Dappsとは何か?イーサリアムが人気を牽引

Dapps
2021-02-24 更新

Dapps(ダップス)とは、ブロックチェーン上でスマートコントラクトを利用することで実現できるアプリケーションです。現在、数多くの分野でDappsが開発され始めており、次世代型のソフトウェアとして注目を集めています。本稿ではそのDappsについての概要を解説します。

Dappsとは、どんなアプリ?

Dappsは、Decentralized Applicationsの略称です。日本語で「分散型アプリ」と呼ばれています。ブロックチェーン上でソフトウェアを動作させる仕組み「スマートコントラクト」を応用したものであり、現在ではオークションプラットフォームやゲームなどが開発されています。

パソコンやスマートフォンのアプリと何が違う?

Dappsがパソコンやスマートフォンといった通常のアプリと異なる点は、

  • 耐久性:スマートコントラクトをベースとしているため、ブロックチェーンに履歴やデータを記録しつつ、分散管理によって常に稼働し続けられる。
  • 透明性:誰もがコードを検査可能で、操作ログがブロックチェーンに永遠に保存される。
  • 検閲耐性:中央集権的な管理者なしでDappsと通信可能。一度デプロイ(本番環境に設置)されると、コードを変更できない。アプリのアップデートにはユーザーの合意形成が必要。

といった内容が挙げられます。通常のアプリでは、システムの異常やメンテナンスによって稼働しない時間があったり、開発状況が不透明であったりするといった点が異なります。

特徴 通常のアプリ Dapps
耐久性 稼働できない時間がある 常に稼働、分散管理
透明性 開発者が管理 誰でも検査可能
検閲耐性 中央管理者 ユーザーの合意形成

そもそもブロックチェーンは、一定の手続きによって生成されたデータをP2Pネットワーク上で共有しています。そのため、仮にあるデータが改ざんされた場合、ブロックチェーンデータを共有している他のマシンでもそれに気付けるようにすることで、データの改ざんを防げるようになっています。

「何らかの価値を備えるもの」を、デジタル空間上で資産として扱える

このような技術的な特徴によって、デジタル空間でも資産を扱うことができるようになりました。ここでいう資産とは「何らかの価値を備えるもの」全般を指しており、代表的な例が暗号資産(仮想通貨)やトークンにあたり、さらに知的財産なども該当します。理論上、ブロックチェーン上でスマートコントラクトを利用することにより、あらゆるものが資産として取引できます。

ブロックチェーンにより資産をデジタル空間で扱えるようになったことで、従来のサービスに新たな要素を加えられるほか、これまでにはないユーザーエクスペリエンスを実現できるようになりました。例えば、SNS形態のサービスであれば、コメントを投稿したり「いいね」を押したユーザーにトークンを発行して利用を促進したりできます。さらに、保険サービスで掛け金や保険金の支払いを自動化することで、迅速かつ確実に支払いの実行が可能になる事例など、様々なユースケースが実現されています。

「スケーラビリティ問題」の解決が急務

現状、ブロックチェーンはその処理能力がユーザーの増加に対応できるのかに疑問符が付けられており、処理能力改善が急務になっています。このような問題は「スケーラビリティ問題」と呼ばれています。スケーラビリティ問題の解決に向け、多くの技術者や研究者が努力しており、実際のDapps開発現場でもこの問題への取り組みが進められています。なるべく必要なデータの処理だけブロックチェーンに任せて、それ以外をサーバーやデータベースで行うといった構成で、この問題を回避しようとするのが一般的です。

ユーザーから見えない部分でのスマートコントラクトの活用例も

現在提供されているDappsは、ユーザーが操作する画面部分のみパソコンやスマートフォン用アプリとして作成し、ユーザーから見えない部分(バックエンド)にスマートコントラクトを利用するというものが存在します。処理能力の問題からサーバーやデータベースの管理者が存在することから正確には完全なDappsと言えません。ブロックチェーンは資産を扱う部分、それ以外の部分は通常のサーバーやデータベースなどを利用するといった形で使い分けることもあるようです。

見た目や動作だけでは、ユーザー側からはDappsかどうか分からないものが登場する方向にあるといえるでしょう。

【2021年1月現在】 イーサリアム基盤のDappsが主流

当初Dappsは、イーサリアムのスマートコントラクトを応用する形で増えました。この点についてイーサリアムの主要開発者ヴィタリック・ブテリン氏は、「イーサリアムはスマートフォン」といった言葉でイーサリアムを紹介しています。

これは、イーサリアムをスマートフォンになぞらえて、多くの開発者が様々な目的のソフトウェアを自由に開発・公開でき、一方でユーザー側もそれらを自由に利用できることを説明しています。それまでのブロックチェーンが、ビットコインのような価値手段目的、あるいは特定用途に制限されていたことと比べると、イーサリアムはかなり自由度が高いといえるでしょう。

