イーサリアムとは?特徴やこれまでの歴史をわかりやすく解説
「ワールドコンピュータ」とも称されるイーサリアムは、暗号資産(仮想通貨)そのものの名称ではなく、プログラムを実行するためのプラットフォームです。プログラムを実行するためのコストを測定・制限するために暗号資産であるイーサ(ETH)を用います。2020年ごろからは「分散型金融(DeFi)」が注目を集め、DeFiの構築基盤となっているイーサリアムの人気が高まっています。
本記事では、イーサリアムの入門記事として、特徴や将来の予定、過去の値動きなどをわかりやすく紹介していきます。イーサリアムの概要を把握することで、今後の取引や情報収集にご活用ください。

イーサリアムとはどんな暗号資産(仮想通貨)?

イーサリアムブロックチェーンで使われるイーサは日本でも人気は高く、ビットコイン(BTC)に次いで時価総額第2位の暗号資産(仮想通貨)です(2021年11月現在)。決済や取引など「価値の移転」を目的として開発されたビットコインとは異なり、イーサリアムは、さまざまなアプリケーションやプログラムを設計できるように開発されたブロックチェーンのプラットフォームです。用途に応じたプログラミングを行い、イーサリアムのブロックチェーン上にアップロードするだけで、独自のブロックチェーンシステムが利用可能となります。法定通貨や暗号資産との交換や送付、決済などにも使用されています。
特徴としては次の3点が挙げられます。
- 1.プラットフォームとして機能
- 2.スマートコントラクト
- 3.独自のトークン規格
プラットフォームとして機能
イーサリアムは分散型アプリケーション(DApps)を開発するプラットフォームとして開発されました。イーサはDAppsの利用料を支払う「ユーティリティトークン」として機能します。
DAppsとは、ブロックチェーンを使うことによって、中央管理者なしで機能するオープンソースアプリケーションのことです。
スマートコントラクト
そしてこのDAppsを実現するのが、スマートコントラクトです。
スマートコントラクトとは、ブロックチェーン上で人を介さずに契約を自動的に実行してくれる機能、決済までの時間短縮、不正防止などができるシステムです。人の手を介さずにプログラムを自動実行することで、分散型のアプリケーションを実現しています。
スマートコントラクトの大きなメリットは2つあります。
1つ目は、データの改ざんを防げることです。ブロックチェーンはそのネットワークに参加しているユーザーすべてのコンピュータが相互につながっているので、どこかで一部不正があったとしても、他の端末と照らし合わせれば不正を見つけることができます。
2つ目は、あらかじめプログラムされている契約の実行条件を満たせば、自動的に契約が実行される点です。先ほど述べたスマートコントラクトの特性である契約の自動化により、契約の簡素化、高速化を実現します。
これらのメリットから、ユーザー同士が第三者を介さずに安全に手間をかけることなく、直接取引することが可能となります。
独自のトークン規格
独自の暗号資産やトークンを発行できることも大きな特徴です。イーサリアムには「ERC」というトークン規格があり、NFT(ノンファンジブル・トークン)のほとんどはERC-721かERC-1155という規格を使って作られています。
さらに「ERC-20」というトークン規格はイーサリアムブロックチェーンと互換性を持つ暗号資産を作るための規格です。ERC-20を使った暗号資産としては、ステーブルコインのテザーやチェインリンクがあります。
以上のように様々な用途に使われることで「ワールドコンピュータ」としての性能を持っているのがイーサリアムです。
イーサリアムとビットコインの違い

イーサリアムとビットコインは、目的や用途が異なります。前述したように、ビットコインは「価値の移転」を目的として、決済や取引が代表的な役割です。一方でイーサリアムはあらゆる目的でブロックチェーンを活用できるために設計、開発されたプラットフォームです。
その他にもビットコインには2100万BTCという発行上限がある一方、イーサリアムには発行上限がありません。その代わりに「バーン(焼却)」という発行したETHを消滅させることで価値の希薄化を防ぐ仕組みがあります。
2021年11月時点では、コンセンサスアルゴリズムはビットコインと同じプルーフ・オブ・ワーク(Proof of Work:PoW)ですが、今後はプルーフ・オブ・ステーク(Proof of Stake:PoS)に移行します。この移行によって、送付遅延や手数料高騰の原因となるスケーラビリティ問題が改善されることが期待されます。
イーサリアム開発の歴史
イーサリアムは計画当初より、大きく分けて4段階の大型アップデートが予定されていました。それが「フロンティア」、「ホームステッド」、「メトロポリス」、「セレニティ(イーサリアム2.0)」です。2015年7月に一般公開されたイーサリアムはベータ版のような状態であり、「フロンティア」アップデートに該当します。翌年3月には、2段階目のアップデート「ホームステッド」が実施。2017年9月にはメトロポリスが、2020年12月からはセレニティが始まりました。
「ダオ フォーク」
2016年6月には「The DAO事件」と呼ばれる、イーサリアムにとって大きな事件が発生します。「The DAO」は、スマートコントラクトによって半自動的に投資が行われる自律分散型投資ファンドでした。この取組みは注目を集めましたが、攻撃者であるハッカーによって、The DAOを動かすプログラムの脆弱性が狙われ、360万ETHもの大金が不正に動かされてしまったのです。
開発者や起業家、ユーザーなどの集まりであるイーサリアムコミュニティは、The DAO事件を受けた議論の末、ハッカーによる資金移動自体をなかったことにするハードフォーク(ブロックチェーンの分岐)を実施しました(2016年7月)。なお、このハードフォークに反対した集団も存在し、このコミュニティはThe DAO事件による不正送金が有効なブロックチェーンを使っています。その結果、イーサリアム上の暗号資産(仮想通貨)も分裂し、イーサクラシック(ETC)という暗号資産が誕生したのです。
イーサリアムの価格動向を把握する

