新たな資金調達方法STOとは?ICOとの違いや仕組みを解説

STO
2020-09-02 更新

2020年5月に施行された改正金融商品取引法によって、ブロックチェーンを用いた新たな資金調達方法STO(Security Token Offering)が注目されています。STOの実行プロセスが明確になることによって、国内事業者の動きが活発化しているのです。

しかし、「STOってどんなもの?」「ICO(Initial Coin Offering)との違いがよく分からない」という方も多いのではないでしょうか?そこで本稿では、STOの概要やICOとの違い、STOに関する国内の動きや国外の事例をまとめて解説していきます。

日本暗号資産ビジネス協会がSTO規制を提言、さらに日本STO協会も設立、そもそもSTOとは?

2019年は、日本国内でSTO(Security Token Offering)に関する動きが活発になった年でした。大きな要因としては、2019年5月に「情報通信技術の進展に伴う金融取引の多様化に対応するための資金決済に関する法律等の一部を改正する法律」(以下、「改正法」といいます。)が成立したことが挙げられるでしょう(改正法については後述)。この改正法は、本稿で説明するSTOも関係する内容であり、同法の成立を受けて、2020年5月に改正金融商品取引法が施行されました。19年に改正法が成立したことで、業界団体などが規制に関する提言書を作成したり、新たな団体が設立されたりしているのです。

STOに関する国内の動きが活発化

それでは、STOに関する国内の主な動きをピックアップしてみましょう。まず、2019年9月6日に「日本暗号資産ビジネス協会」(JCBA)が、協会内に立ち上げたICO・STO検討部会での議論を基に、「セキュリティトークン規制に関する提言書」をまとめました。

その内容は、同年10月2日に公表されており、国内におけるセキュリティトークン規制に関して、実態に即した規制を課すよう、規制当局に求めるものとなっています。提言書がまとめられた時点では、STOに対する厳しい規制によってSTO市場への新規参入のハードルが必要以上に高くなることが懸念されていました。

なお、日本暗号資産ビジネス協会は、「暗号資産(仮想通貨)ビジネスをはじめるにあたり、テクノロジー・会計・レギュレーション・商慣行などの面から意見交換を積極的に行い、業界の健全な発展を目指すために設立」された団体です(同協会WEBサイトより)。

また、2019年10月1日には、国内の大手証券会社6社が共同で「一般社団法人日本STO協会」の設立を発表しました。同協会は、STOに関するビジネス機会の模索と実現、不公正取引やマネーロンダリング(資金洗浄)などの違法行為を防止し、法令遵守・投資家保護の徹底を掲げ、STOについて業界の健全な発展を図るため、自主規制の策定などを行う目的で設立されました。

そして、2020年5月1日、改正金融商品取引法が施行されました。それに伴い、日本STO協会が金商法に基づく認定自主規制団体(「認定金融商品取引業協会」)として、金融庁に指定されました。これにより日本STO協会は、セキュリティトークン(電子記録移転権利)等の売買その他の取引等に係る自主規制業務等を実施していくこととなりました。

なお、日本STO協会は20年7月1日時点で、正会員10社、賛助会員23社にまで拡大しています。

その他にも「一般社団法人日本セキュリティトークン協会」(JSTA)が2019年5月に設立されており、同協会はSTOに関連する技術や制度、ビジネスに関して、調査・研究・普及・啓発活動を行う団体です。JSTAは毎月、セキュリティトークンに関する勉強会を開催しています。

STOとは、セキュリティトークンを投資家に売却することで資金調達を行う方法

さて、ここまでSTOやセキュリティトークンというワードが何度も出てきましたが、そもそもSTOとは一体何なのでしょうか?