このような背景もあり、世界的にはイーサリアム基盤のDappsが主流となっており(2021年1月現在)、現在も様々な分野で開発やリリースが行われています。

エコシステムの充実が続き、多くの開発者を呼び込む

イーサリアムが多く利用されている背景には、エコシステム(暗号資産によってブロックチェーン上で成立する経済や仕組みなど)の充実も挙げられます。イーサリアムはスマートコントラクトを実用レベルで利用できるようになったきっかけを作ったブロックチェーンでした。そのため、多くの技術者によってオープンに開発が進められています。

またこの影響で、イーサリアム上でDappsを開発する場合に便利なツールが数多くリリースされており、開発の参考になるドキュメントも増えています。そのため、Dappsやスマートコントラクトを開発したいエンジニアや企業からみた時に、イーサリアムが選ばれやすい環境にあるのです。

暗号資産としてのイーサリアム(ETH)の入手しやすさ

一般的には、Dappsを利用するには暗号資産が必要になります。例えばイーサリアム基盤のDappsなら、手数料(Gas)支払いのため暗号資産としてのイーサリアム(ETH)を用意することになります。イーサリアムの場合、日本に限定してもDMM Bitcoinをはじめ多くの暗号資産交換業者が扱っており、Dappsゲーム(後述)で遊びたい初心者の方も手軽に入手できる点は、見逃せないメリットといえるでしょう。

様々な暗号資産(仮想通貨)・ブロックチェーンがスマートコントラクト・Dappsに力を入れている

Dapps開発にあたり、その基本となるスマートコントラクトを備えるブロックチェーンは、何もイーサリアムだけではありません。数多くのブロックチェーンが、スマートコントラクト機能を実装したり、処理能力を向上したりすることでDapps基盤となるべくしのぎを削っています。

処理速度が速く、機能性に優れる「EOS」

中国では、スマートコントラクト、Dappsを利用できる暗号資産・ブロックチェーンとしてEOSが支持されています。EOSは「イーサリアムキラー」と呼ばれるほどその機能性が優れています。イーサリアムと比べ処理速度が速いという点に加え、汎用的なC/C++でスマートコントラクトを開発できる(イーサリアムでは「Solidity」という独自の開発言語を利用する)ため技術者からも好まれています。

「ビットコインキャッシュ」もスマートコントラクト機能を実装

ビットコインからハードフォークして誕生したビットコインキャッシュ(BCH)も、2018年5月にスマートコントラクトの機能を実装しました。ビットコインキャッシュは、処理能力を上げるためブロックひとつあたりのサイズを大きくする(ビッグブロック)など、機能性の向上に努めています。2018年11月に「BDIP(Bitcoin DApps Improvement Proposal)」と呼ばれるDappsのための新規格がGithub上で公開されましたが、2021年1月時点で進捗はないようです。

Dapps基盤としても注目を集める「ネム」

ネム(NEM)も、Dapps開発の基盤として注目を集めつつあるブロックチェーンです。ネムは次期バージョンである「Symbol(XYM)」のメインネットを、2021年2月にローンチする予定(2021年1月現在)です。Symbolに移行したことで処理速度が大きく向上し、さらに文書ファイルの公証ができる「アポスティーユ」と呼ばれる仕組みが使いやすくなるなどの変化があります。

増加を続けるDappsゲームとは?

Dappsの代表的な例としては、ゲームがあります。日本のゲームメーカーの中にはすでに世界的な人気を得ているものもあり、Dapps領域では最も活況を呈しています。海外でも、イーサリアム基盤のカードゲームが人気を獲得しつつあり、トレーディングカードのマーケットプレイスを開設しています。これにより、プレーヤー同士がカードの売買やトレードを行えるようになりました。

また2021年1月現在、AndroidのGoogle PlayストアやiOSのApp Storeのような有力なアプリストアが存在せず、複数のサービスが競争しています。一般的なユーザーにとっては、このサイトさえ見ればOKといったサービスの登場が望まれていますが、今後どのようになるかが注目です。

ブロックチェーン上における資産作成・取引向け規格を活用

イーサリアムでは、ブロックチェーン上で資産を作り、取引しやすくするために様々な規格が「ERC」として複数提案されています。ERCは「Ethereum Request for Comments」の略称で、イーサリアム上であれば誰でも開発に利用できる改善案となっています。これらERCが議論を経て承認されると、「EIP」(Ethereum Improvement Proposals。イーサリアム改善提案)として採択され、イーサリアムのアップデート時に実装されます。

