トークンとは?暗号資産(仮想通貨)と同じもの?その特徴を紹介
仮想通貨に関するニュースを見ていると、「トークン」という言葉を見かけることがあります。「トークンって何だっけ?」「仮想通貨とトークンの違いがよく分からない」と思っている方も多いのではないでしょうか?
そこで本記事では、仮想通貨とトークンの違いを整理した上で、トークンの種類と特徴を解説していきます。トークンに関する概要を把握して、今後の仮想通貨に関する情報収集の参考にしてみてください。

トークンとは何を指すのか?
まず、トークン(token)という言葉には、「商品やサービスとの引換券」や「代用貨幣」といった意味合いがあります。私たちの身の回りだと、図書券やクーポン券、ポイントなどがトークンに該当するといえるでしょう。そして、多くのポイントや図書券が、1ポイント=1円というように日本円との交換レートが固定されています。
一方で、仮想通貨・ブロックチェーンの文脈におけるトークンとは、ブロックチェーン技術を用いて発行された電子的な証票を意味します。証票とは、何らかの証明をするための書き付けを意味します。つまり、トークンとは、ブロックチェーン上で発行され、その所有者が何らかの権利を持っていることを証明するものなのです。
イメージしにくい方は、ブロックチェーンを使って発行されたポイントのようなものと理解しておくといいでしょう。ただし、2019年10月時点では、トークンに関する世界的に合意形成された定義はありません。
また、ほとんどのトークンは他の通貨との交換レートが変動しますが、トークンの中には、米ドルなどの法定通貨と価格が連動するトークン(ステーブルコイン)も存在します。
ビットコインなどの仮想通貨と、トークンの違い
トークンについて分かったところで、ビットコインなどの仮想通貨とトークンの違いについて触れていきましょう。仮想通貨とトークンとでは、何が違うのでしょうか?
結論から記すと、両者に明確な違いや分類方法があるわけではありません。話者によって説明が異なる場合が多々あり、トークンという大きなくくりの中に、ビットコインやイーサリアムといった仮想通貨が位置付けられることもあります。
中には仮想通貨(Cryptocurrency)のうちビットコインやイーサリアムなど独自ブロックチェーンを基盤とするものを「コイン」とし、既存ブロックチェーン(イーサリアムなど)を利用したものを「トークン」として区別しリストなどを掲載・提供しているウェブサイトも存在します。
また多くの仮想通貨には単独の発行者が存在しません。そして、発行上限数量があるものがほとんどです。例えば、ビットコインの発行上限数量は約2,100万BTCであり、XRP(リップル)の発行上限は1,000億XRPとなっています。ただし、イーサリアムなど一部の仮想通貨には発行上限数量が設定されていません。
一方でトークンは、特定の私企業や開発チームが発行者となる場合が多く、トークンの分配方法や分配の比率などは発行者が決定しています。イメージとしては、企業が発行する株式に近いでしょう。先に挙げたように、トークンは独自のブロックチェーンを基盤としておらず、2019年10月現在では、多くのトークンがイーサリアムやNEO、Wavesなど既存ブロックチェーンを利用して発行・開発されています。
トークンの種類と特徴を紹介
トークン自体に関しても、明確な分類方法があるわけではないものの、「ユーティリティトークン」と「セキュリティトークン」という分類、また「ファンジブルトークン」と「ノンファンジブルトークン」という分類の大きく2種類の分け方で説明されることが多いです。ここでは「ユーティリティトークン」と「セキュリティトークン」、「ファンジブルトークン」と「ノンファンジブルトークン」という分け方について紹介していきましょう。
ユーティリティトークンとセキュリティトークン(証券型トークン)
ユーティリティトークン
「ユーティリティ」(utility)とは、「有用性、実用性」という意味を持つ単語です。ユーティリティトークンは、何らかの実用性を持ったトークンであり、主として特定のサービスにアクセスするための権利として機能します。したがって、投資性のある「セキュリティトークン」(証券型トークン)とは異なります。ユーティリティトークンは投資の対象として売買されるものではなく、あくまでもサービスの利用券なのです。
また、トークン価格という観点から見ると、トークンと引き換えにサービスを利用する仕組みの場合、トークンを手放す(使う)インセンティブ(動機)が働くため、トークン価格の下落圧力となり得ます。したがって、ユーティリティトークンは、保有するインセンティブをどのように作り出すかが重要だと考えられます。
セキュリティトークン(証券型トークン)
「セキュリティ」(security)とは、「有価証券、(負債に対する)保証」という意味を持つ単語です。株式や債券など、一定の価値に対する権利証書を証券といいます。そして、セキュリティトークンは「証券型トークン」と訳されることがあり、文字通り証券の性質を備えるトークンです。例えば、株式や債券といった有価証券をトークン化したものや、不動産やアートなどの所有権をトークン化したものがセキュリティトークンに該当します。
2017年以降、ブロックチェーンを用いて有価証券を発行・管理する動きが世界的に増加しています。日本でも2020年前半に施行される「改正金融商品取引法」によって法的位置づけが明確になるため、国内事例が増える可能性があります。
セキュリティトークンにおいて非常に重要なポイントは、それがプログラミング可能(プログラマブル:programmable)な証券であるという点です。そのため、各国の証券法に自動準拠する機能を持たせたり、条件に応じた取引の自動執行を実現したりと、様々な自動化による管理コストの削減が期待できます。
