ビットコインとマネーロンダリング対策の関係は?

ビットコイン
マネーロンダリング
2023-05-31 更新

ビットコイン(BTC)をはじめとする暗号資産(仮想通貨)は、仕組み上はネットワークに接続されていれば世界のどこへでも送付できます。したがって、場合によってはマネーロンダリング(マネー・ローンダリング、資金洗浄)などの犯罪に悪用されるリスクがあるため、各国でも対策が講じられており、日本も例外ではありません。

本記事では、「マネーロンダリングって聞いたことあるけどよく分からない」「DMM Bitcoinってマネーロンダリングの対策をやっているの?」といった疑問を持つ方に向けて、そもそものマネーロンダリングとは何かという話から、ビットコインとマネーロンダリング対策の関係性、そしてDMM Bitcoinの行っている対応について紹介していきます。

マネーロンダリング対策(AML)とは

「マネーロンダリング(Money Laundering)」とは、犯罪によって得た不正な利益の出所と所有者を隠すことで、捜査機関による差し押さえや摘発、犯罪の検挙を逃れる行為の総称です。日本語では「資金洗浄」と訳されます。

マネーロンダリング対策(AML:Anti-Money Laundering)は、テロ資金供与対策(CFT:Counter Financing of Terrorism)の取り組みと共に推進されており、ニュースサイトなどでは「AML/CFT」とひとまとめに記載されることが多くあります。マネーロンダリングによる不正な資金の隠匿や移動は、テロ組織などの反社会的勢力の組織強化や犯罪活動を支援するものと見なされ、日本国内においても犯罪として規定されています。

なぜ、AML/CFTの面でビットコインが注目されているのか

暗号資産(仮想通貨)のやり取りは、英数字の羅列であるアドレス同士で行われます。アドレスのみからユーザーの属性を特定することは困難です。ただし、一般的なブラウザやインターネットを介してやり取りする場合は、IPアドレスやモバイル端末の位置情報、取引の頻度や他のアドレスとの関係性などからユーザーの属性を絞り込むことは可能であるため、一概に暗号資産の匿名性が高いとは言い切れません。

とはいえ、インターネットに接続されていれば国際送金が簡単に行える暗号資産は、特定の条件下では匿名性が高くなる懸念もあります。法定通貨とは異なり、金融機関の関与なしに取引が完了可能なことから、マネーロンダリングなどの犯罪行為に悪用されるリスクがあるため、AML/CFTの面でビットコインをはじめとする暗号資産が注目されているのです。

暗号資産の仕組みに問題はなく、投資家・消費者保護が目的

当然ながら、AML/CFTの観点で注目されているからといって、暗号資産やブロックチェーンの仕組み自体に問題があるわけではありません。AML/CFTの目的は、あくまでも消費者・投資家保護や犯罪の防止にあり、金融システムへの信頼の向上や安全な環境を実現するものです。

例えば、日本国内の暗号資産交換業者では、口座開設時に本人確認書類(運転免許証など)の提示などが求められる「KYC(Know Your Customer)」があります。これは、「犯罪による収益の移転防止に関する法律(犯罪収益移転防止法)」に基づいた本人確認で、KYCを実施し消費者・投資家のリスクを低減するために行っています。海外では、口座開設時にKYCを実施していない事業者も存在しており、これらは消費者・投資家にとってはハイリスクな状態にあると覚えておくといいでしょう。

また、AML/CFTの遂行においては「金融活動作業部会(FATF)」という国際機関が大きな役割を担っているため、次に紹介しておきます。

国際機関「FATF(金融活動作業部会)」

「FATF(Financial Action Task Force)」は、麻薬組織やテロリスト、犯罪組織などへの資金供給を断つために、国際的なマネーロンダリング対策を行う政府間組織です。日本語では「金融活動作業部会」と訳されています。

国を越えて資金が行き交う現代社会において、一国だけがAML/CFTに沿った法規制を整備したところで有効な対策とはなり得ません。そこでFATFのような機関がAML/CFTの国際基準となる「FATF勧告」を策定し、FATF加盟国・地域が勧告に沿う形で法整備を行っているのです。

