デジタル版のドルや日本円?ステーブルコインの特徴や仕組みを解説

ステーブルコイン
2020-09-02 更新

2019年6月に発表されたFacebookの暗号資産(仮想通貨)Libra(リブラ)を発端として、「ステーブルコイン」が大きな注目を集めるようになりました。グローバルに流通する可能性のあるステーブルコインに対する規制の必要性が、2019年10月に行われたG7(G7財務大臣・中央銀行総裁会議)やG20(G20財務大臣・中央銀行総裁会議)でも議論されました。

ステーブルコインという名称が大手メディアでも報道され始めたことで、「ステーブルコインって何だろう?」と思った方もいるのではないでしょうか?そこで本稿では、ステーブルコインが誕生した背景や現状、今後について解説していきます。

ステーブルコインとは何か?

ステーブルコインは、日本円や米ドルといった法定通貨、あるいは金やダイヤモンドなどの現物資産(の価格)と連動することで、価格を一定に保てるようにした暗号資産の一種です。別名ペッグ通貨とも呼ばれています(ペッグ/pegは「釘で固定する」の意)。

暗号資産といえば、価格変動が大きいことで知られていますが、なぜ価格が安定した暗号資産=ステーブルコインが誕生したのでしょうか?

ステーブルコインはなぜ生まれた?誕生の経緯

一般的に、暗号資産は価格の変動幅(ボラティリティ)が高いことで知られています。そのため、暗号資産の取引や利用を敬遠する個人や企業は少なくありません。

そこで、ボラティリティが高いという暗号資産の特徴を打ち消し、価格が安定的な暗号資産として、ステーブルコインは考案されました。ステーブル(stable)とは「安定した」という意味です。例えば、米ドルにペッグされたステーブルコインである「Tether(テザー。通貨単位:USDT)」の場合、交換レートは1ドル=1USDTとなっており、1USDTは常に1ドルへと換金できると言われています。このように、ステーブルコインの価格は法定通貨(あるいは現物資産)と連動しているのです。

ステーブルコインのメリットは?ビットコインとの違い

それでは、ステーブルコインのメリットを整理していきましょう。まず、ビットコインなどのボラティリティが高い暗号資産とは異なり、ステーブルコインの価格は安定しているため、日常的な決済に利用しやすい点がメリットとして挙げられます。

また、価格が安定しているため、資産の避難先としても利用しやすいといえるでしょう。例えば、インフレーション(=貨幣価値の下落)により国の法定通貨の価値下落が続いた場合に、資産の避難先としてドルと同様にステーブルコインが選択されるケースも考えられます。

そして、ブロックチェーン上で流通するステーブルコインであれば、法定通貨での国際送金と比べて短時間かつ低料金で国外への送付が可能です。例えば、地震や洪水などが発生した際、災害発生地域では金融機関の機能が停止している場合があります。このような場合に、ステーブルコインであれば国内外問わず、被災エリアや被災者への送付が短時間かつ低コストで行えるというメリットがあります。

ステーブルコインの種類と特徴

ステーブルコインは、価格を安定させる方法という観点から「法定通貨担保型」「暗号資産担保型」「無担保型(アルゴリズム)」の3種類に大別できます。アルゴリズムとは、問題を解くための演算手順または、課題を解決するための方法や手順のことです。ここでは価格を安定させるための方法だと捉えておくと良いでしょう。

法定通貨担保型

まず、法定通貨担保型のステーブルコインとは、裏付けとなる法定通貨に価格が連動するタイプの暗号資産です。仕組みとしてはシンプルで、その価格はペッグされた法定通貨とほぼ同じになります。したがって、担保となる法定通貨を発行している国の経済状況や世界経済・金融経済の動きによって、他の通貨との交換レートも変動するのです。また、基本的には担保となる法定通貨とステーブルコインは、1:1のレートでいつでも交換できます。

暗号資産担保型

次に、暗号資産が価値の担保となっているのが、暗号資産担保型のステーブルコインです。暗号資産は価格が安定していない場合が多いため、ステーブルコインの価格を安定させるには工夫しなければなりません。過去には価格の維持に失敗した暗号資産担保型のステーブルコインも存在します。なお、2019年12月時点では、時価総額や取引量が比較的多いイーサリアム(ETH)を担保としたステーブルコインが、暗号資産担保型としてはもっとも普及しています。

