法定通貨と暗号資産(仮想通貨)の違いは?ビットコインを法定通貨化した国も誕生

法定通貨
仮想通貨
違い
2022-02-09 更新

2021年6月、中米のエルサルバドルがビットコイン(BTC)を法定通貨として世界で初めて採用すると発表し、世界中で大きな話題となりました。ビットコイン等、暗号資産(仮想通貨)を支持する人々からは賞賛の声が届いた一方で、国際通貨基金(IMF)等からは金融安定性に懸念があると指摘する声もあります。

しかし、そもそも法定通貨と暗号資産は何が違うのでしょうか。

本記事では、法定通貨の定義や法的な根拠、暗号資産との違いについて詳しく解説していきます。国際金融システムにおいて重要なトピックとなっている「中央銀行デジタル通貨」(CBDC)についても触れていきます。

「法定通貨」とは?そもそもの定義は?

法定通貨とは、日本円や米ドル等のように、法律によって「強制通用力」を持つ通貨のことです。強制通用力とは、額面価格で最終決済手段として認められる効力のことです。法定通貨は強制通用力を持っていることで、受け取る相手は拒否できません。

法定通貨は、国家によって価値が保証されているため、経済的に安定している国の法定通貨は、国際的に価値が高いことが多いといえます(日本円や米ドル等)。一方で、経済や政情が不安定な国の法定通貨は、国際的な価値が低くなる傾向にあります(ベネズエラのボリバル等)。そのため、前述したエルサルバドルは自国通貨を放棄し、米ドルを法定通貨としています。

法定通貨と暗号資産(仮想通貨)の違いは?

それでは、法定通貨と暗号資産(仮想通貨)の違いについて解説していきましょう。

暗号資産(仮想通貨)はデータとしてネット上でやり取りされる

暗号資産は、価値保存の媒体及び手段として、インターネット上でやり取りできる財産的価値であり電子データです。法定通貨のように、物理的な実体は存在しません。紙幣や硬貨の送金に比べると、データである暗号資産はインターネットを介して素早く安価に、世界中に送付できる点が大きな特徴だといえるでしょう。

ブロックチェーン技術によりデータの真正性を確保

暗号資産は、暗号技術を基にしたブロックチェーン技術等によって、取引データや残高の偽造、二重支払いといった不正行為が現実的には行えない仕組みになっています。改ざんやなりすまし行為のリスクが、技術的にほぼ排除されています。一方で法定通貨は国家や銀行が発行主体となり、紙幣等に細工を施して偽造を防ぐ他、銀行等が不正行為に対する対策をしています。

発行主体や中心的な管理者が存在しない

暗号資産の大きな特徴として、法定通貨のように発行主体が存在しない点が挙げられます。
ほとんどの暗号資産は、政府や企業、組織といった中央集権的な発行者や管理者が存在しません。例えば、代表的な暗号資産であるビットコインはマイニング(採掘)という仕組みによって、新しいビットコインが自律的に生成されています。

需要と供給等で変動する交換レートを基に取引

暗号資産の価値(価格)は、特定の誰かによって決定されている訳ではありません。市場の流通量や需要と供給のバランス等、様々な要因によって暗号資産や法定通貨との交換レートが決定され、取引されています。なお、ビットコインは発行上限数量が2,100万BTCに決定されているため、供給量は決まっています(BTCはビットコインの単位)。

フォーク(分岐)したうえで独自の暗号資産(仮想通貨)を作成できる

暗号資産(仮想通貨)の基盤となるブロックチェーン技術は、基本的にオープンソースソフトウェアとして開発されています。ソースコードが世界に公開されているため、技術さえあれば誰でもフォーク(分岐)して、独自の暗号資産を開発できるのです。法定通貨ではこうしたことは難しいでしょう。

