暗号資産(仮想通貨)取引における確定申告の必要性と税金について解説

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確定申告
2021-01-13 更新

ビットコインなど暗号資産(仮想通貨)の取引を行うとき、利益を得た場合の税金や確定申告について理解をしておくと、安心して取引ができます。暗号資産の取引にはどのような税金が課せられるのか、確定申告は必要なのかなど、投資家が気になるポイントを紹介します。

※本稿をご覧いただく方へのご注意

この記事では、国税庁WEBサイト「タックスアンサー(よくある税の質問)」などに掲載されている、暗号資産および確定申告に関連する情報を参照元としており、記載内容は一般的な解説となります。税務の詳細に関しては、必ず税務署または税理士へご相談ください。

暗号資産(仮想通貨)取引の税金と確定申告

ビットコインなど暗号資産の取引で得た利益は、原則として所得税の課税対象です。基本的には総合課税の「雑所得」として確定申告を行い、納税する必要があります。あくまでも取引で得た所得(売り上げから経費を差し引いて残った額)が対象で、ただ保有しているだけでは課税対象とはなりません。

▽確定申告とは

確定申告は、毎年1月1日から12月31日までの1年間の所得とそれに対する所得税額を自ら計算・申告して納税する手続きです。確定申告の期間は毎年2月16日から3月15日まで。それぞれの日付が土日や祝日、休日に当たる場合は翌日にずれます。2021年は3月15日(月曜日)が確定申告の期限となります。

確定申告は所得を得ているすべての人が行うものですが、会社員などの給与所得者は毎月の給料から所得税が天引きされ、年末調整で所得税額の計算および過不足精算が行われるため、基本的に確定申告は不要です。

確定申告が必要となるのは、

  • ・収入から経費を引いた「所得」が38万円(基礎控除額)を超える自営業者やフリーランスなどの個人事業主
  • ・不動産収入や株取引などで一定以上の譲渡益がある人
  • ・懸賞金、競馬の払戻金、拾ったお金の謝礼金などの一時所得が一定以上ある人
  • ・年金が一定額以上ある人
  • ・1年間の収入が2000万円を超える、あるいは副業の所得が20万円を超える給与所得者

などです。

通常は確定申告が不要な給与所得者ですが、暗号資産の取引で得た所得が20万円を超えた場合は確定申告を行う必要があります。所得は「売却」や「商品の購入」、「暗号資産同士の交換」によって利益が発生した場合が対象です。

確定申告は必要な書類を準備して、申告書等を作成し、期間内に提出します。所得税の申告書などは国税庁のホームページの「確定申告書等作成コーナー」で作成することができます。申告書は納税地を管轄する税務署に持参するか郵送、また「確定申告書等作成コーナー」で作成した申告書等は、e-Taxによりインターネットで送信することも可能です。

暗号資産(仮想通貨)取引の所得は「雑所得」

所得税において課税対象となる所得は、下記の表にあるように給与所得や事業所得をはじめ10種類の区分に分類されていて、それぞれの課税方法は「総合課税」と「申告分離課税」に分かれています。

総合課税の対象となる所得は合算して合計額に対して課税されます。申告分離課税の対象となる所得については、他の所得とは合算せずそれぞれの所得ごとに定められた税率により課税されます。

暗号資産取引の所得は雑所得に分類され、総合課税が適用されます。

所得区分
種別 課税制度
利子所得※ 総合課税
配当所得※
不動産所得
事業所得※
給与所得
退職所得 申告分離課税
山林所得
譲渡所得※ 総合課税
一時所得※
雑所得※

※一部例外あり

暗号資産取引での所得の算出

暗号資産取引の所得は「雑所得」に分類されますが、雑所得は前記の表の「利子所得」から「一時所得」までの所得区分に該当しない所得です。例えば、副収入や公的年金、作家業を本業としていない人が受け取る原稿料などが雑所得となります。

雑所得の金額が暗号資産の取引で得た利益のみの場合、所得額は

「暗号資産売却時の時価-必要経費(売却手数料など)」-「取得時の価格+必要経費(取得手数料など)」

で算出します。

この必要経費となるものは、例えば暗号資産交換業者に送金・送付する際の手数料等も考えられます。さらにインターネットやスマートフォン等の回線利用料、パソコン等の購入費用などについても、暗号資産取引のために必要な支出であると認められる部分の金額に限り、必要経費に算入することができます。

所得税の課税率は累進課税

また、雑所得には税率が設定されておらず、他の所得区分と合算した所得金額(1000円未満の金額は切り捨て)に課税されます。暗号資産取引で得た所得のみに課税されるわけではないことに注意しましょう。給与所得者なら、勤務先からのと暗号資産取引で得た所得を足した金額に税金が課されることになります。給与所得は会社等が発行する源泉徴収票で確認できます。

