トークンとは?暗号資産(仮想通貨)と同じもの?その特徴を紹介
暗号資産(仮想通貨)に関するニュースを見ていると、「トークン」という言葉を見かけることがあります。トークンとは暗号資産とどのように異なるものでしょうか?本記事では、暗号資産とトークンの違いを整理した上で、トークンの種類と特徴を解説していきます。

トークンとは何を指すのか?

まず、トークン(token)という言葉には、「商品やサービスとの引換券」や硬貨の代用として使われる「代用貨幣」といった意味があります。私たちの身の回りだと、図書券やクーポン券、ポイントなどがトークンに該当するといえるでしょう。そして、多くのポイントや図書券が、1ポイント=1円というように日本円との交換レートが固定されています。
一方で、暗号資産(仮想通貨)やブロックチェーンの文脈におけるトークンとは、ブロックチェーン技術を用いて発行された電子的な証票を意味します。証票とは、何らかの証明をするための書き付けです。つまり、トークンとは、ブロックチェーン上で発行され、その所有者が何らかの権利を持っていることを証明するものです。
ただし、2022年6月時点では、トークンに関して暗号資産・ブロックチェーン業界で世界的に合意形成された定義はありません。
ビットコインなどの暗号資産(仮想通貨)と、トークンの違い

一方で、暗号資産(仮想通貨)とトークンとでは、何が違うのでしょうか?
暗号資産には単独の発行者が存在しません。そして、発行上限数量があるものがほとんどです。例えば、ビットコイン(BTC)の発行上限数量は約2,100万BTCであり、リップル(XRP)の発行上限は1,000億XRPとなっています。ただし、イーサリアム(ETH)など一部の暗号資産には発行上限数量が設定されていません。
一方でトークンは、特定の私企業や開発チームが発行者となる場合が多く、トークンの分配方法や分配の比率などは発行者が決定しています。イメージとしては、企業が発行する株式に近いでしょう。先に挙げたように、トークンは独自のブロックチェーンを基盤としておらず、2022年6月現在では、多くのトークンがイーサリアムやポリゴンなど既存ブロックチェーンを利用して発行・開発されています。この中で後述するようなNFT(ノンファンジブルトークン)などがあります。
ただし、両者に明確な違いや分類方法があるわけではないのが現状です。話者によって説明が異なる場合が多々あり、トークンという大きなくくりの中に、ビットコインやイーサリアムといった暗号資産が位置付けられることもあります。
中にはビットコインやイーサリアムなど独自ブロックチェーンを基盤とするものを「コイン」と呼び、既存ブロックチェーン(イーサリアムなど)を利用して発行したものを「トークン」として区別しリストなどを掲載・提供しているウェブサイトも存在します。
トークンの種類と特徴を紹介

トークン自体に関しても、明確な分類方法があるわけではないものの、「ユーティリティトークン」と「セキュリティトークン」という分類、また「ファンジブルトークン」と「ノンファンジブルトークン」という分類が可能です。ここでは「ユーティリティトークン」と「セキュリティトークン」、「ファンジブルトークン」と「ノンファンジブルトークン」という分け方について紹介していきましょう。
ユーティリティトークンとセキュリティトークン(証券型トークン)

ユーティリティトークンとセキュリティトークンの大きな違いは、証券として投資性を持つかどうかです。

ユーティリティトークン
「ユーティリティ(utility)」とは、「有用性、実用性」という意味を持つ単語です。ユーティリティトークンは何らかの実用性を持ったトークンであり、主として特定のサービスにアクセスするための権利として機能します。
投資性のある「セキュリティトークン(証券型トークン)」とは異なり、ユーティリティトークンは投資の対象として売買されるものではなく、特定のサービスに対する支払いに使われます。
また、トークン価格という観点から見ると、トークンと引き換えにサービスを利用する仕組みの場合、トークンを手放す(使う)インセンティブ(動機)が働くため、トークン価格の下落圧力となり得ます。したがって、ユーティリティトークンは、保有するインセンティブをどのように作り出すかが重要だと考えられます。
この保有するインセンティブを持たせたユーティリティトークンに、「ガバナンストークン」と呼ばれるものがあります。
ガバナンストークンとは、ブロックチェーンネットワークを開発する際に、開発方針などに投票するための議決権を持ったトークンです。ブロックチェーンを分散的に管理するために、ステークホルダーに権限と責任を分散させるために用いられます。ガバナンストークンの保有量に応じて、投票権の重みづけがされるために保有を続けるインセンティブが働きます。
セキュリティトークン(証券型トークン)
「セキュリティ(Security)」とは、「有価証券、(負債に対する)保証」という意味を持つ単語です。株式や債券など、一定の価値に対する権利証書を証券といいます。そして、セキュリティトークンは「証券型トークン」と訳されることがあり、文字通り証券の性質を備えるトークンです。例えば、株式や債券といった有価証券をトークン化したものや、不動産の所有権をトークン化したものがセキュリティトークンに該当します。このセキュリティトークンを投資家などに売却することによって資金調達する方法をSTO(Security Token Offering)といいます。
2017年以降、ブロックチェーンを用いて有価証券を発行・管理する動きが世界的に増加しています。日本でも2020年5月に施行された「改正金融商品取引法」によって法的位置づけが明確になりました。
セキュリティトークンにおいて重要なポイントは、プログラミング可能(プログラマブル:Programmable)な証券であるという点です。そのため、各国の証券法に自動準拠する機能を持たせたり、条件に応じた取引を自動執行したりと、様々な自動化によって既存の管理コストの削減が期待できます。
セキュリティトークンが果たす機能の例を紹介していきましょう。まず、事業者が資金調達を目的としてトークンを発行し、投資家がトークンを購入するとします。そして、このトークンには、保有者が半年に一度、配当金を受け取る権利が付与されています。要するに、株式のようなものだと考えてください。法律や税制に則って保有者に配当金が支払われるようにプログラミングした上でトークンを発行しておけば、事業者は配当金支払いにかかる事務コストを削減できます。
さらに、セキュリティトークンのための取引所が整備されると、技術的には効率的な証券取引が可能になります。実は、現在の証券取引のプロセスでは、取引所で注文して約定した後、決済が完了するまでに3営業日を要します。ブロックチェーン上で証券取引を行うことで、約定から決済までの期間を0営業日まで短縮できると考えられており、効率化が期待できるのです。実際に地方都市を金融特区に指定してセキュリティトークンの取引を行うといった、官民が連携した取り組みが既に始まっています。
その他にも、セキュリティトークンはプログラマブルであり、ブロックチェーン上で流通するため、24時間365日いつでも取引できる証券市場の実現や証券・資産の分割所有、法令遵守のプログラム化など、様々な機能を組み込んだ証券を実現できます。
関連コラム:
「新たな資金調達方法STOとは?ICOとの違いや仕組みを解説」
ファンジブルトークンとノンファンジブルトークン(NFT)

