ビットコインETFとは?その仕組みは?実現されると何が変わる?
ビットコイン(BTC)の価格変動に影響を与える要素はいくつもありますが、その中でも将来起こり得る重要なイベントとして知られているのがアメリカでの「ビットコイン現物ETF」の実現です。2023年7月現在、ビットコインETFは「先物型」がすでにアメリカで承認されています。現在は特に現物型の実現が長らく投資家から注目されています。
今回はビットコイン現物ETFについて、その概要や過去に申請を行った団体と否認された理由について解説していきます。「ビットコインETFって何?」と思う方やビットコイン現物ETFが注目される理由について知りたい方は、ぜひ参考にしてみてください。
ETFとは?
ETFとは「Exchange Traded Fund」の略称であり、日本語では「上場投資信託」あるいは「指数連動型上場投資信託」と表現されます。ETFはある特定の指数に連動するように設計されており、証券取引所で売買される投資信託です。なお、投資信託とは、投資家から集めた資金を、専門家が株式や債券などに投資して運用する金融商品のことであり、運用益は投資額に応じて各投資家に分配されます。
1日1回算出される基準価額で購入される非上場の投資信託とは異なり、ETFは証券取引所で取引されるため、株式と同様にリアルタイムで価格が変動し、注文や取引が可能になります。
ETFには金(ゴールド)や不動産といった、株式とは関係ない商品もあります。そうした株式以外の銘柄が証券取引所に上場して、個人が取引しやすくなるという特徴があります。
ビットコインETFとは?
ビットコインETFとは、価格がビットコインと連動するように設計された上場投資信託です。ETFであるため、株式と同じように証券取引所で売買できます。
具体的な仕組みは上場申請されるビットコインETFの商品設計に依存しますが、東京証券取引所などに上場している金(ゴールド)ETFと同様に、ビットコインの現物価格や先物価格に連動するように設計されます。
ビットコインETFには大きく分けて、ビットコインの先物価格に連動する「先物型」と現物価格に連動する「現物型」があります。
先物型は商品設計によって、ロールオーバー時にコストがかかるなど複雑な商品になることや価格が現物から乖離しやすいという課題があります。一方で現物型であれば、実際の価格に連動するために、一般投資家にとって扱いやすい商品になることが予想されます。
アメリカでは2021年10月にビットコイン先物に連動するETFは承認され上場しており、2023年6月には「レバレッジ型ビットコイン先物ETF」も承認されました。
現物よりも先物が先に承認されたのは、ビットコイン先物が商品先物取引委員会(CFTC)の管理下にあるシカゴ・マーカンタイル取引所(CME)で上場されているために、価格操作の対策がなされていると判断されたことが理由と考えられます。特に規制がないビットコイン現物よりも、CMEであれば安全だと判断されたことが大きな理由でしょう。
ビットコインETFが注目される理由
ビットコインETFが注目されているのは、従来の投資家が暗号資産(仮想通貨)に参入する大きなきっかけになると考えられているためです。
ビットコインを始めとした暗号資産に投資する際には、通常の証券口座とは別の手続きが必要になります。セキュリティ面や秘密鍵の管理について心配する方も多いでしょう。
一方でビットコインETFは証券取引所で売買できるために、従来の株式投資家や暗号資産投資に懐疑的な投資家にとって投資へのハードルが下がることにつながり、ビットコイン投資への普及につながります。
さらに巨額資産を運用する機関投資家がビットコイン市場に新規参入する可能性も高まるでしょう。
2023年7月現在では、ビットコインETFについてアメリカで「現物型」が承認されるかどうかが話題となっています。注目されている理由は、世界最大の証券市場であるアメリカでビットコイン投資が普及することによって、ビットコインの価格に影響を与えるからです。実際に2021年10月にビットコイン先物ETFが初めて承認された際には、1BTC=6万ドルを超えて、11月には史上最高値を更新しました。
そのため、ビットコイン現物ETFが実現した場合、ビットコインへの投資額が大きく増えるのではないかと指摘する声があります。
しかし、これまでは多くのビットコイン現物ETFに関して申請が出されてきましたが、2023年7月現在で承認された例はありません。上場審査を監督する米証券取引委員会(SEC:Securities and Exchange Commission)が認めていないためです。
ETFを判断する機関SEC(米国証券取引委員会)
