暗号資産(仮想通貨)のハードフォークとは?何が起こっているの?

ハードフォーク
2020-07-29 更新

暗号資産(仮想通貨)・ブロックチェーン界隈では時々、「ハードフォーク」という事象がニュースになることがあります。ハードフォークは資産に影響を与える可能性があるため、メジャーな暗号資産であればあるほど、注目度は大きくなります。しかし、「ハードフォークという言葉は聞いたことがあるけれど、詳しくは知らない」方も多いのではないでしょうか?過去に起きた事例と共にハードフォークの実態について解説します。

「ハードフォーク」を理解するための基礎知識

ハードフォークとは、暗号資産(仮想通貨)を支える「ブロックチェーン」が「永久に分岐(枝分かれ、フォーク)」する事象のことです。では「ブロックチェーン」とは?また「永久に分岐する」とはどういう意味でしょうか?順を追って基礎知識から理解していきましょう。

ハードフォークとは、暗号資産(仮想通貨)を支えるブロックチェーンが分岐すること

まず暗号資産取引の初心者の方は、ブロックチェーンとは、プログラムによって定義されたルール(仕様)に基づいて、暗号資産の決済・送付といった取引データ(トランザクション)を記録(ブロック生成)し続けるソフトウェアにあたるという点を覚えておきましょう。ハードフォークは、従来のソフトウェアと互換性のないアップグレードに相当する状態を指しており、従来バージョンの暗号資産、新バージョンの暗号資産の2種類が存在する事態に結び付きます。

そもそもブロックチェーンとは?

ブロックチェーンは、トランザクション(取引データ)の集合体であるブロックが生成されていき、ブロックがチェーン(鎖)のように繋がったデータ構造を備えています。すでに生成されたブロック(トランザクション群)は原則として改ざんできず、正統なブロックチェーンはひとつしかありません。

さらに、ブロックチェーンは中心のない分散型ネットワーク(P2Pネットワーク)であることも特徴としています。そのため、ブロックチェーンというソフトウェアのルールを更新した新バージョンを公開した時に、ネットワークの参加者すべてが一斉に新バージョンに移行してくれるとは限りません。

アップデートを強制する絶対的な権力者がいないので、ブロックチェーンのような分散型のネットワークでは、アップデートが徐々に有効化されていきます。このようなタイムラグがあるため、新バージョンへの移行過程では新ルールに従うノード(コンピューター)と、旧ルールに従うノードという2つのグループが存在することになります。

ハードフォークの実態

ブロックチェーンのアップデート内容によっては、新旧のルールに互換性がある場合と、互換性がない場合がありえます。

新旧ルールに互換性がある場合の分岐は一時的で、最終的にはひとつのブロックチェーンに収束します。一方、新旧ルールに互換性がない場合は、新ルールに従うブロックチェーンと旧ルールに従うブロックチェーンの2本に分岐したままとなり、永久に交わることはありません。

実はブロックチェーンでは、フォーク(分岐)は頻繁に起こっており、コンセンサスアルゴリズムとしてプルーフ・オブ・ワーク(Proof of Work、PoWと略される)を採用しているブロックチェーンの場合、マイニング(採掘)に成功した際もフォークしているといえます。先ほど「正統なブロックチェーンはひとつ」とした点がこの状態に該当します。そんな中でも、性能向上を目指した意図的なフォークとして、ソフトフォークとハードフォークがあるのです。

新旧ルールで互換性を保つ一時的な分岐を「ソフトフォーク」、互換性のない恒久的な分岐を「ハードフォーク」と呼びます。なお、ハードフォークは、大幅に機能をアップデートする際に実行される傾向があります。

別の言い方をすれば、ソフトフォークは何らかの条件が強化される(ブロックサイズが小さくなるなど)場合に用いられ、ハードフォークは条件が弱まる(ブロックサイズを大きくなるなど)場合に用いられるとみることもできます。