実際に、ビットコインのソースコードをフォークして、これまでに多くの暗号資産が誕生してきました。ただし、状況次第ではフォークによって開発者や利用者コミュニティが分裂することも少なくありません。具体的な事例としては、2017年8月にビットコインからビットコインキャッシュ(BCH)という暗号資産が誕生し、コミュニティも分裂したことがあります。

またフォークとは異なりますが、イーサリアム(ETH)上では独自の規格(ERC-20)に沿って、オリジナルの暗号資産(トークン)を作成可能です。

電子マネーと暗号資産(仮想通貨)の違い

電子マネーは、電子的なお金という点では暗号資産(仮想通貨)と似ていますが、企業等の管理者(発行主体)が発行・管理・運用を行っている点で、暗号資産とは異なります。電子マネーの価値は、発行者が法定通貨との交換レートを決定することで定まるものであり、あくまでも法定通貨の代替的な存在という位置づけです。ビットコイン等の暗号資産の価値は、前述したように需要と供給で決まります。

また、日本で電子マネーを発行する場合は、「資金決済法」に基づかなければなりません(電子マネーは法律上「前払式支払手段」と呼ばれる)。電子マネーの種類にもよりますが、なかには有効期限が設定されているものもあり、長期的な価値保存手段として位置づけられている訳ではありません。

その他にも、管理者(発行者)によって、電子マネーを利用できる店舗(場所)や地域は限定されています。電子マネーによっては、対象外の店舗(場所)・地域では利用できません。利用には専用端末が必要です。もちろん、国内での支払手段としては、暗号資産の方が電子マネーよりも利用範囲が狭いのが現状です(2021年10月現在)。

ただし、これは電子マネーのように特定の管理者によって利用を制限されているのではなく、暗号資産の価格の変動幅(ボラティリティ)が大きい点や導入時のハードルが高い現状等が要因となっています。

暗号資産のボラティリティが大きいというリスクを克服し、決済手段として活用する試みとして、次に紹介するステーブルコインが世界各国で開発されています。

ステーブルコインの特徴と生まれた理由

ステーブルコインは、法定通貨や金・ダイヤモンド等の現物資産と連動し、価格が一定に保たれるように設計された暗号資産(仮想通貨)の一種です。現物資産で裏付け(ペッグ)された通貨であるため、ペッグ通貨とも表現されます(ペッグ/pegは「釘で固定する」の意)。

暗号資産(仮想通貨)はボラティリティが大きいため、個人・法人問わず決済手段としての利用を敬遠するケースが少なくありません。この課題を解決するために、価格が安定的(=ステーブル)な暗号資産としてステーブルコインが考案されました。例えば、米ドルにペッグされたステーブルコイン「Tether(テザー/単位:USDT)」の場合は、1ドル=1USDTにほとんど近いレートとなっており、1USDTは1ドルにほとんど近い価値として換金できます。

なお、価格を安定させる方法としては、「法定通貨担保型」「暗号資産担保型」「無担保型(アルゴリズム)」の3種類に分類可能です。法定通貨担保型は法定通貨を、暗号資産担保型は暗号資産を担保とすることで、価格の安定化を図ります。一方で無担保型は、特定の担保を設けずにアルゴリズム(方法)を工夫することで、価格を安定化させるものです。

中央銀行が発行するデジタル版法定通貨、「中央銀行デジタル通貨」(CBDC)

2019年以降、中央銀行が発行するデジタル形式の法定通貨「中央銀行デジタル通貨(CBDC:Central Bank Digital Currency)」が注目を集めています。

その背景としては、2019年6月にFacebook(現Meta)が発表したグローバル・ステーブルコイン「Diem(ディエム)」(旧名:リブラ)への危機感があるといえるでしょう。ディエム以前にもCBDCは研究されていましたが、ディエムを契機として、各国がCBDCの必要性を改めて認識しました。

IBMとシンクタンク「公的通貨金融機関フォーラム(OMFIF)」が2019年10月に発表した報告書では、5年以内に中央銀行がCBDCを発行すると予測。その後、中南米のバハマがCBDCを発行する等、新興国を中心にCBDCの取り組みが進んでいます。

