今日までのビットコインの歴史とこれから
暗号資産(仮想通貨)のことにあまり詳しくない人でも、ここ数年のうちにビットコイン(BTC)の価格が高騰したり、反対に急落したりというニュースを耳にしたことがあるかもしれません。ビットコインの歴史をひも解くと、様々な出来事が価格の変動に影響を及ぼしていることがわかります。
ビットコインのホワイトペーパーが発表されてから、2023年でちょうど15年目の節目になります。ビットコインがいつから買えるようになったのかを含めて、その間の歴史を振り返るとともに、今後についても確認していきましょう。
ビットコイン誕生の歴史をひも解く
2008年10月にサトシ・ナカモトと名乗る人物(個人なのかグループなのか本名なのかも含めて正体は不明)がビットコインに関するホワイトペーパーを発表したことから、ビットコインの歴史が始まりました。それから約2ヵ月後には、ビットコインの取引履歴をすべて記した台帳(帳簿)である最初のブロックが発生し、その数日後にはビットコインのバージョン0.1がリリースされて一般に公開。そして、サトシ・ナカモトからソフトウェアの開発者へと、世界で初めてビットコインの送金が行われました。
2009年10月には法定通貨(ドル)との交換レートが初めて提示され、その1週間後には5,050BTCが5.02ドルで交換されました。同年同月の終値は、日本円に換算して1BTC=0.009円程度だったそうです。
ビットコインはいつから買えたのか
2010年2月には、世界初となる暗号資産交換業者がニューヨークで開設されています。さらに同年5月には、ビットコインがついにショッピングのために用いられました。2枚のピザ(約25ドル=当時約2,350円)と1万BTCが交換され、これが実店舗における初の決済となったわけです。同年9月には、世界初のマイニング(採掘)集団がビットコインの初採掘に成功しています。同年同月の終値は日本円で1BTC=5円(当時約0.04ドル)で、1BTC=0.009円の時からわずか1年足らずでまさしく桁違いに価値が上昇したわけです。
なお、ちょうどその頃にやがて世界最大の暗号資産交換業者へと飛躍を遂げるマウントゴックス(Mt.Gox)が創業しています。2011年4月には米国のTIME誌が初めてビットコインの特集記事を企画するなど、ようやく大手メディアもその存在に注目し始め、そのことが火を点けて同年6月には日本円で1BTC=約1,800円(当時約23ドル)にまで達しましたが、さらにそこから先にすさまじい上昇局面が待ち受けていました。
ビットコインの本格普及は2013年半ばから
ビットコインの存在が広く一般的に知れ渡るようになったのは、欧州債務危機が深刻化した局面でした。2009年から表面化したギリシャの財政悪化問題は南欧諸国に飛び火し、やがて2013年3月にはキプロスでも預金封鎖が現実となりました。こうした事態を受けて、投資家の間で急速に活発化したのが「質への逃避(安全資産への緊急避難)」と呼ばれる行動です。一般的には国家が元本と利息の支払いを約束している国債へと資金が流入するものですが、前述のキプロス危機では同国が法定通貨としているユーロや同通貨導入国の債券が売られ、代わってビットコインに避難するという動きが顕著になりました。
その結果、2013年3月には1BTC=8,000円(当時約85ドル)以上に達し、さらに同年11月には米国の中央銀行総裁に当たるバーナンキFRB議長(当時)が「ビットコインに対してFRBが直接的に監督・規制する権限を持っているわけではない」と発言したことで急伸し一時127,800円(当時約1,120ドル)の史上最高価格を記録しました。
しかし、その直後に待ち受けていたのは、大きな下落でした。人民元だけで資産を保有していることに不安を抱いた中国の富裕層が密かにビットコインに替えて海外送金を行っていたことから、中国政府が金融機関によるその取り扱いを禁止。この報道を受けてビットコインの価格は急落に転じ、2014年2月には前出の世界最大の暗号資産交換業者であるMt.Goxがハッカーにビットコインを盗難されたことを理由に閉鎖を決定し、同年春頃まで価格の下落は止まりませんでした。
巨額の損失を被ったMt.Goxは事実上の経営破綻に追い込まれ、そのニュースが派手に報じられたことから、ビットコインに対する信認はにわかに揺らぎます。そして、ビットコインのような暗号資産は危ういという風潮が強まったものの、やがてMt.Gox元社長の横領疑惑が発覚。ハッキングによる被害は一部にすぎず、破たんを招いた主因は元社長の不正によるものであった可能性が高まったことから、ビットコインに対する不安は次第に解消されていきました。