互換性のないアップデートは、例えばパソコンやスマートフォンのOSをはじめ、一般的なソフトウェアでも実施されます。ブロックチェーンにおいてハードフォークがより注目される理由は、機能的な変更にとどまらず、ブロックチェーン上でやり取りされている暗号資産(仮想通貨)という資産に大きな影響を与える点が見逃せません。互換性のないアップデートであるハードフォークは、暗号資産の分裂をも意味しており、さらにその価値の変動を招く事態に繋がっているのです。

ハードフォーク時の開発者と利用者の対応

ハードフォークが起こると暗号資産(仮想通貨)も分裂してしまいます。ユーザーの資産に影響を与えるため、開発者が検討を重ねた上で、ハードフォークのタイミングなどをユーザーコミュニティに周知します。当該暗号資産のWEBサイトやSNSなどで、「〇番目のブロックでハードフォークが実行されます」などのアナウンスが行われることが多いです。

DMM Bitcoinの場合は?

暗号資産交換業者の場合は、WEBサイトやメールなどを介してハードフォークに関する情報、また取引の一時停止といった対応を周知します。例えばDMM Bitcoinの場合は、イーサリアムのハードフォークが2019年3月1日に実施見込みであることを受け、「イーサリアム(ETH)のハードフォークについてのお知らせ」という事前告知を行い、顧客資産の保全のためイーサリアムの入出庫の受付を一次的に制限することを発表しました。

ユーザー側も最新情報を収集しリスク回避

またユーザー側は、これら最新情報をこまめに収集・確認した上でハードフォーク期日前後は暗号資産の送付・取引は控えるなど、自分の資産を守るためのリスク回避をすることが望ましいでしょう。ハードフォークにより一時的な混乱が発生する可能性はあるものの、時間の経過と共に混乱は収束していきます。落ち着いて状況把握に努めましょう。

ハードフォーク後の暗号資産(仮想通貨)はどうなる?

ハードフォークが成功して、両方のブロックチェーンに十分な数のユーザーが存在する場合は、どちらの暗号資産(仮想通貨)も価値を持ち続けます。

一方で、ハードフォーク成功後に、片方のブロックチェーンだけをユーザーが利用した場合は、もうひとつのブロックチェーンとその上で流通する暗号資産は最終的に使われなくなります。ハードフォークが発生すると、保有者の動向も暗号資産の価値に影響が及ぶ可能性を考慮しておきましょう。

また、他にも暗号資産の送付に遅れなどが起こる可能性はあるものの、時間の経過と共に安全に送付できるようになる場合がほとんどです。

これまでに起こったハードフォーク

ハードフォークはまれな出来事ではなく、ビットコインやビットコインキャッシュ、イーサリアムなど日本でもよく知られる暗号資産(仮想通貨)も過去に経験しています。その具体的な内容を見ることで、ハードフォークの際に考えられるリスク回避の参考にするといいでしょう。

ビットコインのハードフォーク

ビットコインは、インターネット上で流通している管理者のいない暗号資産(仮想通貨)です。政府や金融機関などの第三者機関に依存しない点を特徴として、もっとも広く普及しているといえるでしょう。そんなビットコインも、スケーラビリティ問題をきっかけとして2017年8月1日にハードフォークを実施しています。

スケーラビリティ問題とは、トランザクション数の増加にネットワークの処理能力が追い付かず、送付の遅延やマイナー手数料(採掘報酬)の高騰を引き起こす現象のことです。ビットコインの場合、ブロックサイズの上限が1MBと決まっており、さらに平均して約10分間に1回しかブロックが生成されない仕組みであるため、処理できるトランザクション数に限界があるのです。

スケーラビリティ問題は長い間、解決すべき課題として認識されており、現在でも研究開発が続いています。2017年8月のハードフォークも、スケーラビリティ問題を解決するための方向性について、開発者たちの間で主張が2つに割れていたことが原因でした。

一方の主張は、ブロックサイズの上限をなるべく変えず、可能な限りソフトフォークで対応するという案でした。こちらの主張ではSegWit(セグウィット)と呼ばれる技術によって、1つあたりのブロックに格納できるデータ量を増やそうとするものでした。もう一方のグループは、ブロックサイズの上限を引き上げることで、1回のブロック生成で処理できるトランザクション数を増やし、スケーラビリティ問題に対処する方法を提案していました。

