ビットコインETFとは?その仕組みは?実現されると何が変わるか?
ビットコインの価格変動に影響を与える要素はいくつもありますが、その中でも将来起こり得る重要なイベントとして知られているのが「ビットコインETF」の実現です。ビットコインETFの実現は、ビットコインの価格に好影響を与えるといわれており、長らく投資家から期待されています。
今回はビットコインETFについて、その概要や過去に申請を行った団体と否認された理由について解説していきます。ビットコインの購入を検討している方や「ビットコインETFって何?」と思う方は、ぜひ参考にしてみてください。

ETFとはそもそも何か?
ETFとは「Exchange Traded Fund」の略称であり、日本語では「上場投資信託」あるいは「指数連動型上場投資信託」と表現されます。ETFはある特定の指数に連動するように設計されており、証券取引所で売買される投資信託です。なお、投資信託とは、投資家から集めた資金を、専門家が株式や債券などに投資して運用する金融商品のことであり、運用益は投資額に応じて各投資家に分配されます。
1日1回算出される基準価額で購入される非上場の投資信託とは異なり、ETFは証券取引所で取引されるため、株式と同様にリアルタイムで価格が変動し、いつでも注文や取引が可能になります。
ビットコインETFとは?
ビットコインETFとは、価格がビットコインと連動するように設計された上場投資信託です。ETFであるため、株式と同じように証券取引所で売買できます。後述するように、特にアメリカにおいて過去いくつもの企業や団体がビットコインETFを申請してきましたが、国内外の伝統的な証券取引所では上場が認められていません(2019年12月現在)。
具体的な仕組みは上場申請されるビットコインETFの商品設計に依存しますが、東京証券取引所などに上場している金(ゴールド)ETFと同様に、ビットコインの現物価格や先物価格に連動するような設計になると見られています。
なお、冒頭でも記したようにビットコインETFの実現は多くの投資家が注目する重要なイベントです。注目されている理由は、ビットコインの価格に影響を与えるからだといわれています。
まず、ビットコインETFが実現した場合、ビットコインへの投資額が大きく増える可能性があります。理由としては暗号資産(仮想通貨)の市場規模は他の金融市場に比べるとまだまだ小さく、株式などの売買が行われている証券取引所にビットコインETFが上場することで、他の市場からの資金の流入が期待されています。また、暗号資産(仮想通貨)投資に懐疑的な投資家もETFであれば参入しやすくなることも期待されている出来事の一つです。さらに巨額資産を運用する機関投資家もビットコイン市場に新規参入する可能性も高まります。
また、仕組みの点でもビットコインETFは投資信託であるため、投資家は直接的にビットコインの現物を保有する必要はありません。個人投資家が秘密鍵などを管理する必要がなく、一般的な株式のような感覚でビットコインに投資できるのです。
ETFを判断する機関SEC(米国証券取引委員会)とは
現在の金融市場の中心地はアメリカであり、多くのビットコインETFもまたアメリカの証券取引所への上場をターゲットにしてきました。ETFを金融市場に上場する場合は、その国の規制当局に申請し、承認を得なければなりません。したがって、アメリカの証券取引所にビットコインETFを上場させたい場合は、投資家保護や公正な証券取引を監督・監視する連邦政府機関「SEC」(Securities and Exchange Commission。米国証券取引委員会)の承認が必要になるのです。
これまでに数々のビットコインETFの申請がSECの審議にかけられ、否認されています。SECの審議には、申請日から45日の検討期間が設けられており、期間内に判断できない場合は最大240日間の延長が可能です。
それでは、過去の事例や否認された理由を見ていきましょう。
世界有数のビットコイン保有者・ウィンクルボス兄弟
まず、アメリカでビットコインETFに取り組み始めたのは、世界有数のビットコイン保有者で知られるウィンクルボス兄弟だといわれています。ウィンクルボス兄弟が考案したビットコインETF「ウィンクルボス・ビットコイン・トラスト」は、2013年7月にSECへ上場申請され、2017年3月に否決されました。否決の大きな理由は価格操作への懸念です。
この判決を受けてウィンクルボス兄弟は、SECに対して拒否の見直しを求める嘆願書を提出していましたが、2018年7月に再度ビットコインETFの申請を拒否されています。拒否理由としては、詐欺や価格操作などを防ぐという観点で、上場申請先となっていた「Bats BZX取引所」がSECの求めるレベルに到達していなかったことが挙げられました。
その他にも多くのビットコインETFが上場申請をSECに提出し、否決あるいは取り下げられています。
ウィンクルボス兄弟の申請が改めて拒否された翌月の2018年8月22日、申請されていた8つのビットコインETFを拒否するとSECが発表しました。その理由はウィンクルボス兄弟の時と同様に、上場申請先となっていた取引所が、SECの求めるレベルで詐欺や相場操縦を防止する体制を備えていないことが挙げられています。ただ、その翌日には9つのビットコインETFの申請が再審査されることになりました。
アメリカ最大の先物取引所「シカゴオプション取引所」
また、アメリカ最大の先物取引所である「シカゴオプション取引所」(CBOE)は、2018年6月にビットコインETFの申請を行います。このビットコインETFは、資産運用会社の「ヴァンエック」(VanEck)と金融サービス企業の「ソリッドX」(SolidX)が提案した商品「VanEck SolidX Bitcoin Shares」であり、申請承認の有力候補として注目されていました。
しかし、審査期間の延期を重ねた後、債務上限問題でアメリカの政府機関が閉鎖されたことを要因として、2019年1月にCBOE側から申請を取り下げています。その後、同月末にCBOEは、SECにビットコインETFを再申請しましたが、同年9月には申請を再度取り下げました。
資産運用会社「ビットワイズ」
この他にも、資産運用会社の「ビットワイズ」(Bitwise)が2019年1月にビットコインETFを申請し、同年10月に拒否されています。その理由は相変わらず、ビットコイン市場での詐欺的な行為や相場操縦の問題が解決されていないからでした。ただ、ビットワイズのビットコインETFも拒否判断自体が再検討されています(2019年12月現在)。
新たなビットコインETFが申請され続けている
このように、ビットコインETFは否決や取り下げが繰り返されていますが、新たなビットコインETFが申請され続けています。例えば、2019年10月にはケイマン諸島の資産運用会社「クリプトイン・インベストメント・アドバイザーズ」が、価格操作に耐性があるとする新たなビットコインETFを申請しました。
ビットコインETFは、なぜ否認されるのか
すでに2年半以上、ビットコインETFは否認され続けています。ではなぜ、ビットコインETFは承認されないのでしょうか?