現在の金融市場の中心地はアメリカであり、多くのビットコインETFもまたアメリカの証券取引所への上場をターゲットにしてきました。ETFを金融市場に上場する場合は、その国の規制当局に申請し、承認を得なければなりません。したがって、アメリカの証券取引所にビットコインETFを上場させたい場合は、投資家保護や公正な証券取引を監督・監視する連邦政府機関であるSECの承認が必要になるのです。
これまでに数々のビットコイン現物ETFの申請がSECの審議にかけられ、否認されています。SECの審議には、申請日から45日の検討期間が設けられており、期間内に判断できない場合は最大240日間の延長が可能です。
それでは、過去の事例や否認された理由を見ていきましょう。
世界有数のビットコイン保有者・ウィンクルボス兄弟
まず、アメリカでビットコイン現物ETFに取り組み始めたのは、世界有数のビットコイン保有者で知られるウィンクルボス兄弟だといわれています。ウィンクルボス兄弟が考案したビットコイン現物ETF「ウィンクルボス・ビットコイン・トラスト」は、2013年7月にSECへ上場申請され、2017年3月に否決されました。否決の大きな理由は価格操作への懸念です。
この判決を受けてウィンクルボス兄弟は、SECに対して拒否の見直しを求める嘆願書を提出していましたが、2018年7月に再度ビットコイン現物ETFの申請を拒否されています。拒否理由としては、詐欺や価格操作などを防ぐという観点で、上場申請先となっていた「Bats BZX取引所」がSECの求めるレベルに到達していなかったことが挙げられました。
その他にも現物・先物を含め多くのビットコインETFが上場申請をSECに提出し、否決あるいは取り下げられています。
ウィンクルボス兄弟の申請が改めて拒否された翌月の2018年8月22日、申請されていた8つのビットコインETFを拒否するとSECが発表しました。その理由はウィンクルボス兄弟の時と同様に、上場申請先となっていた取引所が、SECの求めるレベルで詐欺や相場操縦を防止する体制を備えていないことが挙げられています。
アメリカ有数の先物取引所「シカゴオプション取引所」
また、アメリカ有数の先物取引所である「シカゴオプション取引所」(CBOE:Chicago Board Options Exchange)は、2018年6月にビットコイン現物ETFの申請を行いました。このビットコインETFは、資産運用会社の「ヴァンエック(VanEck)」と金融サービス企業の「ソリッドX(SolidX)」が提案した商品「VanEck SolidX Bitcoin Shares」であり、申請承認の有力候補として注目されていました。
しかし、審査期間の延期を重ねた後、債務上限問題でアメリカの政府機関が閉鎖されたことを要因として、2019年1月にCBOE側から申請を取り下げています。その後、同月末にCBOEは、SECにビットコインETFを再申請しましたが、同年9月には申請を再度取り下げました。
ビットコインETFはなぜ否認されるのか
ビットコイン現物ETFはこれまで幾度も上場申請されてきましたが、そのたびにSECより却下され続けています。大きな理由は次の2点だとされています。
・流動性不足・価格操作への懸念
・暗号資産交換業者の規制
流動性不足・価格操作への懸念
まず、ビットコインの市場規模が既存の金融市場の中でも比較的小さく、流動性も低い点が挙げられます。
流動性が低いと売買が困難になり、価格変動が大きくなる傾向にあります。価格変動があまりにも大きいと、投資家のリスクにつながるためにSECは問題視しているのです。
さらに、暗号資産(仮想通貨)市場は詐欺的あるいは価格操作といった行為が完全に排除できていません。ビットワイズ社が2019年3月にSECへ提出した調査レポートによると、暗号資産の取引高のうち95%が水増しまたは仮装売買であると報告されています。仮装売買とは、顧客に商品を売買させるために取引業者が自己売買を繰り返す行為のことです。
ビットワイズ社は、調査時点でのビットコインの現物市場は、データ上では1日あたり60億ドルとされているものの、水増しや仮装売買分を取り除いた実際の取引高は2億7,300万ドル程度だとしています。
暗号資産交換業者の規制
ビットコインを扱う暗号資産交換業者がSECの規制下にないことも問題だという指摘もあります。規制されていない企業が運営されているために信頼性が低く、操作されやすいことにつながるためです。
課題を解決していけば、将来的に承認につながる可能性も出てくるかもしれません。
アメリカのビットコイン現物ETFは承認されるか
それではビットコイン現物ETFは今後承認されるのでしょうか?