さらに、国際機関の要人も相次いでCBDCを肯定的に捉える発言をしています。まず、「国際決済銀行(BIS)」総支配人を務めるアグスティン・カルステンス氏は2019年12月、CBDCがより効率的で包括的な金融システムの構築に役立つ可能性を示唆しています。さらに2021年4月には、「欧州中央銀行(ECB)」のクリスティーヌ・ラガルド総裁がEU圏内でのCBDC「デジタル・ユーロ」が展開できるかどうかの調査を4年ほどかけて行うことに言及しました。

そして、「国際通貨基金(IMF)」専務理事のクリスタリナ・ゲオルギエバ氏は、CBDCの導入について、中国等の大国が法定通貨のデジタル化を推進する状況の中、各国が遅れを取るリスクがないようにサポートすると表明しています。

2021年10月現在、日本でもCBDCに関する取り組みが進められています。日本銀行は2020年10月に3段階の実証実験フェーズを行うこと明らかにしました。2021年10月時点では第1段階が2021年4月に始められました。

中米でビットコインが世界初の法定通貨に

ここまで解説してきたように、基本的に法定通貨と暗号資産(仮想通貨)は異なるものですが、2021年6月には、中米エルサルバドルのナジブ・ブケレ大統領が、代表的な暗号資産であるビットコインを法定通貨とする法案が可決したと発表しました。同年9月には法案が施行され、世界で初めてビットコインが法定通貨として採用した国が誕生しました。

ビットコインを法定通貨とした背景には、前述のようにビットコインの送付手数料が安価であることや、スマホ等があれば、銀行口座を持たない人でも利用が可能なことがあります。海外からの仕送りが国内総生産(GDP)で16%〜20%を占めているエルサルバドルでは、仕送りにかかる手数料が安くなり、送金額が増えれば経済活性化につながります。

さらにビットコインによって金融サービスを受けられる人が増えれば金融包摂も進むこととなります。

同国では政府公認のウォレットである「Chivoウォレット」を開発した他、暗号資産ATMも国内のショッピングセンターに設置する等、普及を進めています。

一方で価値が大幅に変動するビットコインを法定通貨に加えるのは、そう簡単ではありません。

実際に国際機関からも慎重な意見が相次いでいます。中米経済統合銀行(CABEI)は、エルサルバドルを技術面で支援する意向を示しています。しかし、世界銀行は「エルサルバドル政府から支援の要請はあったが、手助けはできない」と表明しました。

ビットコインは米ドル等と比べると、ボラティリティが大きいことも課題です。実際にエルサルバドルが実際に法定通貨としてビットコインの採用を開始した2021年9月7日にはビットコイン価格は1BTC=500万円台後半から400万円台後半へと100万円近く急落しました。変動が大きいと、日常の決済にも使いにくくなってしまいます。法定通貨となったことで強制通用力を持ったビットコインですが、価格変動が大きいこと等から、国内では反対する声も出ています。

今後どのように普及や利用を進めていくのか、注目されています。

まとめ

法定通貨の定義をはじめとして、暗号資産(仮想通貨)との違いを解説してきました。総じて、実体がなく電子データである点や発行主体が存在しない点、技術的に不正な行為が難しい点、技術さえあれば独自の暗号資産(仮想通貨)を作成できる点等が、法定通貨と暗号資産の大きな違いだといえるでしょう。暗号資産は、発行主体が存在する電子マネーとも異なります。
暗号資産という新しい概念・技術の登場や、その技術を活用したMeta(旧Facabook)のグローバル・ステーブルコインのディエム(Diem)の影響によって、CBDCを発行する国家も出てきています。すでに中国等、一部の国は研究開発を進めており、将来的には法定通貨のあり方が変わってくるかもしれません。

ステーブルコインについて興味を持った方は「ステーブルコインとは?特徴や仕組みを解説!」もご参照ください。

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