STOは「Security Token Offering」の略称であり、ブロックチェーン上で発行されたセキュリティトークンを、投資家などに売却することによって資金調達を行う方法のことです。セキュリティトークンは、日本語では証券トークン(証券型トークン)と訳され、ブロックチェーンを用いて電子的に有価証券を発行したものを指しています。なお、有価証券とは、株式や債券、手形や小切手など、財産的価値があるもののことです。有価証券は譲渡によって、その所有権を簡単に移転させられます。

STOやセキュリティトークンは、株式とは異なり企業の存在を前提としません。セキュリティトークンは特定の企業に紐づくこともあれば、企業が主体とならない事業やプロジェクトに紐づくこともあります。個別の事例ごとに詳細は異なりますが、調達された資金を元手に実施される事業やプロジェクトの収益などが投資家に分配される場合もあります。

また、セキュリティトークンは、ブロックチェーン上で発行されたプログラミング可能な証券であるため、所有権の移転手続きなどの効率化・自動化が可能です。この点が、既存の証券関連の業務を効率化し、コスト削減につながると期待されています。

ICOとSTOは何が違うのか?

トークンを発行して資金調達を行うという点では、ICO(Initial Coin Offering)とSTOは似ています。ICOとSTOは何が違うのでしょうか?

まず、ICOとは、事業者が「トークン」と呼ばれるものを電子的に発行し、投資家に販売して行われる資金調達方法のことです。2017年~2018年に件数や資金調達額が大きく増加しましたが、不適切なICOが少なくありませんでした。ICOについては、トークンに対する信用の裏付けがあるとは限らず、発行プロセスが法律で定められているわけでもないため、投資家にとってはリスクの高い投資となっていたのです。

ICOブームが起こった時期は、その新しさ故に各国ともに規制が整っていない状態でした。しかし、リスクの高さや詐欺的なICOが問題視されたため、各国でICO規制の議論が加速することになったのです。そして、金融市場の中心地であるアメリカの規制当局、米証券取引委員会(SEC)は、ICOのプロセスで発行されるトークンは、証券法の下で規制される有価証券に該当する可能性があるとの見解が示されています。具体的にはHawey基準と呼ばれるものを使って、そのトークンの有価証券該当性が判断されるとしています。有価証券に該当する場合には、SECへの登録もしくは登録免除を受ける必要があります。

日本では、2018年に金融庁において「仮想通貨交換業等に関する研究会」が設置され、ICOを含む仮想通貨規制について議論されました。

その中で、ICOをその性格に合わせ、投資性ICOとそれ以外のICO(支払・決済手段の販売として認められるもの)とに分け、投資性ICOについては投資に関する規制(金商法)、支払・決済手段の販売と認められるものについては決済に関する規制(資金決済法)で対応する方針が示されました。この議論をもとに日本では前述の改正法が整備されました。

この「投資性ICO」が、いわゆるSTOにあたります。STOで発行されるトークンは、有価証券として発行され、投資に関する規制が適用されることになります。セキュリティトークンは、電子化された有価証券として、日本では金商法関連の規制のもとで発行される金融商品に分類されるのです。

STOの具体例は?

すでに国外ではSTOの事例が多く出てきています。例えば、アメリカのEC小売大手Overstock子会社の「tZERO」は2018年8月、アメリカの証券法に準拠したSTOによって1億3,400万ドルの資金調達を行ったと発表しました。tZERO自体は、規制に則ったセキュリティトークンの発行および取引所を展開するプラットフォームです。

また、法令遵守のセキュリティトークンの発行やSTOを容易にするためのプラットフォームなどを開発する「Polymath」は2018年2月に、STOによって5,870万ドルの資金調達に成功しています。Polymathは、ブロックチェーンを用いた有価証券の発行と資金調達を行う際の規制要件をトークンに組み込んで、事業者がSTOを実施するハードルを下げるための規格や仕組みを開発しています。

STOの現状は?今後どうなる?

