ユーティリティトークンとは?特徴や機能、事例を解説
暗号資産(仮想通貨)に関連して、「〇〇トークン」という用語を耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか?トークンにはいくつかの種類があり、それぞれがどう違うのかわかりにくい部分があります。
本記事では、トークンの概要を紹介した上で、ユーティリティトークンについて解説していきます。ミームコインとの違いにも触れていますので、疑問に思っている方はぜひご覧ください。
トークンとは何か?
暗号資産の世界でトークンという単語を耳にする機会は多いですが、実は「暗号資産」と「トークン」という単語に明確な違いはありません。
ビットコインやイーサリアムといった暗号資産全体をトークンとみなすこともあれば、イーサリアムブロックチェーンなどで発行されるチェーンリンク(LINK)や、ポリゴン(MATIC)といったERC-20規格の暗号資産をトークンと呼ぶこともあります。
2016年〜2017年頃はトークンを販売して資金調達を行う「ICO」(Initial Coin Offering)という手法が注目を集めました。ただ、ICOは誰もが実施できる反面、詐欺的なものが横行したことから、現在、ICOは「資金決済法」(STOは「金融商品取引法」)によって規制されています。
現在、国内でトークンを用いた資金調達を行う場合、厳格な身分証明を行い、暗号資産取引所を通して実施する「IEO」(Initial Exchange Offering)という方式が主流になっています。
前述のように、「トークン」と「暗号資産」という呼び方に意味の違いがあるわけではありません。しかし、何らかの実用性がある「ユーティリティトークン」と証券に近い性質の「セキュリティトークン」、アートやゲームで使用される「ノンファンジブルトークン」(NFT)には明確な違いが存在します。
2024年現在のトレンドとして、実用性のあるユーティリティトークンと、特に具体的な用途や価値提案を持たない「ミームコイン」が対照的に論じられることもあります。ミームコインはドージコイン(DOGE)や、ドージコインのオマージュであるシバイヌ(SHIB)のようなインターネット文化に基づいた暗号資産で、社会的現象やジョーク(ミーム)に影響を受けて開発されています。
ミームコインは、楽しさやユーモア、コミュニティを重視しており、これに基づいた話題性や人気などに由来した価値を持つことがあるトークンです。
ユーティリティトークンとは?
ユーティリティトークンは、何らかの実用性を持ったトークンであり、主として特定のサービスにアクセスする権利として機能します。
ユーティリティトークンの代表例でもあるLINKトークンを挙げてみましょう。LINKは、オラクルネットワークという技術でブロックチェーンに現実世界の情報を提供するネットワークを獲得できる暗号資産です。具体的には、天気予報会社やスポーツメディアなどが、その結果をブロックチェーンに送信することで、ブロックチェーンに現実世界の情報をもたらすことができるようになります。
このように、ユーティリティトークンは何らかの使い道がある暗号資産の総称です。
ユーティリティトークンの価値は?
ユーティリティトークンは、提供されるサービスやコミュニティの質や成長に強く連動します。もしサービスが魅力的でユーザーが増え続ける場合、トークンの需要も高まり続け、結果的にトークン自体の価値が上昇するかもしれません。
また、ユーティリティトークンは、多くのユーザーが保有することによって更に需要が高まるため、近年ではステーキングと呼ばれる銀行の「定期預金」のような仕組みも副次的な機能として導入されつつあります。
当然、ユーザーにとってはステーキングによって利息を得たところでトークン本来の価格が下落してしまうこともあるため、リスクを高める行動であることは間違いないです。しかし、このようなインセンティブ構造によって売り圧力を緩和しつつ、メインとなるサービスに加えて長期的にトークンを保有する意味を持たせることで、トークンの価格安定化とサービスの活性化につなげようとしています。
ユーティリティトークンとミームコインの違い
これまで紹介したとおり、ユーティリティトークンは特定のプラットフォームやエコシステム内で有用性があるトークンで、プロジェクト推進者が運営するプラットフォーム上で本来の価値を発揮します。
ユーティリティトークンを用いたプラットフォームを開発する際、プロジェクト推進者はまず「ホワイトペーパー」と呼ばれるプロジェクトの仕様書のようなものを発行します。また、プロジェクトで使用されるコードの脆弱性を厳しくチェックした監査や、IEOなどによって多額の資金調達を行う必要があります。よって、ユーティリティトークンの多くは明確なビジネスケースや価値提案を持っています。
一方、ミームコインは多くの場合、インターネットのミームやジョークから生まれた暗号資産で、特定の機能や目的を持っているわけではなく、コミュニティや文化的な現象に基づいています。
代表例であるドージコイン(DOGE)は、もともとインターネット・ミームであった日本のとある柴犬をアイコンに採用して作られました。DOGEには一般的なユーティリティトークンで提供されるような厳密なホワイトペーパーは存在せず、コード監査や資金調達も行っていません。当初は使い道があまり考えられていなかったものですが、コミュニケーションの手段や、オンラインでの小規模な寄付やチップとして用いられるようになり、ブームを巻き起こしました。
ユーティリティトークンは具体的な機能やサービスを提供することで価値を高めることに対し、ミームコインは文化的な人気やコミュニティの盛り上がりに支えられている点で、両者は明確に異なっています。