無担保型(アルゴリズム)

価格を安定させるのが非常に難しいといわれているのが、無担保型(アルゴリズム)のステーブルコインです。法定通貨や暗号資産といった担保を用意せずに、アルゴリズムによって価格の安定化を試みます。

その仕組みを端的に表現するとしたら、中央銀行の役割をアルゴリズムで表現したものだといえるでしょう。法定通貨の発行機関である中央銀行は通常、経済情勢などを考慮しながら市場で流通する通貨の需給バランスを調整しています。同様に無担保型のステーブルコインでは、市場の需給バランスに応じてコインを発行または焼却(使えないようにすること)することで、価格を安定化させるモデルが採用されているのです。なお、価格は多くの場合、ドルにペッグされています。

以上のようにステーブルコインは3種類に大別可能です。そして、ステーブルコインは既存のブロックチェーン上で発行されるのが一般的であり、コインの発行プラットフォームとしては、ビットコインやイーサリアム、EOS(イオス)など、様々な技術基盤が選択されています。

すでにステーブルコインは存在し、流通している

実は、国外ではすでに複数のステーブルコインが発行され、流通しています。いくつか事例をピックアップしてみましょう。

法定通貨担保型のステーブルコイン

法定通貨担保型のステーブルコインであれば、主なものだけでも、ドルペッグのテザー(USDT)やTrueUSD(TUSD)、Gemini dollar(GUSD)、Paxos Standard(PAX)、USD Coin(USDC)があり、その他にもユーロペッグのEURSなどが存在します。なお、日本でも日本円を担保にした、NEM基盤のステーブルコインLCNEMなどが開発されています(ただし、LCNEMは法律上、暗号資産には分類されない)。

暗号資産担保型、無担保型のステーブルコイン

暗号資産担保型であれば、MakerDAOが開発・発行しているSAI(Single Collateral DAI)およびDAI(Multi Collateral DAI)が多く流通しています。無担保型のステーブルコインとしては、Basisが注目されていましたが、2018年12月13日に規制環境の変化を理由にプロジェクトが中止されました。

Facebookのリブラは、発行時期が見通せない状況

また、20億人以上のユーザーを抱えるFacebookが中心となり、発行を計画しているリブラもステーブルコインの一種と考えられています。計画では、米ドルなど複数の資産を担保としたドルペッグのステーブルコインとして、2020年前半の発行が予定されていました。しかし、規制当局との調整が済んでいないことや、各国において賛否両論であることから、発行時期が見通せない状況です(2020年7月20日現在)。

「リブラ2.0」ホワイトペーパーを大幅改善

一方で2020年4月16日、リブラ開発を主導するデービッド・マーカス氏はロイター通信に対してリブラのホワイトペーパーを大幅に変更したことを明かしました。大きな変更点は、法定通貨バスケットに連動するリブラ(≋LBR)だけでなく、米ドルやユーロ、ポンド、シンガポールドルなど単一通貨が裏付けとなるステーブルコインも導入することです。

「私たちは、≋LBRに加えて単一通貨ステーブルコインを導入することにしました。提案の≋LBRバスケットに含まれる通貨(LibraUSDまたは≋USD、LibraEURまたは≋EUR、LibraGBPまたは≋GBP、 LibraSGDまたは≋SGD)の一部から始める予定です(リブラのホワイトペーパーから)」

リブラは変更理由について「Libraコインが貨幣の主権性や貨幣政策に干渉することになるのではないか、という重要な懸念」をあげました。2019年のリブラ発表以降、米議会を中心にリブラは米ドルを基軸通貨とした金融システムの安定性に対する脅威と見られていました。

リップル超え!新型コロナでステーブルコイン市場は活況

新型コロナウイルス蔓延による経済不安が高まる中、ステーブルコイン市場は堅調な推移を見せました。とりわけ強さを示したのはテザー(USDT)。2020年5月中旬にコインマーケットキャップの時価総額ランキングでリップル(XRP)を抜き、3位となりました。

ブルームバーグは2020年6月のレポートで、時価総額2位のイーサリアム(ETH)に追いつくのも時間の問題だと予想しています。また、新型コロナによる経済危機で世界的に米ドルへの需要が増加していますが、米ドルへの露出を増やす手段としてテザーの人気も高まったと分析しています。

また、ブロックチェーン取引の監視を行うチェイナリシスは、とりわけ中国でOTC(店頭)取引を通じてテザーへの需要が大きく増えたのではないかとみています。

ステーブルコインの現状と今後 日本の立場は?