その後、開発方針に関する主張の溝が埋まらなかったため、ハードフォークが実行されたのです。ブロックサイズ上限をなるべく変えない方向で開発を進めているのが現在のビットコインであり、ブロックサイズの上限を長期的に引き上げていく方針で開発を進めているのが、新たに誕生した「ビットコインキャッシュ」(単位: BCH)です。

なお、開発者やユーザーコミュニティが分裂したものの、どちらの暗号資産も時価総額や取引量がトップレベルの暗号資産として存在し続けています(2020年4月末現在)。

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イーサリアムのハードフォーク

イーサリアム(単位: ETH)とは、ブロックチェーンを活用したスマートコントラクトや分散型アプリケーション(DApps)を構築するためのプラットフォームの名称です。暗号資産(仮想通貨)の本来の名称は「イーサ」(Ether)であり、このプラットフォームの利用料として使用されています。開発者コミュニティ自体は世界中に分散しており、コア開発者やリサーチャーなどで構成される非営利組織「イーサリアム財団」(Ethereum Foundation)がイーサリアムの開発や普及において中心的な役割を果たしています。

イーサリアムは、これまで定期的にハードフォークを行うことで機能を向上させています。今後も、イーサリアム 2.0に向けた大規模なアップデートが2020年より実施される予定です。

イーサリアム 2.0へのアップデートに向けて、フェーズ0(移行の第1段階)としてビーコンチェーンと呼ばれる新しいブロックチェーンの稼働が始まります。これにより、コンセンサスアルゴリズムをプルーフ・オブ・ステーク(Proof of Stake、PoSと略される)に移行させる作業がスタートします。今後、特にスケーラビリティやセキュリティの面で現行のイーサリアムと比べ大幅に向上すると見込まれており、大きな期待が寄せられています。

【イーサリアムの主なアップデートおよびハードフォーク】
日付 名称 概要
2015年
5月9日
オリンピック
(Olympic)
イーサリアムのプレリリース版(テストネット
7月30日 フロンティア
(Frontier)
メインネットでジェネシスブロック生成。運用開始
2016年
3月14日
ホームステッド
(Homestead)
スマートコントラクトおよびネットワーキングを改善するためのハードフォーク
7月20日 ダオ フォーク
(DAO Fork)
2016年6月に発生した「The DAO事件」を受けた議論の結果、ハッカーによる資金移動自体をなかったことにするハードフォークを実施
10月18日 タンジェリン ホイッスル
(Tangerine Whistle)
2016年9月~10月にかけて、イーサリアム・ブロックチェーンに対し悪意のある第三者によるサイバー攻撃が発生したため、手数料(Gas)に関する仕様を変更するハードフォーク実施
11月22日 スプリアスドラゴン
(Spurious Dragon)
2016年9月~10月に発生した攻撃に対する対抗のため実施した、2回目のハードフォーク。将来の攻撃を防ぐための調整や、リプレイ攻撃対抗が主目的
2017年
10月16日
ビザンチウム
(Byzantium)
大型ハードフォーク「メトロポリス」(Metropolis)の一部。メトロポリスは、ビザンチウムとコンスタンティノープルからなる。送付額など取引内容を第三者に公開されないよう保護する技術「zk-SNARKs」、採掘報酬(マイナー手数料)の低減、マイニング難易度調整メカニズム「ディフィカルティボム」の延期などを実施
2019年
2月28日
コンスタンティノープル
(Constantinople)、
サンクトペテルブルク
(St. Petersburg)
2019年1月16日予定だったコンスタンティノープルが延期されたため、まとめて実施。コアプロトコル仕様、スマートコントラクト関連仕様、ディフィカルティボム延期などを含む
12月7日 イスタンブール
(Istanbul)
プライバシー保護を重視する「Zcash」との相互運用性改善、プライバシー関連ソフトウェア開発向け仕様変更、セカンドレイヤーのパフォーマンス向上、手数料(Gas)関連の仕様変更を含む
2020年
1月2日
ミューア・グレイシャー
(Muir Glacier)
ディフィカルティボム実施を遅らせるもの