価格操作への懸念
まず、ビットコインの市場規模が既存の金融市場の中でも比較的小さく、流動性も低い点が挙げられます。
さらに、SECにも指摘されていたように、暗号資産(仮想通貨)市場は詐欺的あるいは価格操作といった行為が完全に排除できていません。ビットワイズ社が2019年3月にSECへ提出した調査レポートによると、暗号資産の取引高のうち95%が水増しか、仮装売買であると報告されています。仮装売買とは、顧客に商品を売買させるために取引業者が自己売買を繰り返す行為のことです。
ビットワイズ社は、調査時点でのビットコインの現物市場は、データ上では1日あたり60億ドルとされているものの、水増しや仮装売買分を取り除いた実際の取引高は2億7,300万ドル程度だとしています。
以上のような要因がクリアされない限り、ビットコインETFは承認されない公算が高いとみられています。しかし、逆に考えれば上記の課題が解決されれば、将来的にビットコインETFが承認される可能性があるともいえます。承認されるまでには時間がかかるかもしれませんが、その影響の大きさからビットコインETFが実現するかどうかは注目すべき事柄だと考えられています。
承認されるとどうなるか、過去の事例紹介
ビットコインETFの上場申請が承認された場合、ビットコインにどのような影響があるのでしょうか?過去の事例を参考にすることで、なぜビットコインETFが期待されているのか、イメージしやすくなるはずです。
例えば、ビットコインに性質が似ているとされる金(ゴールド)の事例をたどってみましょう。結論から言えば、金ETFが実現したことによって、金市場の需要と供給のバランスに変化がもたらされ、金ETFは金の価格上昇につながる大きな要因になったと考えられています。
金ETFの歴史を簡単に見ていくと、金ETFが世界で初めて上場したのは2003年3月で、オーストラリア証券取引所でした。その後、同年12月にはロンドン証券取引所で上場しています。世界最大の取引所であるニューヨーク証券取引所に、金ETFが上場したのは2004年11月のことでした。なお、日本の東京証券取引所に金ETFが上場したのは2008年6月です。この金ETFは、ニューヨーク証券取引所に上場しているETFをそのまま持ち込む重複上場によって実現しました。
オーストラリア、ロンドン、ニューヨークと上場が実現した金ETFは、資産規模を順調に伸ばしていき、現在では個人投資家だけではなく、機関投資家の分散投資の選択肢として一般化しています。金ETFは年金基金をはじめとする金融市場から、金市場へと資金が流入する回路を確立したため、金の価格を押し上げたといわれています。
ビットコインETFまとめ
ビットコインETFとは、ビットコインの価格と連動するように設計された上場投資信託です。2019年12月現在では、国内外の伝統的な証券取引所では上場を認められていませんが、実現すれば株式と同じようにビットコインの価格に連動した金融商品を証券取引所で売買できるようになります。
ビットコインETFが実現すれば、巨額の資産を運用する機関投資家などの資金がビットコイン市場に流入すると見られているため、投資家たちはビットコインETFが承認されるかどうかを注視しているのです。しかし、これまでに多くのビットコインETFがSECに否決されるか、申請者自身が申請を取り下げています。
ビットコインETFの実現には時間がかかると見られていますが、実現した場合は金ETFの事例と同様に、価格上昇の要因となるかもしれません。したがって、今後もビットコインの投資家にとっては、ビットコインETFが実現するかどうかは大きな関心事であり続けるでしょう。
暗号資産の注目されているイベントについて興味を持った方は、「暗号資産(仮想通貨)に大きな影響を及ぼすイベントとは?」もご参照ください。
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