それ以降はいったん上昇に転じたものの、2015年の秋頃までビットコイン価格の低迷は続きます。ただ、その間も国内外で暗号資産交換業者の開業が相次ぎました。そして、2016年3月には国内の大手企業としては初めて、DMM.comがビットコイン決済の受付をスタートさせています。再び価格上昇が顕著になったのは同年後半のことで、8月には当時として世界随一の取引量を誇っていた香港のBitfinexが最大規模(当時)のハッキング被害に遭って急落する場面もあったものの、そういった悪材料を乗り越えて急上昇を示したのです。
最高値を大幅に更新した2017年
2016年に2度目の半減期を迎え、2017年になると、円建てのビットコイン価格は特に過熱的な上昇を遂げました。あっという間に史上最高価格を更新し、4月には一時1 BTC=15万円超(当時約1,250ドル)にまで高騰しました。なお、4月にはビットコインをはじめとする暗号資産(仮想通貨)を日本で初めて法律で規定した改正資金決済法等が施行されています。
中国では2月に政府がマネーロンダリング封じのために国内の暗号資産交換業者におけるビットコインの出金を停止したものの、それを受けて同国民は相対取引へとシフトし、むしろ出来高が大きく膨らみました。こうしたことから、5月にはビットコインは金価格の最高値を抜き、年初の3倍もの水準である1BTC=約27万円(当時約2,400ドル)台まで上昇を遂げています。
その一方で、ビットコインの開発に携わる人たちとマイナー(採掘者)たちとの間で意見が対立し、ハードフォークに発展。2017年8月には、ついにそれが現実となって、ビットコインキャッシュ(BCH)が派生しています。さらに、10月にも分裂してビットコインゴールドが誕生したのですが、実はこの動きがビットコイン価格の上昇に結び付きました。
ビットコインキャッシュが分裂した際と同様に、ビットコインを保有していればビットコインゴールドを無償配布してもらえるとの思惑から、投資家の買いが殺到したのです。10月中旬には円ベースでも1BTC =60万円(当時約5,300ドル)を突破して最高値を更新し、さらに11月下旬には100万円(当時約8,700ドル)を突破して一時130万円(当時約11,400ドル)超まで達しました。
2017年1月の終値が11万円台だったわけですから、1年足らずで10倍超に達したことになります。しかも、年末に向けていっそう上昇は加速を増していきました。12月上旬にドルベースで初めて1BTC =13,000ドルを突破してもビットコイン価格の上昇は止まらず、同月中旬には2万ドルに迫る史上最高価格を記録。円ベースでも一時220万円超にまで高騰し、広く世間の関心を集めました。
冬の時代を迎えた2018年から2019年
「バブル」の様相を見せた2017年が終わると、暗号資産(仮想通貨)は2018年から2019年にかけて「冬の時代」を迎えます。
FacebookやGoogle、Twitter(現X)といったプラットフォーマーが暗号資産広告を禁止したり、日本国内の暗号資産交換業者でハッキングが相次いだりしたことで暗号資産の信頼が失墜しました。
ビットコインの生誕10周年となる2019年になると、徐々にビットコインは回復しますが、中国政府が暗号資産の取り締まりを強化する姿勢を打ち出したことで、再び下落しました。
その後もビットコインは軟調な価格推移が続きますが、2019年4月ごろから徐々に上昇し、6月には1BTC=150万円(当時約13,800ドル)台まで上昇しました。
しかし、海外の暗号資産取引業者が開始したビットコイン先物での出来高が低迷したことや中国政府の取り締まりを受けて再び下落基調のまま2019年を終えました。
3年ぶりに最高値を更新した2020年
2020年に入ると、相場が一時回復しますが、3月には新型コロナウイルスのパンデミックの影響で暗号資産(仮想通貨)を含めたすべての資産が下落します。暗号資産も数日で50%も価格を落としました。
その後はビットコインが2020年5月に3回目の半減期を迎え、さらに同年夏には分散型金融(DeFi)がブームとなったことや米上場企業として初めてマイクロストラテジーがビットコインを購入したことを発表し、徐々に価格が上昇しました。各国政府が経済対策として市場にお金を供給したこともプラス材料となったようです。
10月には大手決済企業がビットコイン決済を導入すると発表したことで年末にかけてビットコインは急騰し、12月に2017年に記録した過去最高値を更新しました。
