢を鮮明にしました。

プライバシーの観点からグーグルを批判する根拠とは何か?

分散型技術を使った次世代ブラウザが欧州のプラバシーをめぐる戦いの最前線で何を主張しているのか、本コラムで迫ります。

分散型ブラウザ「ブレイブ」と暗号資産BAT

BATはブレイブのネイティブトークンです。先述の通り、ブレイブのブラウザ上に掲載される広告を見ることに対する報酬としてユーザーはBATというトークンを獲得できます(後述の通り、日本ではBATではなくBATポイント(BAP)が付与されます)。

2018年3月に発表されたホワイトペーパーは、「デジタル広告は壊れている」という刺激的な文でスタートします。当時は、スマホ向けの広告が「平均的なユーザーのデータプランに対して1月あたり23ドル(約2450円)余分なデータ料金を課金し、ページ速度を遅延させて、バッテリーの寿命を21%減少させる」という不幸な結果をもたらしていると主張し、次のように続けました。

「出版側は売り上げの減少に直面し、ユーザーは裏切られ続け、そして広告主は効果を図る能力をなくしている。解決策は、ブロックチェーンに基づいた分散型で透明性の高いデジタル広告交換だ」

その上でブレイブは、自らが「第3者の広告や追跡者をブロックし、ユーザーの注目度を測って広告主に報酬を与える台帳システムを構築する」と宣言。BATについては、分散型広告交換のためのトークン」とし、「プライバシーを保護する一方で、注目してくれた(すなわちアテンションをくれた)ユーザーに報いる」と説明しました。

要約すると、ブレイブは、ユーザーにとってはプライバシーの保護と広告閲覧による報酬を、出版元に対してはマネタイズの機会を、そして広告主にはより高いコンバージョン率をもたらすことを狙ったブラウザになります。

日本ではBATでなくBAP

先述の通り、日本ではユーザーが広告を見た対価としてもらえるものがBATではなく、BAPとなっています。BAPとは、「BATポイント」の略。資金決済法上の関係から、日本ではブレイブで得たBAPを取引所に送金して日本円や他の暗号資産への交換ができません。

ブレイブは、「日本居住者の方へ」と題して下記のようにBATとBAPの違いをまとめています。

日本では資金決済に関する法律を遵守するために、BATではなくBATポイント(略称BAP)が使われます。

BATポイントとBATが同じ点
・BATポイントはBATと同様にお気に入りのクリエイターやウェブサイトに送ることが可能です。決済に利用できるパートナーも開拓予定です。
・BATポイントの価格はBATと連動しています。

BATポイントがBATと異なる点
・BATポイントを購入すること、BATをBATポイントに替えることはできません。
・BATポイントをBATに替えることは現時点ではできません。

例えば、6月に連携が報じられたプロeスポーツチームを運営するラッシュゲーミング用の限定ブラウザでは、広告を閲覧して入手したBAPでチームを支援できるということです。

有名ブランドと暗号資産BAT

ブレイブの月刊アクティブユーザーは2020年5月時点で1500万人を突破。過去1年間で125%の増加を記録しました。

人気に裏打ちされるようにBAT価格は過去1年間で約12%上昇しています。

(出典:DMM Bitcoin、BAT/日本円の価格推移(全期間))

ブレイブは、水面下で米国の大手企業との連携を強化しています。

ブレイブの広告キャンペーン数は2020年5月に1530回を記録。昨年10月の400キャンペーンから255%増えました。有名ブランドも多く参加しており、例えば、アマゾンやインテル、ペイパル、ベライゾンなどが名を連ねています。

この他、ブレイブは様々な付加価値を提案しています。

2019年8月にはツイッターで「個人のコンテンツクリエーター」に対してBATでチップを支払えるようになったと発表しました。2020年3月には、BATがアマゾンやアップル、ウォルマートなどのギフトカードと交換が可能になったと発表。新型コロナウイルスが蔓延する中、2020年5月には「Brave Together」というビデオ会議機能を開発しました。

先述の通り、BATの人気は日本で急上昇中です。

執筆時点(2020年7月)でアンドロイドアプリのランキング「コミュニケーション」カテゴリーにおいて、日本で第3位に入っています。これはYahoo!Mailやスカイプ、メッセンジャーよりも上位という結果です。

また、2020年春頃からは国内の暗号資産交換業者への上場も相次いで発表されました。

4月から7月の間に、暗号資産交換業者3社とDMM BitcoinがBATのレバレッジ取引の取り扱いを開始しました。

ちなみに韓国のブロックチェーンリサーチ企業Xangleによりますと、BATが日本市場で上場できた理由は、財務面で「継続的な収益を創出」し183カ国に対してBrave広告を支援しているとしています。また、日本市場でユーザーへの報酬としてBATではなくBAPを支給するなど日本支社を設立して資金決済法に準拠している点を評価したようです。

この他、2020年7月にはブレイブは日本の暗号資産交換業者と業務提携を発表しました。詳細は明らかになっていないのですが、両社は暗号資産ウォレットを共同で開発するということです。

ブレイブのもう1つの大きな特徴は、プライバシーの保護にあります。上記のようにユーザー、出版元、広告主にとっての利益面でのメリットだけではなく、必ずユーザーのプライバシーの保護を目指すと強調します。

その方針が色濃く表れているのが、欧州の一般データ保護規則(GDPR)をめぐるグーグルとの戦いです。

2020年2月にグーグルの欧州本社があるアイルランドのデータ保護委員会に対してグーグルを正式に提訴。「データは特定のはっきり規定された正当な目的のために集められるべき」と謳うGDPRの第5条第1項に違反していると主張しました。

また、ブレイブは2月の告訴と同時に「ブラックボックスの中で」という研究を発表。「グーグルの顧客や技術パートナー、開発者、法律家、利用者などのために書かれた様々な文書を分析した結果、グーグルが個人データをウェブサイトやアプリ、OSへの統合から入手しており、収集の目的が数百のケースでしっかりと定義づけられていない」と批判しました。

ブレイブのChief Policy & Industry Relations Officerであるジョニー・ライアン博士は、グーグルがYouTubeやGメールなど「インターネットの舞台裏」で集めるデータの使い方で問題提起をしています。

「みんなの個人データを持っているからといって、グーグルが全てのビジネスでどんな目的にも使うことを許可されているわけではありません。むしろ、それぞれの特別な目的について法的な根拠を探さなければなりませんし、透明性を担保しなければなりません」

ブレイブの主張は、グーグルは法的根拠を求めずに個人データの様々な目的で再利用し続けているというものです。

さらに4月に入ってもブレイブは畳みかけます。

欧州委員会に対してGDPRの規制に充分に対応していないEU諸国になんらかの措置をとるように働きかけたのです。ブレイブによりますと、「GDPR規制で専門家の数が10人を超えているのは28ヵ国中でたった5ヵ国」であり「大手ハイテク企業を調査するだけの能力を持っていない」ということです。

まとめ

2020年は、日本におけるブレイブとBATの認知が本格的に拡大し始めた年と考えられるかもしれません。大手取引所への上場、大手メディアによる報道、日本支社のオープンなど、今後の普及に向けて着々と足場を固め始めています。

また、今後はBATとBAPの関係にも注目が集まります。例えば、BAPがBATや日本円と交換できるようになるのか?など、ユーザーとしては気になる点でしょう。

一方、欧州GDPR戦線は始まったばかりです。GAFAの一角を示すグーグルの牙城をプライバシーの観点からどこまで崩せるのか注目です。

※掲載されている内容は更新日時点の情報です。現在の情報とは異なる場合がございます。予めご了承ください。

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