トークンの分類に関する他のアプローチとして、「ファンジブルトークン」と「ノンファンジブルトークン(NFT:Non-Fungible Token」という分け方があります。特にノンファンジブルトークンは、ブロックチェーンゲームのほか、デジタルアートに利用され、2021年には流行語大賞に「NFT」がノミネートされるなど、暗号資産(仮想通貨)業界以外でも注目が高まっています。
「ファンジブル(fungible)」とは、「代替可能、代用できるもの」という意味があります。直訳すると「ファンジブルトークン」は「代替可能なトークン」であり取り替えても価値が同じものです。一方で、「ノンファンジブルトークン」は「代替不可能なトークン」で、同じものとして取り替えられないものです。

ファンジブルトークン
各トークンについて解説していきましょう。まず、前述の通り、ファンジブルとは代替可能という意味であり、ファンジブルな資産の例としては現金が挙げられます。
例えば、500円玉はそれが偽造通貨でない限り、どの500円玉も同じ価値を備えています。したがって、自分の500円玉と他人の500円玉を交換しても何ら問題はありません。ビットコインなどの暗号資産も同様であり、基本的に暗号資産はファンジブルトークンに分類できるといえるでしょう。
ノンファンジブルトークン(NFT)
ノンファンジブルトークンは、トークンがそれぞれ異なる価値を持つため、代替不可能なものです。例えば、あなたが描いたこの世に一枚しかない絵画は、他の人が描いた絵画とは異なる「一点物」です。こうした唯一のものをトークンにしたものがノンファンジブルトークンです。
NFTは、アート作品やゲーム内のアイテムやキャラクター、音楽、トレーディングカード、動画などのデジタル作品や不動産、会員権など商品の所有権(※)をデジタル上で証明できます。またNFTは暗号資産と同様に価値の移転を行うことができ、NFTを転々流通させることで保有者の移転を行うことも可能です。
※NFTはデジタルトークンとして発行されるデータとして存在するにすぎず、所有権には含まれないと考えられていますが、このコラムでは、便宜上、所有権という言葉を使います。
NFTの応用例として最も早くから話題になったのは、ブロックチェーンゲームでした。
2018年後半以降、日本国内でもノンファンジブルトークンを活用したゲームが人気を集めており、ゲームのアイテムやキャラクターがそれぞれ異なる価値を持つトークンとして扱われています。例えば、ゲーム世界にひとつしか存在しない最強の武器はノンファンジブルトークン、ごくありふれた武器はファンジブルトークンとして設計可能です。
また、ファンジブルトークンは日本の改正資金決済法上、暗号資産に分類される可能性が高いのですが、ノンファンジブルトークンは暗号資産に該当しません。その法的位置づけは以前から議論されていましたが、ゲーム内アイテムなどのノンファンジブルトークンは決済手段などの経済的機能を有していないと考えられるため、暗号資産には該当しないとの見解が金融庁から示されています。
なお、これは2019年9月3日に金融庁が公表した「仮想通貨関係の事務ガイドライン改正案」に関するパブリックコメントに対する見解「パブリックコメントの概要及びそれに対する金融庁の考え方」において記載されています。
関連コラム:
「NFT(ノンファンジブルトークン)とは?暗号資産(仮想通貨)との違いは」
まとめ

本稿で解説したように、トークンという言葉には「商品やサービスとの引換券」や「代用貨幣」という意味があります。暗号資産(仮想通貨)・ブロックチェーンの文脈においてトークンとは、ブロックチェーンを用いて発行された電子的な証票です。
そして、トークンはいくつかの種類と特徴に分類できます。ユーティリティトークンは、特定のサービスを利用するための権利として機能する一方で、トークン化された証券がセキュリティトークンです。また、ファンジブルかどうかという観点でもトークンは分類でき、特にノンファンジブルトークンはブロックチェーンゲームやデジタルアートなどの分野で盛んに取り入れられています。
ユーティリティトークンについて詳しく知りたい方は「ユーティリティトークンとは?特徴や機能、事例を解説」もご参照ください。
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