大手企業や機関投資家の参入で過去最高値となった2021年
2021年に入っても上昇の勢いは続きます。2月に海外の大手電気自動車企業によるビットコイン購入やビットコイン決済の導入発表を受けて、ビットコインは続伸し、海外の大手暗号資産交換業者のナスダック上場も相まってビットコインは円建てで1BTC=700万円(当時約67,000ドル)を超えました。
その後、ビットコイン決済の導入を発表していた電気自動車企業が計画を取りやめたことや中国がビットコインのマイニングの取り締まりを強化する方針を打ち出したことで下落します。
しかし、10月には米証券取引委員会(SEC)がビットコイン先物ETFを承認したことを受けて11月に最高値を再び更新しました。
関連コラム:
「ビットコインの最高値は?上昇のきっかけなど過去の歴史を紹介」
「ビットコイン高騰は「バブル」なのか?最高値更新の理由と今後 」
ビットコインの現在と未来予測
市場において時価で取引されているものはその相場が日々変動しており、人気が過熱して驚くような高値をつけることもあります。そして、そのように偏った動きが生じた後には、振り子の揺れのように必ず反動があるものです。調整期間とも呼ばれるもので、2017年に記録を大きく塗り替える上昇を遂げたビットコインにもそのタイミングが訪れました。ビットコインは2017年12月後半から下落基調を示し、2019年にかけて軟調な展開が続きました。
2021年に過去最高値を記録した後も、2023年10月現在は大きく下げています。2022年には時価総額がトップ10にも入っていたステーブルコインの価値が崩壊し、海外の大手暗号資産企業が相次いで破綻。さらには海外の大物スポーツ選手とスポンサー契約を結ぶなど、飛ぶ鳥を落とす勢いだった大手暗号資産交換業者が破綻したことを受けて、再び暗号資産(仮想通貨)業界は「冬の時代」を迎えています。
もちろん、こうした調整が過度に進んでしまう場合には下げすぎた分だけ次の上昇幅が大きくなる可能性も考えられます。いずれにせよ、目先の展開を正確に先読みするのは困難で、中長期的なスパンでビットコインを取り巻く環境にどのような変化がもたらされるのかを把握しておくことが重要です。
2023年10月現在ではビットコインの現物型ETF(上場投資信託)が承認されるかに注目が集まるほか、リップル社とSECの裁判の行方が報じられると、大きく相場が動いています。どちらも暗号資産業界全体の行末に大きく関わる事案のために影響力を持っていると考えられます。
奇しくも2024年にはビットコインの4回目となる半減期も到来し、その直前に価格の上昇が顕著になると指摘する専門家もいます。半減期とは、マイニングの報酬を半額に引き下げるタイミングのことです。段階的にマイニングの報酬を引き下げていくことでインフレを抑制する仕組みです。ビットコインは発行量に上限が定められており、今のところ2140年ごろに全てのビットコインがマイニングされると予想されています。
一方、ビットコインの構造的な問題も念頭に置いておいたほうがいいでしょう。他の暗号資産と比べて、1つのブロックの容量が小さいという問題です。トランザクションが殺到すると処理に時間を要するようになり、送金の遅れが深刻化するという欠陥を抱えています。
何度もビットコインの分裂騒動が発生したのも、そのことが一因といわれています。好材料と悪材料を広く見渡したうえで、客観的な視点から今後のビットコインの動向を占うのが理想的でしょう。
まとめ
2008年10月に産声を上げた直後は円ベースで1BTC=0.009円の価値だったビットコイン。以後、どんどん価値が高まっていきましたが、その動きに拍車がかかったのは2013年からで、キプロスの経済危機などを受けて一時127,800円(当時約1,120ドル)に到達。再び上昇が顕著になったのは2016年後半からで、2017年に入ってからはいっそう加速し、その年末には200万円(当時約19,000ドル)を超える史上最高価格を記録しました。そして2021年にも様々な好材料が重ね合わさり再び最高値を更新します。一方で大手企業の破綻やハッキングといった悪材料により大きく下落することもあるのが暗号資産(仮想通貨)です。
極端な動きには翻弄されず、冷静にビットコインを取り巻く環境とその価格動向を観察することが最良の判断に結び付くのではないでしょうか?
ビットコインについて興味を持たれた方は「ビットコインの仕組みについて初心者にもわかりやすく解説!」もご参照ください。
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