2023年2月現在、FATFにはG7を含む37ヵ国・2地域機関が加盟しており、9つのFATF型地域体を加えると、FATF勧告が適用される対象は世界200以上の国と地域になります。なお、FATF型地域体とは、地域ごとに存在し、FATF加盟国と未加盟国が所属する組織体です。FATF勧告をベースにした相互審査などが行われています。

トラベル・ルール

FATFが各国の規制当局に導入を求めている規則に「トラベル・ルール」があります。

トラベル・ルールとは、「利用者の依頼を受けて暗号資産の出金を行う暗号資産交換業者は、出金依頼人と受取人に関する一定の事項を、出金先となる受取人側の暗号資産交換業者に通知しなければならない」というルールで、FATF勧告の一つです。

日本では、このトラベル・ルールに関連して2022年12月にマネーロンダリングの対策強化に向けた6つの改正法が可決・成立しました。6つの改正法とは、犯罪収益移転防止法、国際テロリスト財産凍結法、外為法、テロ資金提供処罰法、組織犯罪処罰法、麻薬特例法といったマネーロンダリングに関する法律です。この改正によって暗号資産をトラベル・ルールの対象に加えました。

日本以外ではアメリカやシンガポールでも法制化されており、トラベル・ルールは海外でも適用が進んでいます。

日本の法整備の経緯

前述のようにトラベル・ルールが法制化された日本ですが、これまで日本では、2008年10月に公表された「第3次FATF対日相互審査」の報告書で、日本のAML/CFTの取り組みに対して厳しい評価が付けられたことを受けて法整備が進められてきました。

例えば、2011年には顧客管理の強化という観点から、「犯罪による収益の移転防止に関する法律(犯罪収益移転防止法)」が改正されています(2013年施行)。ところが、2014年に、顧客の実質的支配者の確認方法などが不十分という声明がFATFより発出され、日本は不備への迅速な対応が求められました。

FATF勧告への対応が遅れている(不十分な)国は、グローバル金融取引においてリスクの高い国と見なされます。この評価の影響は非常に大きく、その国の金融システムの安定性や信頼性が疑問視され、国際的な送金や取引が制限されるなど、経済活動に支障が出る可能性があるのです。したがって、FATF勧告に沿う形での法整備が2008年以降、国内で進められてきました。

G7やFATFが暗号資産(仮想通貨)に対する懸念を表明

暗号資産におけるAML/CFTは、G7やG20、FATFでの議論を中心に動いてきました。まず2015年6月、暗号資産の取引量が増えていた状況を背景に、G7とFATFが暗号資産に対する懸念と各国への規制を促す声明を相次いで発表。声明では、暗号資産交換業者を登録制にするとともに、利用者の本人確認を義務付けることを各国政府に要請しました。この声明を受けて、日本では暗号資産に対する法規制の検討が進められ、2017年4月に改正資金決済法が施行されるに至っています。

時期 暗号資産のマネーロンダリング対策に関する動き
2008年10月 FATFによる第3次対日相互審査結果公表
2013年4月 改正犯罪収益移転防止法が施行
2015年6月 G7とFATFが暗号資産への懸念を示す
2017年4月 改正資金決済法・改正犯罪収益移転防止法が施行
2018年2月 金融庁が「マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策に
関する
ガイドライン」公表
2018年3月 G20財務大臣・中央銀行総裁会議の共同声明が発表
2019年6月 FATF規制基準の改訂版(トラベル・ルール)公表
2020年5月 資金決済法改正でカストディ業者も規制下に
2021年8月 FATFによる第4次対日相互審査結果公表
2022年12月 マネーロンダリングに関する6つの改正法が成立

2018年3月には、G20財務大臣・中央銀行総裁会議の共同声明が発表され、暗号資産は金融の安定リスクがあるとのことから監視を強化する方針を示しました。FATFに対して暗号資産交換業者の登録制や利用者の本人確認の導入に強制力を持たせるような審査基準を作ることを要請しました。ここから国際社会が暗号資産の規制強化に動き出すきっかけとなったといえます。同年7月にはFATFが「G20財務大臣・中央銀行総裁会議に対する報告」を公表しました。