所得税の課税率は累進課税となっており、税率は下記のとおり5%から最高で45%の7段階で定められています。

所得税の課税率
課税される所得金額 税率 控除額
195万円以下 5% 0円
195万円を超え330万円以下 10% 9万7,500円
330万円を超え695万円以下 20% 42万7,500円
695万円を超え900万円以下 23% 63万6,000円
900万円を超え1,800万円以下 33% 153万6,000円
1,800万円を超え4,000万円以下 40% 279万6,000円
4 ,000万円超 45% 479万6,000円

税額の計算方法は以下の通りです。

・「課税される所得金額 × 税率 - 控除額 = 基準所得税額」

また、地方自治体ごとの個人住民税(市町村民税・道府県民税)についても覚えておきましょう。住民税は1月1日時点で該当市区町村に住所がある方に対して課される税金です。所得税の計算で算出した額に一律10%が住民税として課されます。給与所得者は会社などが代わりに納付しています。原則として個人事業主なども所得税の確定申告をすれば住民税の申告は不要です。

暗号資産(仮想通貨)取引と株式投資・FX(外国為替証拠金取引)との違い

株式投資の売却益は一般的には譲渡所得で、他の所得金額と合計せず分離して税額を計算する申告分離課税です。FX(外国為替証拠金取引)による所得は、暗号資産取引と同様に雑所得ですが、特例的に申告分離課税が適用される「先物取引に係る雑所得等」とされています。株式投資やFXは、他の所得金額と合計せず、分離して税額を計算する申告分離課税となっているのです。

また、租税特別措置法の特例により、所得額を問わず所得税率が一律約15%(住民税は5%)となっていて、損失を翌年以降3年間にわたって繰り越しできる点も暗号資産取引との大きな違いです。

後述するように、暗号資産取引では翌年以降に損失を繰り越すことはできません。

確定申告をしなかった場合は?

2019年6月、暗号資産取引に関する申告漏れが報道されました。全11国税局と沖縄国税事務所が、暗号資産交換業者から任意提出された顧客の取引データや独自に集めた情報に基づき税務調査を行い、個人および法人に対して申告漏れを指摘したというものでした。

今後も、国税局や税務署の暗号資産交換業者に対する問い合わせや独自調査で、個人・法人を問わず暗号資産取引に関する厳しいチェックが行われる可能性があります。

では、確定申告をしなかった場合はどうなるのでしょうか?

確定申告をしなかった場合のペナルティ

確定申告期限までに行わない、あるいは故意にしなかったりした場合はペナルティがあります。

期限が過ぎた後の確定申告は期限後申告といいますが、その場合は「無申告加算税」が課されます。原則として、納付すべき税額に対して、50万円までは15%、50万円を超える部分は20%の割合を乗じて計算した金額が課せられます。期限後申告によって無申告加算税を課せられる場合は、納める税金は申告書を提出した日が納期限となります。その場合は納付の日までの延滞税をあわせて納付する必要があります。

ただし申告期限から1カ月以内に期限後申告が自発的に行われた場合など無申告加算税が課せられないケースもあります。

また、納税者が税金の計算に係る事実を隠蔽、仮装した場合には重加算税が課せられます。例えば無申告加算税は計算の基礎となる税額の40%が課されるなど高い税率となっています。

また、故意に申告書を提出しないなど加算税が課されるような場合は刑事事件となることもあり、法定刑罰は懲役あるいは高額な罰金となっています。

いずれにせよ、期限までに申告を済ませることが重要です。

確定申告の内容を間違えていたとき

確定申告書の提出後、計算間違いなど内容の誤りに気が付いた場合は、申告内容を訂正する手続きを行うことができます。税額を多く申告していた場合は「更正の請求」、税額を少なく申告していた場合は「修正申告」になります。

更正の請求

確定申告書提出後で、税額を多く申告していたと気が付いた場合、「更正の請求」という手続きを行い正しい税額に訂正を求めることができます。請求可能な期間は、法定申告期限から原則5年以内です。

税務署が請求内容の検討し、納め過ぎの税金などを認めた場合、減額更正として税金を還付します。ただし、所得金額の増減や所得控除の追加があっても、最終的な税額が変わらない場合は、更正の請求は行えません。

修正申告

修正申告で納付する新たな税額は、法定納期限の翌日から修正申告書を提出する日までの期間について、延滞税とともに納付する必要があります。

また期限後申告後の修正申告だった場合や、国税局(国税事務所)や税務署から調査の通知を受けた後で修正申告を行った場合は、新たに納める税額以外に過少申告加算税や重加算税が課される可能性があります。

更正の請求書と修正申告書は税務署に用意されています。また、国税庁ホームページ「確定申告書等作成コーナー」の「更正の請求書・修正申告書作成コーナー」では、金額の入力で、税額などが自動計算され、更正の請求書や修正申告書が作成できます。作成したデータは、電子申告(e-Tax)や印刷して税務署に郵送等で提出することができます。