今後イーサリアムの取引を行うことを考えているなら、リスクに備えるという意味でもこれまでの価格動向を確認し、参考にすることをお勧めします。駆け足となりますが、「イーサリアム/円(ETH/JPY)のチャート(相場)(現物)」を基に近年の価格動向を振り返ってみましょう。
2017年まで
まず、2017年2月は「Enterprise Ethereum Alliance」(イーサリアム企業連合)が発足したタイミングで価格が上昇しています。翌3月には1ETHが3,000円を突破、6月には一時的に4万3,000円台まで高騰しましたが、その後は同月末までに3万2,000円台まで急落しました。しかし、11月には再び4万円台に値を戻し、同月下旬にはじめて5万円を突破、勢いそのままに12月中旬に8万円、同月下旬には一時9万円以上にまで価格が高騰しています。

(https://bitcoin.dmm.com/trade_chart_rate_list/eth-jpy)
2018年
2017年終盤の強気市場の勢いは、2018年1月以降も続くかに見えました。1月中旬にイーサリアムの価格は16万円/ETHを超えるまで高騰しましたが、最高値を付けたわずか数日後、一気に11万円台まで急落します。4月には一時、4万3,000円台と前年6月の水準にまで値を下げました。その後、価格は一時的に上昇に転じ、5月には8万4,000円/ETHまで価格を戻したものの、その後は長期的な価格下落が続き、12月には1万円を割っています。

(https://bitcoin.dmm.com/trade_chart_rate_list/eth-jpy)
2019年
2019年初頭から4月までは、イーサリアムの価格が1万円台で推移する時期が続きます。5月に入ってから、久しぶりに2万円台を突破すると、一時2万8,000円台まで価格が上昇しました。しかし、その後はゆるやかに下落していき、8月下旬以降は1万円台後半での推移が続いていました。

(https://bitcoin.dmm.com/trade_chart_rate_list/eth-jpy)
2020年
2020年は2月ごろまで価格上昇を続けると、3月には新型コロナウイルスの影響で大きく下落しました。3月18日には1ETH=1万2000円を割りました。
しかし、同年夏は「DeFiの夏」と呼ばれるほど分散型金融に注目が集まり、それがイーサリアムの価格に好影響を及ぼし、9月には5万円付近まで上昇しました。
さらに12月にはイーサリアム2.0の開発が開始したことや、暗号資産(仮想通貨)市場全体が盛り上がりを見せたことによって7万円を超えるなど上昇を続けました。

(https://bitcoin.dmm.com/trade_chart_rate_list/eth-jpy)
2021年
2021年に入った後も上昇を続け、2018年1月に記録した最高値である1ETH=16万円を突破し、5月には40万円に到達します。
その後はビットコインの下落につられる形で、イーサリアムも急落。5月下旬からは20万円台で推移しています。
しかし、10月にビットコインETFがアメリカで初めて承認されるなど、暗号資産市場全体にポジティブなムードが広がると、イーサリアムにも影響が伝搬。イーサリアム2.0への移行の重要ステップとされた「Altair」アップグレードが無事に実装されたことやNFTの注目が高まったことで、50万円を突破し、再び史上最高値を更新しました。

(https://bitcoin.dmm.com/trade_chart_rate_list/eth-jpy)
今後のイーサリアムはどうなる?将来性は?

イーサリアム 2.0が無事に完了すれば、コンセンサスアルゴリズムが現在のPoWから、PoSへと変更される予定です。
一連のアップデートが成功すれば、イーサリアムの性能は大きく向上するため、イーサリアムの普及が進むと期待されています。PoSはPoWよりも環境に与える影響が少ないことからESG投資の観点からも注目されています。
関連コラム:
「ついに始まったイーサリアム2.0とは 今後のスケジュールも解説」
DeFi(分散型金融)の台頭に注目
スマートコントラクトを利用してイーサリアム上で分散型の金融サービスを作る動きも大きくなっています。これまで金融システムは銀行や証券会社などが間に入って動いていましたが、スマートコントラクトを利用することでP2Pでの資産のやりとりを行うことも可能になりました。レンディングやトレード、ステーブルコインなどさまざまなタイプのDeFiが登場しています。
関連コラム:
「盛り上がりを見せる分散型金融(DeFi)とは?仕組みも紹介」
NFTの普及
前述したように、NFTのほとんどはイーサリアムの規格で作られています。デジタルアートやカードゲームのみならず、メタバースといったデジタル空間でもNFTは利用される見込みです。
ユースケースが広がることで、基盤となっているイーサリアムの注目はますます高まっていくかもしれません。
関連コラム:
「NFT(ノンファンジブルトークン)とは?」
DMM Bitcoinでは「現物取引」「レバレッジ取引」で取引可能