また、2019年2月にはFATF全体会合の閉幕後に「暗号資産のリスク軽減に関する公式声明(Public Statement – Mitigating Risks from Virtual Assets)」が公表、同年6月にはFATF規制基準(The FATF Recommendations)の改訂版が明確にされました。この改訂版が前述したトラベル・ルールと呼ばれています。

FATFでの暗号資産に対する懸念を受けて、日本は世界に先駆けて暗号資産関連の法律・規制を整備しています。2017年4月には前述した「改正資金決済法」と「改正犯罪収益移転防止法」が施行。「暗号資産交換業者」が法律で定義され、犯罪収益移転防止法における特定事業者に指定されたのです。

したがって、暗号資産交換業者に対しては、本人確認義務(口座開設時など)、本人確認記録および取引記録の作成・保存、司法当局への疑わしい取引の届出、体制整備(社内規則の整備、研修の実施、統括管理者の選任など)が義務づけられています。なお、資金決済法は2019年5月にも再び改正されており、改正法の施行後は他人のために暗号資産の管理業務を行うカストディ業者も、暗号資産交換業者としてAML/CFT規制に従うことになりました(改正法は2020年5月に施行)。

その他にも、金融庁がAML/CFT関連のガイドラインやレポートを公開しています。例えば、2018年2月には「マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策に関するガイドライン」が、同年8月には「マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策の現状と課題」というレポートが公表され、同名レポートの2019年9月版も公開されています。

2021年8月にはFATFの第4次対日相互審査の結果が公表されました。日本はFATFへの改善報告を求められる「重点フォローアップ」と位置付けられています。これは合格水準に達することができなかったことを意味しています。

ただ、日本ではさらにAML/CFT対策を強化するため、2021年8月に対策会議を設置し、3年間の行動計画を発表しています。前述したように、2022年12月に行われた改正法が成立するなど、整備を進めています。

DMM Bitcoinはどのような対策を行っているか

DMM Bitcoinでは「反社会的勢力に対する基本方針」と「マネー・ローンダリング・テロ資金供与・拡散金融対策に関する基本方針」を明確化し、AML/CFTに取り組んでいます。口座開設時等のKYC(本人確認)や、暗号資産(仮想通貨)の出金時の目的確認のほか、トラベル・ルールへの対応として、お客様が暗号資産の入出金を行う際に送付人及び受取人に関する情報の取得・保存を行っています。

まとめ

マネーロンダリングとは、犯罪によって得た不正な利益の出所と所有者を隠すことで、捜査機関による差し押さえや摘発、犯罪の検挙を逃れる行為の総称です。そして、ビットコインをはじめとする暗号資産(仮想通貨)は、組み合わせるツール次第で匿名性の高い国際送金ができるようにもなります。したがって、AML/CFTの観点からビットコインや暗号資産が注目されているのです。

日本は2008年の「第3次FATF対日相互審査」において、AML/CFTの取り組みに対して厳しい評価が付けられました。この評価を受けて国内の法整備が進められており、暗号資産に関する規制もFATF勧告への対応の一環として行われています。このような背景があるため、法整備の動向が注目されています。

そして、DMM BitcoinではAML/CFTのための施策として、先に触れたように口座開設時等のKYCや、暗号資産の出庫時の目的確認、2段階認証の導入のほかに出金先アドレス登録における受取人住所の登録を必須としています。その一方で、顧客側も見知らぬ相手先への出金を避けるなど、注意する必要があるといえるでしょう。

KYCについて詳しく知りたい方は「口座開設に必須のKYCとは?本人確認義務の理由」もご参照ください。

参考:

https://www.pwc.com/jp/ja/knowledge/prmagazine/pwcs-view/202111/35-07.html

https://www.fatf-gafi.org/en/publications/mutualevaluations/documents/fur-japan-2022.html

https://www.fsa.go.jp/news/r3/20220408/20220408amlcft-1.pdf

https://www.fatf-gafi.org/en/publications/Fatfrecommendations/Guidance-rba-virtual-assets-2021.html

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