暗号資産(仮想通貨)取引の課税のタイミング

暗号資産で利益を得るケースとしては「暗号資産交換業者」を利用した「暗号資産の売買(取引)」がもっとも一般的です。この場合、暗号資産の購入額と売却額の差が利益となります。

重要な点は、「売却」が「日本円などの法定通貨への換金」を指していることです。暗号資産交換業者から出金した時点ではなく、暗号資産を日本円などの法定通貨と交換した時点で利益が確定したとみなされ課税されます。

また、毎年1月から12月までに成立(約定)した取引が課税対象となります。例えばDMM Bitcoinであれば、2020年の年間取引は、2020年1月1日7時0分0秒から2021年1月1日6時59分59秒までに約定した取引となります。

暗号資産の取得価額、売却価額の算定方法

総平均法と移動平均法

暗号資産の取得価額、売却価額の算定方法は、総平均法、移動平均法のいずれかの方法で行うものとされています。税務署への届け出を行えばどちらを採用してもよく、届け出を行わない場合は総平均法が適用されます。

移動平均法は暗号資産の購入、売却の都度、取得、売却単価を算出するものです。

総平均法は、基準となる期間全体の合計金額を購入、売却数量の合計で割って算出するものです。

二つの方法では売買損益が異なることがありますが、確定申告の際、どちらの方法を採用することが有利なのかは一概には言えません。国税庁では暗号資産に関する税務上の計算書を公開していますので試算をしてみるとよいでしょう。

なお、一度採用した計算方法は3年間は変更が認められません。

また、DMM Bitcoinがお客様に提供している「期間損益報告書」では総平均法を利用しています。

参考:
国税庁 仮想通貨の計算書(移動平均法用)
国税庁 仮想通貨の計算書(総平均法用)

ビットコインで商品やサービスを購入したとき

ビットコインなどの暗号資産で、商品やサービスを購入した場合も課税の対象となります。

保有する暗号資産での商品の購入は、保有する暗号資産を売却したことになります。この時の所得金額は、暗号資産の支払い数量の価格(譲渡価格)と、暗号資産の取得価格との差額になります。

【計算式】
・商品価格(消費税込み)- ビットコイン1BTCあたりの取得価格 ×支払い数量 = 所得金額

ビットコインと他の暗号資産の交換

保有するビットコインと他の暗号資産Aを交換した場合は、ビットコインで暗号資産Aを購入したことになります。前述した「ビットコインで商品・サービスを購入」と同様に所得金額を計算する必要があり、課税の対象になります。

【計算式】
・暗号資産Aの購入価格 - ビットコイン1単位あたりの取得価格 ×支払い数量 = 所得金額

「暗号資産Aの購入価格」は、取引時点で同数量の暗号資産Aを日本円で購入する場合の支払い総額となります。

暗号資産(仮想通貨)の取引による損失は、翌年以降に繰り越せない

暗号資産の取引で発生した損益は、暗号資産と同じ雑所得の中で通算できます。ただし、雑所得以外の所得区分の所得から損益通算(差し引くこと)は行えません。

また、暗号資産の取引による所得は、総合課税の対象となる雑所得であるため、その損失を翌年以降に繰り越すことはできません。

暗号資産(仮想通貨)の証拠金取引は、申告分離課税の対象とはならないため、総合課税で申告

暗号資産の証拠金取引(DMM Bitcoinのレバレッジ取引に該当)による所得は、申告分離課税の適用はなく、総合課税で確定申告を行う必要があります。

租税特別措置法上、申告分離課税(先物取引に係る雑所得などの課税の特例)の対象は、金融商品取引法などに基づく「商品先物取引等」、「金融商品先物取引等」、「カバードワラント」の取得とされています。暗号資産の証拠金取引は、これら取引に該当しないため、申告分離課税の適用はありません。

暗号資産(仮想通貨)に係る税制の今後

暗号資産の税制は、株式など他の資産運用手段と比較すると税制上の優遇措置が未整備な状況にあります。ただし2020年現在、暗号資産取引に係る税制の改善を求める動きが活発化しているため、今後の動向に注目しておくといいでしょう。

例えば、日本暗号資産取引業協会(JVCEA)と日本暗号資産ビジネス協会(JCBA)は2020年7月31日、暗号資産取引を20%の申告分離課税の対象とし、譲渡損失の損益通算や繰越控除を求める「「2021年度税制改正に関する要望書」を取りまとめました。昨年はそれぞれ提出していたものを今回は共同で金融庁に提出しています。

これら取り組みなどを通し暗号資産取引に係る税制が改善していくと、暗号資産市場への投資家の参加が促進され、活性化が進むかもしれません。

利益が出た場合の税金対策について詳しく知りたい方は「暗号資産(仮想通貨)で利益が出た場合の税金対策!納税額はどのように決まるのか」もご参照ください。

※掲載されている内容は更新日時点の情報です。現在の情報とは異なる場合がございます。予めご了承ください。

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