イーサリアムの数々のハードフォークの中でも著名なのが、大規模なハッキング事件「The DAO事件」をきっかけとした、2016年7月のものです。

当時、民主的な投票プロセスによってプールした資金の投資先を決める「The DAO」という分散型の投資ファンドがありました。イーサリアムベースの野心的プロジェクトとして注目を集めましたが、プログラムの脆弱性を突いたハッカーによって、43億円相当の資金(当時のレート換算)が不正送金される事件が発生してしまったのです。

この事件を受けてイーサリアムコミュニティでは議論の後、不正送金を取り消すハードフォークが提案され、その可否を問う投票が実施されました。その結果、コミュニティの過半数の支持を得てハードフォークは実行されたのです。

このハードフォークは、過去の記録を誰も変更・改ざんできないはずのブロックチェーンのあり方に対する大きな問題提起となりました。多数決を経たとはいえ、一部の参加者の主張によって過去の取引について変更が加えられたのです。このハードフォークに反対した、分散性を重視するグループは、不正送金が記録として残っているルール変更前のブロックチェーンを「イーサリアムクラシック」として使い続けています。またこのチェーン上の暗号資産は「イーサクラシック」(単位:ETC)として現在も流通しています。

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ビットコインキャッシュのハードフォーク

ビットコインキャッシュは、前述の通り2017年8月1日にビットコインからハードフォークして誕生した暗号資産(仮想通貨)です。この時のハードフォークによって、ビットコインキャッシュのブロックサイズ上限は8MBに引き上げられました。

その後、ビットコインキャッシュは何度かハードフォークを繰り返し、大きなアップデートを行っています。イーサリアム同様この繰り返しによって利便性や機能を向上させており、ビットコインとは異なるアプローチで通貨としての利便性を追求している暗号資産だといえるでしょう。

また、ビットコインキャッシュで特徴的な点が、毎年5月15日と11月15日の2回、アップデートを実施を予定していることです。このためビットコインキャッシュ公式サイトでは、ハードフォークではなく「定期プロトコルアップグレード」と呼んでいます。なお、次のハードフォークは2020年5月15日の予定で、技術関連情報コーナーにおいて複数回に分けて具体的な内容を告知しています。

【ビットコインキャッシュの主なハードフォーク】
時期 概要
2017年8月 ビットコインからハードフォークを実施
2018年5月 ブロックサイズ上限を32MBへと引き上げるハードフォークを実施。
スマートコントラクトの機能を備えるように機能拡張も行われた
11月 開発者の対立によって、ビットコインキャッシュABCと、ビットコインSVに分裂。ビットコインSVはブロックサイズ上限が128MBへと拡大(その後、ビットコインSVは2GBまで上限を拡大)
2019年5月 トランザクションへの電子署名方式を「楕円曲線DSA」(ECDSA)から「シュノア署名」に変更、この変更によって取引データのプライバシーとデータ効率が向上
11月 シュノア署名に関する対応をさらに進展させたほか、トランザクション(取引)のセキュリティを向上させた
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ハードフォーク発生時は最新情報を収集し、メリットの把握とリスク回避を行う

ブロックチェーンの永久的な分岐であるハードフォークは、暗号資産(仮想通貨)の分裂という事態を招く可能性が十分あります。一時的な混乱が発生するリスクはありますが、ネットワークを混乱させる意図はなく、機能のアップデートが目的であり、メリットとしています。したがって、時間の経過と共に混乱は収束していきます。

また、ハードフォークは開発者や暗号資産交換業者によって実施タイミングが広くアナウンスされた上で行われることを覚えておきましょう。自分が保有・取引している暗号資産がハードフォークを計画していることが分かった場合は情報収集を十分に行い、ハードフォーク前後は取引や入出庫を控えるといったリスク回避を心がけましょう。

※掲載されている内容は更新日時点の情報です。現在の情報とは異なる場合がございます。予めご了承ください。

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