セキュリティトークンが果たす機能の例を紹介していきましょう。まず、事業者が資金調達を目的としてトークンを発行し、投資家がトークンを購入するとします。そして、このトークンには、保有者が半年に一度、配当金を受け取る権利が付与されています。要するに、株式のようなものだと考えてください。法律や税制に則って保有者に配当金が支払われるようにプログラミングした上でトークンを発行しておけば、事業者は配当金支払いにかかる事務コストを削減できます。
さらに、セキュリティトークンのための取引所が整備されると、技術的には効率的な証券取引が可能になります。実は、現在の証券取引のプロセスでは、取引所で注文して約定した後、決済が完了するまでに3営業日を要します。ブロックチェーン上で証券取引を行うことで、約定から決済までの期間を0営業日まで短縮できると考えられており、効率化が期待できるのです。
その他にも、セキュリティトークンはプログラマブルであり、ブロックチェーン上で流通するため、24時間365日いつでも取引できる証券市場の実現や証券・資産の分割所有、法令遵守のプログラム化など、様々な機能を組み込んだ証券を実現できます。今後、セキュリティトークンの事例が増えていくかもしれません。
- 関連コラム:
ファンジブルトークンとノンファンジブルトークン
トークンの分類に関する他のアプローチとして、「ファンジブルトークン」と「ノンファンジブルトークン」という分け方があります。特にノンファンジブルトークンは、ブロックチェーンゲームなどで用いられることが多いです。
また、「ファンジブル」(fungible)とは、「代替可能、代用できるもの」という意味があります。直訳すると「ファンジブルトークン」(fungible token)は「代替可能なトークン」であり、「ノンファンジブルトークン」(non-fungible token)は「代替不可能なトークン」です。なお、ノンファンジブルトークンは、頭文字を取って「NFT」と呼ばれることがあります。
ファンジブルトークン
各トークンについて解説していきましょう。まず、前述の通り、ファンジブルとは代替可能という意味であり、ファンジブルな資産の例としては現金が挙げられます。
例えば、500円玉はそれが偽造通貨でない限り、どの500円玉も同じ価値を備えています。したがって、自分の500円玉と他人の500円玉を交換しても何ら問題はありません。ビットコインなどの仮想通貨も同様であり、基本的に仮想通貨はファンジブルトークンに分類できるといえるでしょう。
ノンファンジブルトークン
ノンファンジブルトークンは、トークンがそれぞれ異なる価値を持つため、代替不可能なものです。ノンファンジブルにあたる存在をイメージするには、著名な画家による絵画を思い浮かべると良いでしょう。仮に作者や構図が同じ絵画があったとしても、直筆であれば全く同じものは存在しません。例えば、ゴッホが描いた「ひまわり」は7点現存(2029年10月現在)していますが、7点それぞれが代替不可能で唯一のものです。
デジタルデータは容易にコピーできるという常識からすれば、代替不可能なデータ(トークン)の存在は直感に反するかもしれません。しかし、ノンファンジブルトークンは技術的に代替できない性質が担保されているのです。この特徴を活かした事例がブロックチェーンゲームです。
2018年後半以降、日本国内でもノンファンジブルトークンを活用したゲームが人気を集めており、ゲームのアイテムやキャラクターがそれぞれ異なる価値を持つトークンとして扱われています。例えば、ゲーム世界にひとつしか存在しない最強の武器はノンファンジブルトークン、ごくありふれた武器はファンジブルトークンとして設計可能です。
また、ファンジブルトークンは日本の改正資金決済法上、仮想通貨に分類される可能性が高いですが、ノンファンジブルトークンは仮想通貨に該当しません。その法的位置づけは以前から議論されていましたが、ゲーム内アイテムなどのノンファンジブルトークンは決済手段などの経済的機能を有していないと考えられるため、仮想通貨には該当しないとの見解が金融庁から示されています。
なお、これは2019年9月3日に金融庁が公表した「仮想通貨関係の事務ガイドライン改正案」に関するパブリックコメントに対する見解「パブリックコメントの概要及びそれに対する金融庁の考え方」において記載されています。
まとめ
本稿で解説したように、トークンという言葉には「商品やサービスとの引換券」や「代用貨幣」という意味があります。仮想通貨・ブロックチェーンの文脈においてトークンとは、ブロックチェーンを用いて発行された電子的な証票です。なお、仮想通貨とトークンの違いに関する世界的に合意形成された定義は、2019年10月時点では存在しません。
そして、トークンはいくつかの種類と特徴に分類できます。ユーティリティトークンは、特定のサービスを利用するための権利として機能する一方で、トークン化された証券がセキュリティトークンです。また、ファンジブルかどうかという観点でもトークンは分類でき、特にノンファンジブルトークンはブロックチェーンゲームなどの分野で盛んに取り入れられています。
ユーティリティトークンについて詳しく知りたい方は「ユーティリティトークンとは?特徴や機能、事例を解説」もご参照ください。
※掲載されている内容は更新日時点の情報です。現在の情報とは異なる場合がございます。予めご了承ください。
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