2023年6月、世界最大の資産運用会社であるブラックロックがビットコイン現物ETFをアメリカで申請したことが大きな話題となりました。これまで否認されてきたビットコイン現物ETFと似たような仕組みですが、大きく違うのが取引プラットフォームの監視をナスダックと共有するということです。これにより、これまでビットコイン現物ETFの申請が拒否されてきた大きな理由である価格操作の可能性が、監視によって軽減されることになります。
さらに同じく金融大手のフィディリティやウィズダムツリー、ARKインベスト・マネージメントなどが相次いで同月にビットコイン現物ETFを申請したことで「ついに承認されるのではないか」との思惑が広がりました。
承認されるとどうなるか、過去の事例紹介
ビットコイン現物ETFの上場申請が承認された場合、ビットコインにどのような影響があるのでしょうか?過去の事例を参考にすることで、なぜビットコインETFが期待されているのか、イメージしやすくなるはずです。
例えば、ビットコインに性質が似ているとされる金(ゴールド)の事例をたどってみましょう。結論からいえば、金ETFが実現したことによって、金市場の需要と供給のバランスに変化がもたらされ、金ETFは金の価格上昇につながる大きな要因になったと考えられています。
金ETFの歴史を簡単に見ていくと、金ETFが世界で初めて上場したのは2003年3月で、オーストラリア証券取引所でした。その後、同年12月にはロンドン証券取引所で上場しています。世界最大の取引所であるニューヨーク証券取引所に金ETFが上場したのは2004年11月のことでした。なお、日本の東京証券取引所に金ETFが上場したのは2008年6月です。この金ETFは、ニューヨーク証券取引所に上場しているETFをそのまま持ち込む重複上場によって実現しました。
オーストラリア、ロンドン、ニューヨークと上場が実現した金ETFは、資産規模を順調に伸ばしていき、現在では個人投資家だけではなく、機関投資家の分散投資の選択肢として一般化しています。金ETFは年金基金をはじめとする金融市場から、金市場へと資金が流入する回路を確立したため、金の価格を押し上げたといわれています。
実際にビットコイン先物ETFが承認された2021年10月にはビットコイン価格に力強さがみられ、翌月の11月には史上最高値を更新しました。現物型が承認された場合でも価格への影響がみられるかもしれません。
まとめ
ビットコインETFとは、ビットコインの価格と連動するように設計された上場投資信託です。特に世界最大の経済大国であり、証券市場をもつアメリカでの動きが注目されています。
2023年7月現在、そのアメリカでは、ビットコイン現物ETFの上場を認められていませんが、実現すれば株式と同じように、リアルタイムのビットコイン価格に連動した金融商品を証券取引所で売買できるようになります。
ビットコイン現物ETFが実現すれば、巨額の資産を運用する機関投資家などの資金がビットコイン市場に流入すると見られているため、投資家たちはビットコイン現物ETFが承認されるかどうかを注視しているのです。
ビットコイン現物ETFの実現には時間がかかると見られていますが、実現した場合は金ETFの事例と同様に、価格上昇の要因となるかもしれません。したがって、今後もビットコインの投資家にとっては、ビットコイン現物ETFが実現するかどうかは大きな関心事であり続けるでしょう。
暗号資産(仮想通貨)の注目されているイベントについて興味を持った方は、「暗号資産(仮想通貨)に大きな影響を及ぼすイベントとは?」もご参照ください。
※掲載されている内容は更新日時点の情報です。現在の情報とは異なる場合がございます。予めご了承ください。
関連記事
-
ユーティリティトークンとは?特徴や機能、事例を解説
暗号資産(仮想通貨)に関連して、「〇〇トークン」という用語を耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか?本記事では、トークンの概要を紹介した上で、ユーティリティトークンについて解説していきます。
-
ライトコイン(LTC)とは?初心者向けにわかりやすく解説!
ライトコイン(LTC)は、ベースとなったビットコインよりも決済が行いやすくなるように様々な工夫がなされています。本記事では、これまでのライトコインの開発や価格推移などを含め、特徴を解説していきます。
-
暗号資産(仮想通貨)のハードフォークとは?基礎知識や過去の事例を紹介
暗号資産(仮想通貨)・ブロックチェーン界隈では時々、「ハードフォーク」という事象がニュースになることがあります。本記事では、過去に起きた事例と共にハードフォークの実態について解説します。
-
初心者でも簡単にパソコンやスマホで取引できる!ビットコインの買い方
ビットコイン(BTC)など暗号資産(仮想通貨)の取引を行うためには「暗号資産交換業者」を選ばなければいけません。今回は、暗号資産交換業者を通じたビットコインの購入方法や、手数料・取引単位について見ていきましょう。
-
ステラルーメン(XLM)とはどんな暗号資産(仮想通貨)?特徴を解説
2019年以降、日本の暗号資産(仮想通貨)交換業者でもステラルーメン(XLM)の取り扱いが始まりました。本記事では、ステラルーメンがどのような暗号資産なのか解説します。
-
DAppsとは何か?その仕組みや特徴を解説
DApps(ダップス)とは、ブロックチェーン上でスマートコントラクトを利用することで実現できるアプリケーションです。本稿ではそのDAppsについての概要を解説します。
-
アルトコイン(オルトコイン)とは?知名度の高いコインの特徴や価格を紹介!
ビットコイン(BTC)以外の仮想通貨のことをアルトコインと呼び、2021年11月現在で、世界に約6,800種類以上も存在しています。アルトコインがどんなもので、どんなメリットやデメリットがあるのかを見ていきましょう。
-
イーサリアム現物ETFとは?ETH価格への影響は?
「イーサリアム現物ETF」は、イーサリアム(ETH)の現物資産を基にした上場投資信託(ETF)です。この記事ではイーサリアム現物ETFとは何か、ETH価格への影響について検討していきます。
今、仮想通貨を始めるなら
DMMビットコイン