今日までのビットコインの歴史とこれから
仮想通貨のことにあまり詳しくない人でも、ここ数年のうちにビットコインの価格が驚異的に高騰したというニュースは耳にしたかもしれません。
ビットコインの定義が確立されてから、2018年でちょうど10年目の節目になります。その間の歴史を振り返るとともに、今後の推移について展望してみましょう。

ビットコイン誕生の歴史をひも解く
2008年10月にサトシ・ナカモトと名乗る人物がビットコインに関する論文を発表したことから、その歴史の幕は開けました。それから約2ヵ月後には、ビットコインの取引履歴をすべて記した台帳(帳簿)である最初のブロックがネット上に発生し、その数日後にはビットコインのバージョン0.1がリリースされて一般に公開。そして、サトシ・ナカモトからソフトウェアの開発者へと、世界で初めてビットコインの送金が行われました。2009年10月には法定通貨(ドル)との交換レートが初めて提示され、その1週間後には5,050BTCが5.02ドルで交換されました。同年同月の終値は、日本円に換算して1BTC=0.009円程度だったそうです。
2010年2月には、世界初となる仮想通貨交換業者がニューヨークで開設されています。さらに同年5月には、ビットコインがついにショッピングのために用いられました。2枚のピザ(約25ドル)と1万BTCが交換され、これが実店舗における初の決済となったわけです。同年9月には、世界初のマイニング集団がビットコインの初採掘に成功しています。同年同月の終値は日本円で1BTC=5円で、わずか1年足らずでまさしく桁違いに価値が上昇したわけです。
もっとも、2018年7月現在から思えば、それはあくまで序章にすぎませんでした。なお、ちょうどその頃にやがて世界最大の仮想通貨交換業者へと飛躍を遂げるMt.Goxが創業しています。2011年4月には米国のTIME誌が初めてビットコインの特集記事を企画し、ようやく大手メディアもその存在に注目し始め、そのことが火を点けて同年6月には一時31.91ドル、日本円で1BTC=1,489円にまで達しましたが、さらにそこから先にすさまじい上昇局面が待ち受けていました。
ビットコインの本格普及は2013年半ばから
ビットコインの存在が広く一般的に知れ渡るようになったのは、欧州債務危機が深刻化した局面でした。2009年から表面化したギリシャの財政悪化問題は南欧諸国に飛び火し、やがて2013年3月にはキプロスでも預金封鎖が現実となりました。こうした事態を受けて、投資家の間で急速に活発化したのが「質への逃避(安全資産への緊急避難)」と呼ばれる行動です。一般的には国家が元本と利息の支払いを約束している国債へと資金が流入するものですが、前述のキプロス危機では同国が法定通貨としているユーロや同通貨導入国の債券が売られ、代わってビットコインに避難するという動きが顕著になりました。
その結果、2013年3月には1BTC=4,600円近くに達し、さらに同年11月には米国の中央銀行総裁に当たるバーナンキFRB議長(当時)が「ビットコインに対してFRBが直接的に監督・規制する権限を持っているわけではない」と発言したことで急伸し一時12万7,800円の史上最高価格を記録しました。
しかし、その直後に待ち受けていたのは、大きなショックでした。人民元だけで資産を保有していることに不安を抱いた中国の富裕層が密かにビットコインに替えて海外送金を行っていたことから、政府が金融機関によるその取り扱いを禁止。この報道を受けてビットコインの価格は急落に転じ、2014年2月には前出の世界最大の仮想通貨交換業者であるMt.Goxがハッカーにビットコインを盗難されたことを理由に閉鎖を決定し、同年春頃まで価格の下落は止まりませんでした。
巨額の損失を被ったMt.Goxは事実上の経営破綻に追い込まれ、そのニュースが派手に報じられたことから、ビットコインに対する信認はにわかに揺らぎます。そして、ビットコインのような仮想通貨は危ういという風潮が強まったものの、やがてMt.Gox元社長の横領疑惑が発覚。ハッキングによる被害は一部にすぎず、破たんを招いた主因は元社長の不正によるものであった可能性が高まったことから、ビットコインに対する誤解は次第に解消されていきました。
それ以降はいったん上昇に転じたものの、2015年の秋頃までビットコイン価格の低迷は続きます。ただ、その間も国内外で仮想通貨交換業者の開業が相次ぎました。そして、2016年3月には国内の大手企業としては初めて、DMM.comがビットコイン決済の受付をスタートさせています。再び価格上昇が顕著になったのは同年後半のことで、8月には当時として世界随一の取引量を誇っていた香港のbitfinexが最大規模(当時)のハッキング被害に遭って急落する場面もあったものの、そういった悪材料を乗り越えて急上昇を示したのです。
史上最高価格を大幅に更新した2017年
2017年を迎えて、特に過熱的な上昇を遂げたのが円建てのビットコイン価格です。あっという間に史上最高価格を更新し、とある仮想通貨交換業者では一時1 BTC=15万円超にまで高騰しました。同年の3月には、ドルベースでも史上最高価格となる1,330ドル付近に到達。なお、4月にはビットコインをはじめとする仮想通貨を日本で初めて法律で規定した改正資金決済法等が施行されています。
中国では2月に政府がマネーロンダリング封じのために国内の仮想通貨交換業者におけるビットコインの引き出しを停止したものの、それを受けて同国民は相対取引へとシフトし、むしろ出来高が大きく膨らみました。こうしたことから、5月にはビットコインは金価格の最高値を抜き、年初の3倍もの水準である1BTC=26万7,000円台まで上昇を遂げています。