DappsゲームでもERCは活用されており、特に「ERC-20」、「ERC-721」、「ERC-721x」、「ERC-1155」と呼ばれる規格が注目されています。

ERC-20

ERC-20は、イーサリアムにおいて広く普及している規格で、ファンジブルトークンを定義しています。ファンジブルは代替可能性という意味で、ゲームで例えると、「薬草」アイテムが該当します。「薬草」はゲームキャラクターの生命力を回復するという機能がある一方、個々の薬草に違いはないため、「薬草が10個、薬草が20個・・・」というように複数個まとめて保有したり表現することができます。ファンジブルトークンとは、このような特徴を持つアイテム、ゲーム内資産で利用することができます。

ERC-721

ERC-721は、ノンファンジブルトークン(NFT)について定義した規格です。ノンファンジブルとは代替不可能性といった意味で、NFTとは代替できない固有の価値を備えるトークンを指します。ゲームの例では、シリアルナンバーの入ったレアカードのようなものになります。カード1枚1枚に固有のシリアルナンバーが入っているため、それぞれ区別されます。このように他のアイテムとまとめることができない、他と取り替えのきかない固有の価値を備える存在にあたります。

ERC-721x

ERC-721xは、複数のERC-20およびERC-721トークンを一括かつ安価な手数料(Gas)で送付(取引)できるようにした規格です。ERC-721拡張版にあたり互換性の高さを特徴としているため、すでに存在しているERC-721対応ウォレットやサービスを活用しやすい点もメリットとなっています。イーサリアム向けDappsゲーム開発キットで定評のあるLoom Networkが提案した規格で、非常に注目されています。

ERC-1155

ERC-1155は、複数形式のファンジブルおよびノンファンジブルトークンを一括かつ安価に送付(取引)できるという規格です。ERC-20/ERC-721トークンを同一フォーマットで管理できるなど、開発者側にとって利便性が追求されています。例えば、ゲーム世界のある国ではAコイン、別の国ではBコインがそれぞれ流通・共存しているといった仕様の場合、ERC-20/ERC-721では複数のスマートコントラクトが必要になりますが、ERC-1155では同一のスマートコントラクトで可能になります。ただ、ERC-721との互換性の面で難があり、ERC-721準拠のノンファンジブルトークンとの取引が行えないと指摘されています。イーサリアム向けのゲームプラットフォームを展開している「Enjin」が主導しています。

業界団体の設立も

2020年2月には、ゲームやSNSといったブロックチェーンを活用したコンテンツの業界発展や消費者保護を図るための業界団体「ブロックチェーンコンテンツ協会」が設立されました。会員企業にはDappsゲームを手がける企業などが参加しています。Dappsやブロックチェーンを使ったコンテンツには、まだ事業者が守るべき法律の取り纏めやルールの整備が遅れています。

さらにブロックチェーンコンテンツ協会ではユーザーが安心して利用できるための自主規制を検討しています。例えば以下のような項目を提示しています。

  • 「ゲームのリリースの目処が立たない状態で、プレセール等を実施しない」
  • 「安定的に運営できる資金や人員面などを整えた上でセールを実施する」
  • 「断定的判断の提供や、不利益事実を告知しないなど、セール/アイテムの販売する際に不当な勧誘を実施しないように徹底する」
  • 「将来的な価格の値上がりを謳ったり、不安や期待を煽ることで、ユーザーに対して過度の買い煽りを行うことを禁止する」

Dappsは暗号資産やブロックチェーン同様に新しい分野のため、健全な業界の発展に向けて取り組みが進められています。

Dappsについてまとめ

Dappsとは、ブロックチェーン上でソフトウェアを動作させる仕組み「スマートコントラクト」を応用したものです。スマートコントラクトをベースとしているため、ブロックチェーン上に履歴やデータを記録しつつ、常に稼働し続けられるメリットがあります。

Dappsは、イーサリアムのスマートコントラクトを利用する形で数を増やしており、他の数多くのブロックチェーンもスマートコントラクト機能を実装しています。今のところ、ゲーム領域を中心にDappsが注目されており、日本のゲームメーカーの中には世界的な人気を得ているものもあります。海外では、イーサリアム基盤のERC-721規格に基づくカードゲームが人気を獲得しつつあります。

このような経緯もあり、Dappsがどのようなものか実際に試したい場合は、イーサリアム基盤のものが手軽という状況になっています。一般に、Dappsを利用する場合には手数料(Gas)の支払い用に暗号資産としてのイーサリアム(ETH)を要する必要があるため、DMM Bitcoinなど暗号資産交換業者などで入手を検討してみると良いでしょう。

イーサリアムについて詳しく知りたい方は「イーサリアムとは?特徴や将来性をわかりやすく解説」もご参照ください。

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