冒頭でも記したように、国内のSTOに関する動きは活発になっており、今後はSTOの事例が登場することでしょう。ここでは改正法を中心に、国内の現状と今後の見込みをまとめていきます。

まず、2019年5月に「情報通信技術の進展に伴う金融取引の多様化に対応するための資金決済に関する法律等の一部を改正する法律」が成立し、2020年5月に改正法が施行されました。資金決済法や金融商品取引法、金融商品販売法の改正によって、暗号資産(仮想通貨)に対する規制の強化や、ICO・STO規制の明確化などが盛り込まれています。なお、法改正によって、仮想通貨の法律上の名称は「暗号資産」となりました。

これまでは国内でICOまたはSTOを行う際に従うべき法律が、資金決済法になるのか金融商品取引法になるのか、あるいはその両方が適用されるのかは明確ではありませんでした。しかし、法改正によって「電子記録移転権利」という概念が新たに導入され、金融商品取引法の適用対象となるトークンの範囲が明確化されています。ICOやSTOを行う法規制が明確になるため、STOの普及に向けた国内の環境整備が加速していくでしょう。

また、すでに述べたように、日本暗号資産ビジネス協会(JCBA)の議論を基にした提言書や、日本STO協会や一般社団法人日本セキュリティトークン協会(JSTA)の設立など、暗号資産業界・証券業界の動きも活発になっています。

その他にも、日本会計基準を策定する「企業会計基準委員会」(ASBJ)に対しては、金融商品取引法上の「電子記録移転権利」または資金決済法上の「暗号資産」に該当するICOトークンの発行や保有などに関する会計上の取り扱いについての検討を始めるよう、2019年11月に提言が提出されています。

さらに、STO関連事業を展開する国外企業の中には、日本進出に意欲を示す企業もあります。例えば、セキュリティトークンのプラットフォームを運営する「Securitize」は、国内のブロックチェーン企業「BUIDL」との包括的資本提携を発表しています。BUIDLはSecuritizeの100%子会社となり、日本でのセキュリティトークン事業の展開を進めています。

改正金商法施行に前後し、国内のメジャーなプレイヤーがSTOやデジタル証券分野で積極的な動きを見せています。

IT大手の富士通と野村ホールディングスのブロックチェーン子会社BOOSTRYは20年5月、ブロックチェーン上で管理する有価証券や会員権などのデジタルアセット取引の実証実験に成功したと発表しました。この実験成功を受け、両社はプラットフォームサービス提供に向けたビジネスモデルの検討を開始するとしています。

またみずほフィナンシャルグループは、ブロックチェーン技術を活用した個人向けデジタル社債の構想を20年2月に発表しています。みずほグループに加え、ファミリーマートやヤマダ電機といった企業が協力し、個人向けデジタル社債の実証実験を行いました。みずほフィナンシャルグループでは、2020年度中の商品化を目指すとしています。

さらに20年3月には、不動産情報サイトを運営するLIFULLが、Securitizeと協力して、空き家の利活用等への投資における不動産セキュリティトークン発行(Security Token Offering、以下STO)スキームの実証実験を実施したことを発表しました。従来の手法よりも実用的で、運用コストが削減できることがわかったそうです。両社はこの結果を受け、プロジェクトをさらに推進させるとしています。

このように制度面が整うにつれ、実用化に向けた実証実験や大手企業の提携の動きが活発になっています。大手のプレイヤーが個人向けに具体的な商品を提供するようになる日も近いかもしれません。

STOまとめ

STOは、ブロックチェーン上で発行されたセキュリティトークン(証券トークン)を、投資家などに売却することで資金調達を行う方法のことで、ICOとは異なり各国の証券法に則って発行されます。

日本国内では2019年5月の改正法の成立によって、STOを行う際に従うべき法規制が明確化されました。改正法の成立を受けて改正された金融商品取引法は2020年5月に施行され、それによって国内のSTO関連団体が動きを活発化させています。tZEROやPolymathなど、STOの事例としては国外の方が先行していますが、今後は国内でもSTOの事例が増えてくるでしょう。

※掲載されている内容は更新日時点の情報です。現在の情報とは異なる場合がございます。予めご了承ください。

関連記事

今、仮想通貨を始めるなら
DMMビットコイン