その一方で、ビットコインの開発に携わる人たちとマイナー(採掘者)たちとの間で意見が対立し、分裂騒ぎに発展。2017年8月には、ついにそれが現実となって、ビットコインキャッシュが派生しています。さらに、10月にも分裂してビットコインゴールドが誕生したのですが、実はこの動きがビットコイン価格の上昇に結び付きました。ビットコインキャッシュが分裂した際と同様に、ビットコインを保有していればビットコインゴールドを無償配布してもらえるとの思惑から、投資家の買いが殺到したのです。10月中旬には円ベースでも1BTC =60万円を突破して最高値を更新し、さらに11月下旬には100万円を突破して一時130万円超まで達しました。
2017年1月の終値が11万円台だったわけですから、1年足らずで10倍超に達したことになります。しかも、年末に向けていっそう上昇は加速を増していきました。12月上旬にドルベースで初めて1BTC =1万3,000ドルを突破してもビットコイン価格の上昇は止まらず、同月中旬には2万ドルに迫る史上最高価格を記録。円ベースでも一時220万円超にまで高騰し、広く世間の関心を集めました。
ビットコインの現在と未来予測
市場において時価で取引されているものはその相場が日々変動しており、人気が過熱して驚くような高値をつけることもあります。そして、そのように偏った動きが生じた後には、振り子の揺れのように必ず反動があるものです。調整期間とも呼ばれるもので、2017年に記録を大きく塗り替える上昇を遂げたビットコインにもそのタイミングが訪れました。すでに2017年12月後半から下落基調を示しており、年が明けてからいったんは反発したものの、間もなく急落していきました。
国内では、1月末に大手仮想通貨交換業者のコインチェックにおいてアルトコイン(ビットコイン以外の仮想通貨の1つ)であるNEMが約580億円分も流出していることが発覚したこともあって、ビットコインのみならず、ほとんどの仮想通貨が大幅な価格下落に見舞われました。2月初旬にビットコインの価格はドルベースで6,800ドル台、円ベースで65万円割れまで急低下しています。わずか2ヵ月強で史上最高価格の3分の1近くにまで下がってしまうという大幅な動きでした。
その後は3月上旬にかけて反発色を強めていったものの、再び軟調な展開となり、なかなか方向感の定まらない情勢が続きました。2017年にはあまりにも期待が高まりすぎたという感も強く、その年末に記録した高騰は電車にたとえればオーバーランだったのかもしれません。市場で取引されているものの相場においては、参加者の誰一人として、正しい停車位置(妥当な価格水準)を知りません。過剰に上昇した場合は、価格の下落や時間の経過を通じて、その位置を手探りで確認していくことになります。
もちろん、こうした調整が過度に進んでしまうケースもあり、その場合には下げすぎた分だけ次の上昇幅が大きくなる可能性も考えられます。いずれにせよ、目先の展開を正確に先読みするのは困難で、中長期的なスパンでビットコインを取り巻く環境にどのような変化がもたらされるのかを把握しておくことが重要です。たとえば国内では、東京オリンピック・パラリンピックの開催で海外から多数の旅行者が詰めかけることから、それを機に決済手段としてのビットコイン普及が進むとの見方もあります。
くしくも2020年にはビットコインの半減期も到来し、その直前に価格の上昇が顕著になると指摘する専門家もいます。半減期とは、マイニングの報酬を半額に引き下げるタイミングのことです。ビットコインには発行量に上限が定められているため、マイナーの間では「それに達する前に採掘を急ぎたい」という思いが強まりがちです。そこで、段階的にマイニングの報酬を引き下げていくことでマイニングに参加する人の数を減らし、過度の発行を防いでいるのです。ビットコインの発行量が上限に達するのは、今のところ2141年になると予想されています。
一方、ビットコインの構造的な問題も念頭に置いておいたほうがいいでしょう。他の仮想通貨と比べて、1つのブロックの容量が小さいという問題です。容量がフルに達するとトランザクション(取引)処理に時間を要するようになり、送金の遅れが深刻化するという欠陥を抱えているわけです。何度もビットコインの分裂騒動が発生したのも、そのことが一因と言われています。今後においても、さらなる分裂を誘発することになるかもしれません。とにかく、好材料と悪材料を広く見渡したうえで、客観的な視点から今後のビットコインの動向を占うのが理想的と言えそうです。
まとめ
2008年10月に産声を上げた直後は円ベースで1BTC=0.009円の価値だったビットコイン。以後、どんどん価値が高まっていきましたが、その動きに拍車がかかったのは2013年からで、キプロスの経済危機などを受けて一時12万7,800円に到達。再び上昇が顕著になったのは2016年後半からで、2017年に入ってからはいっそう加速し、その年末には2万ドルに迫る史上最高価格を記録して、円ベースでも一時220万円超に高騰しました。にわかには信じがたい上昇ぶりで、先行きを悲観視する声も聞かれるものの、まだまだそれは通過点にすぎないとの強気の見方もあります。極端な意見には翻弄されず、冷静にビットコインを取り巻く環境とその価格動向を観察することが最良の判断に結び付くのではないでしょうか?
ビットコインについて興味を持たれた方は「ビットコインの仕組みについて初心者にもわかりやすく解説!」もご参照ください。
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