DMM Bitcoinでは、「現物取引」「レバレッジ取引」でイーサリアムを取引できます。
現物取引とは、売買の都度、購入代金の受け渡しをする取引のことです。また、現物取引は顧客が暗号資産交換業者に預け入れている資金(暗号資産(仮想通貨)を含む)の範囲内でしか取引できず、保有していない暗号資産を売却することもできません。またDMM Bitcoinでは、ビットコイン(BTC)、イーサリアム(ETH)、リップル(XRP)、ライトコイン(LTC)、ビットコインキャッシュ(BCH)、ステラ・ルーメン(XLM)の6種類の現物取引が可能です。
※2021年12月現在
レバレッジ取引とは、少額の証拠金を元手として、証拠金よりも大きな金額を売買できる取引を指します。例えば、10万円を証拠金として倍率2倍のレバレッジ取引を行う場合、最大20万円分の暗号資産取引ができます。現物取引では売買の都度、日本円と暗号資産の受け渡しが必要ですが、レバレッジ取引では買建て(又は売建て)と反対売買である決済売り(又は決済買い)をセットにして、その差額のみを日本円で受け渡す「差金決済」である点が大きく異なります。
またDMM Bitcoinでは、先に挙げた6種類の暗号資産に加えて、イーサクラシック(ETC)、テゾス(XTZ)、オーエムジー(OMG)、エンジンコイン(ENJ)、ネム(XEM)、クアンタム(QTUM)、ベーシック アテンション トークン(BAT)、モナーコイン(MONA)の8種類でレバレッジ取引を行えます。
※合計で国内最多14種類。2021年12月現在、国内暗号資産交換業者のWEBサイト調べ
イーサリアムで現物取引又はレバレッジ取引を行う際のポイントは、「イーサリアムの購入方法は?DMM Bitcoinでの買い方を紹介」で詳しく紹介しています。ぜひ参考にしてください。
イーサリアムを使った買い物には、「ウォレット(財布)」が必要

イーサリアムを手に入れた後、買い物をしたり、分散型アプリ(DApps)あるいはブロックチェーンゲームを利用したりしたい場合には、まず自分専用の電子的な財布「ウォレット」を用意する必要があります。ウォレットは、WEBサービス、あるいはパソコン用やスマートフォン用のソフトウェアなど様々な形態のものが公開されています。
どのようなイーサリアム用ウォレットがあるか、初心者でも扱いやすいものはどれかなどを関連コラム「イーサリアムのウォレットとは?定番ウォレットをまとめて紹介」で紹介していますので、参考にするといいでしょう。
イーサリアムの取引を行ううえでの注意点とリスク

最後にイーサリアムを取引するうえでの注意点とリスクを整理しておきましょう。
スケーラビリティ問題
イーサリアムの人気が高まるに連れて、取引量が増えて行きます。そうなると、処理が追いつかなくなり、送付遅延や手数料高騰という「スケーラビリティ問題」が発生します。
取引を行うたびに高額の手数料がかかったり、なかなか取引が承認されなかったりといった事態が生じる可能性があります。
しかし、スケーラビリティ問題はPoSに移行することで改善されると期待されています。
暗号資産(仮想通貨)取引の特徴に由来するリスク
また、一部の投資家は大量のイーサリアムを保有しているため、そのような投資家が連鎖的にほぼ同じタイミングで取引を行う可能性はあります。そうなれば、価格が大きく変動すると予想されますが、イーサリアムを含むすべての暗号資産には、株価のような値幅制限(ストップ高/ストップ安)の仕組みがありません。
イーサリアムの取引を行う際は注意点とリスクを踏まえたうえで、余剰資金の範囲内で行いましょう。
まとめ

イーサリアムは日本でも人気が高く、ビットコインに次ぐ時価総額第2位の暗号資産(仮想通貨)です(2021年11月現在)。DApps開発のプラットフォームであり、イーサリアム上では様々なDAppsが動き、トークンが流通しています。
イーサリアムは今後、NFTや分散型金融などの普及が進むに連れて、ますます注目されるでしょう。しかし、スケーラビリティ問題などのリスクも把握しておかなければなりません。
今後もイーサリアムの取引をする場合は、十分な情報収集を行い、リスクを把握したうえで行う必要があるといえるでしょう。
イーサリアムのDAppsについて興味を持たれた方は「Dappsとは何か?イーサリアムが人気を牽引」もご参照ください。
※掲載されている内容は更新日時点の情報です。現在の情報とは異なる場合がございます。予めご了承ください。
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