ユーティリティトークンの紹介
それでは、ユーティリティトークンの事例を紹介しておきましょう。どちらも日本国内で取引可能な暗号資産です。
ブロックチェーンプラットフォーム「Ethereum」
イーサリアム(Ethereum)は、「スマートコントラクト」分野のパイオニアで、単に暗号資産を送るだけでなく、DApps(分散型アプリケーション)を構築したり、それを利用したりすることができるブロックチェーンプラットフォームです。
そして、このプラットフォームで実行するすべての動作には、暗号資産「イーサ」(ETH:Ether)による少額の手数料が必要です。
なお、暗号資産の世界では暗号資産名をプラットフォーム名で記載することが通例であり、暗号資産イーサについても、ほとんどの場合「イーサリアム(ETH)」のように表記されます。
イーサリアムは数万種をこえる暗号資産の中でも、ビットコインに次ぐ時価総額を誇っています。特にスマートコントラクト分野では圧倒的な影響力を持ち、同じようにスマートコントラクトを特徴としたブロックチェーンプロジェクトの全ての源流ともいえるでしょう。
関連コラム:
「イーサリアムの歴史を解説!アップグレードやハードフォークの経緯とは?」
「19歳でイーサリアムを開発したヴィタリック・ブテリンとは」
ブロックチェーンソリューション「Polygon」
ポリゴン(Polygon)は、イーサリアムのスケーリングソリューションとして広く採用されています。コスト効率の良いトランザクション、高速なブロック確認、そして高いセキュリティを提供する目的で生まれました。そして、サービス共通の基軸通貨として「マティック」(MATIC)というユーティリティトークンが採用されています。
ポリゴンを開発するPolygon Technologyは、EVM(Ethereum Virtual Machine)に対応した親和性の高いサイドチェーンである「Polygon PoS」、高い匿名性とスケーリング性を兼ね備えた「Polygon zkEVM」、ロールアップソリューションである「Polygon Miden」など、様々な技術を提供しています。
ポリゴンはまた、カーボンネガティブを目指しており、持続可能な技術開発を進めると共に、エコシステムの健全な拡大を目指す行動を続けています。
関連コラム:
「暗号資産(仮想通貨)ポリゴン(MATIC)とは?将来性や今後を解説」
オラクルネットワーク「Chainlink」
チェーンリンク(Chainlink)はブロックチェーンと実世界データを接続するプラットフォームです。スマートコントラクトというのは、契約をコードとして書き、自動で実行するプログラムです。これらは通常、ブロックチェーンの内部の情報にはアクセスできるものの、ブロックチェーン外のデータに直接アクセスする手段がありません。例えば、株価のデータや天気予報が契約の条件となっている場合、その情報をスマートコントラクトに届ける必要があります。
ここでチェーンリンクが登場します。チェーンリンクは、外部データソース、つまりインターネット上の情報、銀行の支払いシステム、他のブロックチェーンなどからデータを収集し、それをブロックチェーン上で動作するスマートコントラクトに届ける役目を果たします。これによって、スマートコントラクトはより多くのシナリオで活用できるようになり、例えば金融商品の自動的な取引、保険のクレーム処理、サプライチェーンの管理など、実世界の条件に連動した操作が可能となります。
一方、データをブロックチェーンに届けている「ノードオペレーター」は、その報酬として「LINK」トークンを獲得することができます。
LINKトークンはETHと交換できるほか、暗号資産取引所では法定通貨とも換金できる仕組みとなっているため、データの提供者にもチェーンリンクにデータを送る動機が与えられています。
プライバシー重視のWEBブラウザ「Brave」
「Brave」はプライバシー重視の比較的新しいWebブラウザです。デスクトップ版・モバイル版の両方がリリースされており、着実にダウンロード数を伸ばしています。
Braveは、広告代理店に多くの手数料が徴収され、プラットフォーム(GoogleやMetaなど)に多くの個人情報が収集・利用されているという課題を解決するために開発されています。広告ブロック機能が標準搭載されており、ユーザーの意思に関係なく広告が表示される仕組みではなく、広告を表示するかをユーザーが主体的に選択できる仕組みとなっています。
ユーザーが広告を視聴した際に、Braveに組み込まれているユーティリティトークンのベーシックアテンショントークン(BAT)が付与される仕組みになっており、BATは広告視聴のインセンティブ(動機)として機能しているのです。また、BATはメディア、広告主へのインセンティブとしても流通しています。
トークンが組み込まれたプロダクトとしてトップクラスに普及しているのがBraveであり、大きなユーザーグループにおいてBATがどのように機能するかは注目すべき点だといえるでしょう。
まとめ
ユーティリティトークンは、何らかの実用性を持っており、特定のサービスへのアクセス権として機能するトークンです。明確に使い道が存在するという点でミームコインと大きく異なります。ただし、ユーティリティトークンとして流通している場合であっても、プロジェクトが破たんしたり、解散してしまったりすると、使い道が消滅してしまう場合があるので注意が必要です。
国内で流通している暗号資産(トークン)としては、ユーティリティトークンに分類可能なものが大半であり、今後どのように発展していくのかは要注目だといえるでしょう。
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