最後に、国内外のステーブルコインの現状と今後についてまとめておきましょう。前述のFacebookによるリブラ計画が2019年6月に発表されたこともあり、2019年はステーブルコインに関する国際的な議論が活発になった年でした。

規制当局の主な動きを紹介していきますが、一言で表すと(リブラのような)グローバル・ステーブルコインは、規制当局の準備ができるまでサービスを開始すべきではないという旨が主要国の共通認識となっています。この認識は、2019年10月に相次いで開催された、G7作業部会およびG20の声明やプレスリリースなどで示されています。

強い危機感を示す規制当局

まず、G7のステーブルコイン作業部会は10月17日に報告書を発表しました。そこでは国際送金・決済などの分野の非効率性や技術革新による効率化の可能性を認めつつも、グローバル・ステーブルコインが様々なリスクを抱えていることを指摘しています。ここでのリスクとは、金融政策や通貨主権に関する悪影響のほか、マネーロンダリングやテロ資金供与、市場の公正性、データのプライバシーなどが挙げられます。

同報告書では以下のように明言されており、規制当局の強い警戒感が読み取れます。

「我々は、適切な設計及び明確かつリスクに応じた規制を遵守することによって、法律上、規制上及び監督上の課題やリスクに十分な対応がなされるまで、いかなるグローバル・ステーブルコインもサービスを開始すべきではないということに合意した。」(財務省「ステーブルコインに関するG7議長声明」より)

そして、10月17日と18日に開催されたG20では、上記のG7作業部会の報告書に加え、金融安定理事会(FSB)や金融活動作業部会(FATF)から提出された報告書をベースに議論が行われました。議論を踏まえて発表されたグローバル・ステーブルコインに関するG20プレスリリースでは、グローバル・ステーブルコインが政策や規制上の深刻なリスクを生じさせると記されています。

以上のように、法律や規制、監督態勢が整っていない現時点では、リブラのようなグローバル・ステーブルコインの発行がスムーズに行われる見通しは立っていません。

日本の金融庁は2018年10月、海外メディアの取材に対して「ステーブルコインは暗号資産には該当しない」との見解を示しています。(なお、グローバル・ステーブルコインの議論が活発になる以前の話である。)発行するステーブルコインが暗号資産に該当しない場合、資金決済法上の「暗号資産交換業」登録は必要ありませんが、「前払式支払手段」または「資金移動業」としての登録が必要になります。

ステーブルコインまとめ

ステーブルコインは価格が安定した暗号資産です。一般的に暗号資産はボラティリティが高く、決済手段としては使いづらい点が否めません。しかし、ステーブルコインであれば、支払いに利用できる上に、既存のシステムよりも素早く安価な国際送金が可能です。

また、ステーブルコインは大きく分けて、法定通貨担保型、暗号資産担保型、無担保型(アルゴリズム)の3種類に分類できます。特に法定通貨担保型は種類が多く、国外を中心にすでに使われています。今後、日本国内でも日本円ペッグのステーブルコインが検討される可能性は十分にあるといえるでしょう。

ただ、2019年6月に発表されたリブラ計画を発端として、世界中で流通する可能性のあるグローバル・ステーブルコインに対して強い警戒感を明確に示す国も多いのが現状です。日本では過去、ステーブルコインは暗号資産に該当しないとの見解が金融庁から示されていますが、国際情勢も踏まえた規制のあり方が、引き続き検討されていくでしょう。

※掲載されている内容は更新日時点の情報です。現在の情報とは異なる場合がございます。予めご了承ください。

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